監督:大九明子
出演:のん、林遣都、臼田あさ美、若林拓也、片桐はいり、橋本愛、前野朋哉、山田真歩、吉住、岡野陽一、中村倫也(声の出演)
制作:『私をくいとめて』製作委員会/2020
URL:https://kuitomete.jp
場所:MOVIXさいたま

大九明子が綿矢りさの小説を映画化した『勝手にふるえてろ』は、相手とのコミュニケーションを図ろうとするときに、自分の内側でばかり思考を展開させてしまって、一向に外側に気持を向けることの出来ない内向型人間の葛藤を描いた面白い映画だった。

そして大九明子がまた綿矢りさの小説を映画化した今回の『私をくいとめて』も、基本的には『勝手にふるえてろ』と同じパターンの映画ではあったけれども(綿矢りさの小説ってそんなのばかりなのか?)、のんが主役を演じることによって、松岡茉優には無いたどたどしさや柔らかさが、映画のファンタジー要素を強める結果となって、ちょっと違った方向に展開して行く点でも面白い映画だった。

まあ、のん(能年玲奈)もいろいろとあったので、そんなところも大九明子監督が汲み取って、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で共演した橋本愛を登場させたりして、のんの魅力を最大限に引き出そうと努力した結果が133分もの長い映画になってしまった。そこは、のんのファン以外には過剰だったような気もするけれど。

→大九明子→のん→『私をくいとめて』製作委員会/2020→MOVIXさいたま→★★★★

監督:ロネ・シェルフィグ
出演:ゾーイ・カザン、アンドレア・ライズボロー、タハール・ラヒム、ビル・ナイ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジェイ・バルチェル、ジャック・フルトン、フィンレイ・ヴォイタク・ヒソン
ジェイ・バルチェル
原題:The Kindness of Strangers
制作:カナダ・スウェーデン・デンマーク・ドイツ・フランス/2019
URL:http://www.cetera.co.jp/NY/
場所:MOVIXさいたま

『ニューヨーク 親切なロシア料理店』と云う邦題を見て、このあいだ観た『ホモ・サピエンスの涙』に引きずられて、北欧系のオフビートなノンビリコメディ映画を想像してしまった。『17歳の肖像』を撮ったロネ・シェルフィグ監督の映画なんだから、そんな映画のわけがなかった。いまの時代に生きる人たちの息苦しさを語りながらも、それでいてラストにはほんのりと爽快感を出していて、深刻さにブレ過ぎないように努めている良い映画だった。『ニューヨーク 親切なロシア料理店』なんて邦題は、なにひとつこの映画の本質を表していない酷い邦題だった。

たぶん日本でも、夫のDVから逃げ出した人、ADHDから来る注意欠如から仕事が長続きしない人、薬物依存の身内を救えなかった人、他人を救うことばかりで自分を省みることが出来ない人、なんて人たちがそれないりにいて、日々、自分を責めながらも生きているのが現代社会なんだとおもう。

この映画は、そんな人たちがニューヨークにあるロシア料理店を通じて知り合うこととなって、それぞれがガッツリと干渉し合うわけでもないのに、なんとなく影響しあって、少しずつ事態が好転していく過程を捉えている巧い脚本の映画だった。

ビル・ナイ以外はあまり知らない俳優ばかりだったけれど、それぞれの役者が役柄にぴったりとハマっているのも、観たあとに尾を引く条件を満たしている映画だった。

→ロネ・シェルフィグ→ゾーイ・カザン→カナダ・スウェーデン・デンマーク・ドイツ・フランス/2019→MOVIXさいたま→★★★☆

監督:セルゲイ・ロズニツァ
出演:ヨシフ・スターリン、ゲオルギー・マレンコフ、ラヴレンチー・ベリヤ、ニキータ・フルシチョフ
原題:State Funeral
制作:オランダ、リトアニア/2019
URL:http://www.imageforum.co.jp/theatre/movies/3816/
場所:シアター・イメージフォーラム

セルゲイ・ロズニツァと云う監督の名前はまったく知らなかった。これまでに21作のドキュメンタリー映画と4作の⻑編劇映画を発表していて、カンヌ国際映画祭では2012年に『In the Fog』で国際映画批評家連盟賞を受賞、2018年に『Donbass』で「ある視点部⾨」最優秀監督賞を受賞しているらしい。でも、これまでに日本では公開されることはなかった。

今回、そのセルゲイ・ロズニツァ監督の『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』の3作品がシアター・イメージフォーラムで公開されることになったので、なんとなく面白そうだなあとおもって、まずは『国葬』を観てみた。

