ドーナツ
ドーナツがドーナツの穴から
こっちを見てるよ
ウインクしてやったら
ドーナツもウインクしてよこしたね
まんなかから、パカン、とふたつに
体を折って。
おへそパン
あたたかいおへそパン!
あたたかいおへそパン!
ひとつ十円、ふたつも十円
あたたかいおへそパン!
お嬢さんがお好きでなければ
息子さんにあげてください
お嬢さんも息子さんもいらっしゃらなければ
ご自分でめしあがるほかないようね。
樹のうえの赤ちゃん
緑の葉をいっぱいにつけた
大きな樹のうえに
赤ちゃんがいました
強い風が吹いてきて枝がゆれ
赤ちゃんは下へ落ちていきました
あっ! かわいそう!
と、心のなかで叫んだその樹は
自分の葉をいっぺんに枯葉にして散らし
下に落ちてぺしゃんこになった赤ちゃんのうえに
とってもやさしくかけてあげました
馬
馬が走るパカパカ
誰も乗っていない
馬が走るボコボコ
穴のあいた人が乗っている
馬が走るペコペコ
お腹のすいた人が乗っている
馬が走るブカブカ
大きすぎるパンツの人が乗っている。
男はつらいよ
田中一郎
月曜に生まれ
火曜に就職
水曜に結婚
木曜に病気
金曜に悪化
土曜に死んで
日曜に埋葬
これで終りじゃ
田中の一郎
古い靴の家
大きな古い靴に住んでいたその女の人には
子供がとてもたくさんいました
いったいどうしていいかわからないほど
たくさんたくさんの子供たちでした
ある日、彼女は、その子供たちをひとまとめに野原に立たせ
大きな古い靴を大きな人にはいてもらい
子供たちをみんな
踏みつぶしてもらいました。
猫のいる町
少女ボピープは町に引越してきました
川のほとりの、猫のたくさんいる小さな町
町の人はみんな、やさしいボピープに
昼のあいだ猫をあずけることにしました。
夕暮れになるとボピープは
あずかった猫たちを客間にあつめ
しっぽをくっつけなおしてあげます。
陽の照る日も曇った日も
ボピープは猫のしっぽを洗濯するのです
曇った日はよくかわかないこともあり
猫たちは半がわきのしっぽで
家へ帰ります。
午前七時の牛乳屋
牛乳屋は毎日
午前七時に来るはず
今日はなぜおくれたの
牛が寝ぼうしたから。
うどん屋さんにて
手打ちうどん
長い、細い
太い、みじかい
いろいろだ
長いのはツルーン
細いのはツル
太いのはズルッ
みじかいのはスル
とてもみじかいのは、ス
それでは食べます
ズルッ、スル、ズルッ、スル、ツルーリ
ツル、ツル、ツルーリ、スル
ズルッ、スル、ツル、スル、ツルーリ
とてもみじかいのは最後にまとめて
ス、ス、ス、ス、ス、ス、ス、ス。
腕時計
お湯がトウフだったら
お風呂屋はトウフ屋
ウナギが腕時計なら
手首に一匹まいておく。
コマドリ
北風が吹くようになったら
すぐに雪が降るだろうなあ
かわいそうに
コマドリはどうするだろう
納屋のなかにすわって
冬のあいだじっとしてるかな
頭を翼の下につっこみ
朝、昼、晩、一日三食
自分の体をつついて食べながら。
お父さんはウサギ狩り
デパートの屋上の動物園に住んでいる
オオカミのご夫婦に子供ができた
屋上の夜は秋になると冷えこむ
「あたたかい毛皮がこの子のために欲しいわ」
と奥さんに言われたおとうさんオオカミは
よしそれではと夜中にテッポウを持ち
三階のオモチャ売場のぬいぐるみ人形のところで
ウサギをしとめて皮をはいできた。