リトアニアで発見されたスターリンの国葬を捉えた大量のアーカイヴ・フィルムを編集して作られたこの映画は、おそらくはソ連のプロパガンダとして撮られたものなので、そこに写っている人たちがみんなカメラを意識していて、悲しみの演技をしているように見える、いや、おそらくはそのとおりの映画だった。だからといって、つまらないわけではなくて、そこに写っている時代の雰囲気や、共産圏の人々の生活、中央アジアやシベリア方面の民族の姿などが見えて、あっと云う間の2時間15分だった。

フルシチョフが司会を努めて、マレンコフが弔事を読むシーンは、ああ、のちに二人のあいだに権力闘争があるんだなあ、とおもいを巡らせることができる唯一の、素の、生の人間が透けて見えるシーンで、そこがこの映画のクライマックスだった。

→セルゲイ・ロズニツァ→ヨシフ・スターリン→オランダ、リトアニア/2019→シアター・イメージフォーラム→★★★☆

監督:ロイ・アンダーソン
出演:レスレイ・リヒトワイズ・ベルナルディ、アーニャ・ノバ、タティアーナ・デローナイ、ヤン・エイエ・フェルリンク、トール・フライゲル、カリン・エングマン、マグナス・ウォールグレン、アントン・フォースディック、ファニー・フォースディック
原題:About Endlessness
制作:スウェーデン、ドイツ、ノルウェー/2019
URL:http://www.bitters.co.jp/homosapi/
場所:新宿武蔵野館

いつだったか、WOWOWで『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』と云う映画を見た。1971年公開時の邦題は『純愛日記』と云うタイトルで、約20分ほどカットされたバージョンだったらしい。それが2008年に完全版がリバイバルされて、WOWOWではたしか、そのフルバージョンが放映されていたとおもう。なんとなく「伝説の名画」のような意味合いで受け取っていて、どんな映画なんだろう? と構えてはみたものの、今思い返せばスウェーデンの夏至に行うザリガニパーティのシーンしか印象に残っていない。

ロイ・アンダーソン監督は、その『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』が処女作で、そこから50年も経っているのに、今回の『ホモ・サピエンスの涙』が長編6作目と云う寡作の映画監督だった。

『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』の純粋な映画からすれば、『ホモ・サピエンスの涙』はだいぶ老境に達したスタイルに見えてしまうけれども、人物の動作など、その研ぎ澄まされた省略は、人間と云う変な生き物の生態を客観的に捉えるには最適な手法だったような気もする。ただ、その日本的な「わびさび」にも見えてしまう手法を面白く感じるかどうかは、やはり受け手側に依存してしまうので、評価は二分してしまうのだろうなあ。

→ロイ・アンダーソン→レスレイ・リヒトワイズ→スウェーデン、ドイツ、ノルウェー/2019→新宿武蔵野館→★★★☆

監督:ジェラール・ウーリー
出演:デビッド・ニーブン、ジャン・ポール・ベルモンド、ブールヴィル、イーライ・ウォラック、シルビア・モンティ、フランク・バロア
原題:Le cerveau
制作:フランス、イタリア、アメリカ/1969
URL:https://belmondoisback.com
場所:新宿武蔵野館

今回の新宿武蔵野館での「ジャン・ポール・ベルモンド傑作選」に町山智浩が次の言葉を寄せている。

ベルモンドがいなかった世界を想像して欲しい。もしかしたら、 ヌーヴェル・ヴァーグもコブラもジャッキー・チェンも、ルパン三世もいなかったかもしれないんだよ!

いつもながら、それは言いすぎだよ、とはおもわなくはないけれど、たしかに今回のジェラール・ウーリー監督の『大頭脳』は「ルパン三世」のアニメ版に大きな影響を与えているような映画だった。シトロエンやプジョーの車が数多く登場するのも、まるで宮崎駿版「ルパン三世」を見ているようだった。

でも、このような軽妙洒脱な映画で115分は長かった。90分くらいに収めるテンポで、ラストの札束が舞うシーンがあったら、もっとウキウキして映画館を後にすることが出来たのに。

→ジェラール・ウーリー→デビッド・ニーブン→フランス/1969→新宿武蔵野館→★★★

監督:ジョルジュ・ロートネル
出演:ジャン=ポール・ベルモンド、マリー・クリスティン・デスコード、エリザベス・マルゴーニ、ロベール・オッセン、ミシェル・ボーヌ
原題:Le professionnel
制作:フランス/1981
URL:https://belmondoisback.com
場所:新宿武蔵野館

考えてみると、ジャン=ポール・ベルモンドの映画をそんなに多く観ていない。映画館で観たのはゴダールの『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』とトリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』くらい。そしてテレビで見た日本語吹替版のアラン・レネ『薔薇のスタビスキー』が印象に残っていて、WOWOWで見たジャン=ピエール・メルヴィルの『いぬ』もちょっと印象に残っているくらい。

そしてなぜか、この時期に、「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」が新宿武蔵野館で始まったので、良い機会だからちょっと観に行った。

ジョルジュ・ロートネル監督の『プロフェッショナル』は全体的にもっさりとしたアクション映画だった。ジャン=ポール・ベルモンドの動きがキビキビとしていない。なのに、あいつは伝説の男だ、みたいな扱いになっているのが笑えて、ところどころ、そんな感じのオフビートな笑いに溢れている映画だった。この手の映画が面白く感じるのって、なんなんだろう? 中原昌也が選びそうな映画。いや、それにしてはちょっとまともな映画かなあ。

→ジョルジュ・ロートネル→ジャン=ポール・ベルモンド→フランス/1981→新宿武蔵野館→★★★

監督:黒沢清
出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大、坂東龍汰、恒松祐里、みのすけ、佐藤佐吉、玄理、笹野高史
制作:NHK、NHKエンタープライズ、Incline、C&Iエンタテインメント/2020
URL:https://wos.bitters.co.jp
場所:MOVIXさいたま

黒沢清の映画を観るといつもモヤモヤする。名だたる映画評論家が絶賛し、数々の映画祭の賞も獲っているので、黒沢清の監督としての力量に異議を挟むつもりは毛頭無いのだけれど、なんだろう、あー面白かったと云う感情が、いつもまったくわかないのがとてもつらい。

今回の『スパイの妻』も、高橋一生が演じている貿易会社を営む福原優作と、蒼井優が演じているその妻の聡子との関係が、最初は普通の夫婦に見えながらも、第二次世界大戦と云う波に飲まれて次第におかしな関係になっていく過程が面白いと云えば思う白いんだけど、最後まで観終わって、この映画はなんだったんだろう、の感想しかわかなかった。

ひとつ、すごく面白かったのは、蒼井優がむかしの日本映画に出てくる女優のような発声方法をしていたことだった。昔の、ちょっと上流の女の人は、あんな喋り方をしていたんだろうか? それとも日本映画界の特有の発声方法だったんだろうか?

→黒沢清→蒼井優→NHK、NHKエンタープライズ、Incline、C&Iエンタテインメント/2020→MOVIXさいたま→★★★

監督:オリヴィエ・ナカシュ、 エリック・トレダノ
出演:ヴァンサン・カッセル、レダ・カテブ、ベンジャミン・レシュール、エレーヌ・ヴァンサン、リナ・クードリ、アルバン・イヴァノフ、マルコ・ロカテッリ、ブライアン・ミヤルンダマ
原題:Hors normes
制作:フランス/2019
URL:https://gaga.ne.jp/specials/
場所:新宿武蔵野館

日本でもミニシアターを中心に大ヒットを記録した『最強のふたり』を監督したオリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノの最新作。

どこの国でも、もし認可されていない施設が横行しているとするならば、その非認可の施設を取り締まれば良いと云うことでは絶対になくて、非認可の施設が存在せざるを得ない状況に問題があるのは間違いないことだろうとおもう。オリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノが実話をもとにして監督した『スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~』でも、「自閉症」と云われる病症を見せる人たちを受け入れている非認可の施設へ政府からの調査が入る状況が描かれている。と同時に、その施設で預かっている人たちのさまざまな症状を丁寧に描写していて、それをケアする支援員のハードな仕事ぶりも映し出している。そしてさらに、社会からはじき出された若い人たちを施設の支援員として受け入れようとしている様子も描かれている。

重度の「自閉症」の人たちの受け入れを嫌がる公的な施設があるからこそ、ヴァンサン・カッセルが演じているブリュノが運営する自閉症の人たちをケアする団体〈正義の声〉が存在せざるを得ない。そして、社会からはみ出した若い人たちの行く末が犯罪に手を染めることしかなからこそ、レダ・カテブが演じているマリクが運営するドロップアウトした若者たちを社会復帰させる団体〈寄港〉が存在する。そのどちらも公的な機関ではないけれども、使命感だけから手弁当に近い報酬だけで施設を運営していて、ブリュノの婚活もままならないほどの自己犠牲は、どうして他人のためにそこまでやれるのか? と、彼らの執念ともおもえる活動ぶりに感嘆せざるを得ない内容になっていた。

もちろんこのような設定は、映画としてはおいしい題材で、とても感情移入しやすい映画ではあったけれども、それを差し引いても素晴らしい映画だった。それに「自閉症」の人たちを演じている俳優が、まるでドキュメンタリーを見ているようで、オリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノの監督としての確かな演出力を感じる映画でもあった。

→オリヴィエ・ナカシュ、 エリック・トレダノ→ヴァンサン・カッセル→フランス/2019→新宿武蔵野館→★★★★

監督:ヴァーツラフ・マルホウル
出演:ペトル・コトラール、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、ウド・キア、イトゥカ・ツヴァンツァロヴァ、アレクセイ・クラフチェンコ
原題:Nabarvené ptáče / The Painted Bird
制作:チェコ、スロバキア、ウクライナ/2019
URL:http://www.transformer.co.jp/m/itannotori/
場所:シネプレックス幸手

ポーランドの作家イェジー・コシンスキの同名小説の映画化。

ユダヤ系ポーランド人であるイェジー・コシンスキは、第二次世界大戦中に両親と別れて、カトリック教徒を装って田舎に疎開してホロコーストから逃れた。そのときのトラウマから5年間、口がきけなくなってしまったらしい(Wikipediaから)。小説「異端の鳥」はおそらくはそのときの体験をベースに書かれた小説で、それを忠実に映画化したのがこのヴァーツラフ・マルホウルの映画だった。

東ヨーロッパの寒村に住む叔母のもとに疎開した男の子が、叔母を亡くしたことから各地をさすらう行動描写は、映画の題材としては格好の素材で、その先々で出会う醜悪な大人たちによる酷い仕打ちによって、次第に心を失って、言葉も無くして行く過程は、まるでロードムービーを観ているようで面白くもあり、もちろん辛くもあった。

ヨーロッパの映画を観ていていつもおもうことだけれど、貧しい人々がカトリックという宗教にすがることによって得られるものが「平穏」ではなくて「残酷さ」なのはどうしてなんだろう。この映画でも、姦通した男の目をくり抜く行為や、男をたぶらかす不浄な女を魔女のように扱って虐待するシーンや、いろいろな動物が残酷な行為に関わる部分は宗教から来るものとしてしか考えられない。自分たちとは違うものを叩ことうとする姿勢やそれを排除するときの苛烈さは、いまもってキリスト教やイスラム教を信じる一部の人々にあることが「宗教」に対する不信を強める要因になっている。

で、この映画を観ていくうちに、あれ? ステラン・スカルスガルドに似ている人が出ている、いや、ステラン・スカルスガルド本人じゃないか。おお、ハーヴェイ・カイテルも出ている。ジュリアン・サンズもこんな役か! と豪華な出演陣だったのはびっくり。

→ヴァーツラフ・マルホウル→ペトル・コトラール→チェコ、スロバキア、ウクライナ/2019→シネプレックス→幸手★★★☆

監督:刁亦男(ディアオ・イーナン)
出演:胡歌(フー・ゴー)、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、廖凡(リャオ・ファン)、レジーナ・ワン
原題:南方車站的聚会 The Wild Goose Lake
制作:中国、フランス/2019
URL:http://wildgoose-movie.com
場所:新宿武蔵野館

前作の『薄氷の殺人』がとても印象的だったディアオ・イーナン監督の新作。

湖北省の省都でもある武漢市と云えば、なんと云っても、新型コロナウイルス(COVID-19)の震源地として有名になってしまった。それ以前には、サッカーファンにとっては、AFCアジアカップ2004の舞台として、反日運動の高まりのなか日本代表が決勝で中国を破って優勝したおもいでの地でもあった。

その武漢市の勝手なイメージは、人も熱くて、気候も暑い。2004年のころの反日運動の暴徒化はすさまじかったし、内陸部の滞っているような熱い空気はそんな人々の不満をさらに駆り立てているようでもあった。だから、その人の多さから、そして衛生面の欠如から、何やら怪しげなウイルスが出てきてもおかしくないようなイメージだった。

ディアオ・イーナン監督の『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』の舞台である「鵞鳥湖」は架空の湖だったけれど、どうやらロケは武漢市の有名観光地「東湖」で行われたらしい。だから、映画を支配している全体的なイメージは武漢市の暑さだった。ただ、そこで暗躍する男と女は、どこか疲れ切ったような、広角泡飛ばして言葉をまくしたてる中国人のイメージとは違って冷めた人間ばかりだった。それがかえって不気味さを増していて、ちょっと入り込んだ路地裏にもいる人の多さからも、ソンビ映画に似た怖さを感じてしまった。まるでゾンビに襲われるがごとく、いろいろなものが、病気だけではなくて、負のオーラも、不満の爆発も、簡単に感染しそうだった。それをうまく映像化している映画だった。

ディアオ・イーナン監督のカットのつなぎ方は、なんだか、昔の日本映画を観ているようだった。黒澤明の『野良犬』とか。ファーストシーンの男と女が駅前で出会うシーンに懐かしさを感じるとともに、ああ、映画ってこういうものだよなあ、とおもうことしきり。

→刁亦男(ディアオ・イーナン)→胡歌(フー・ゴー)→中国、フランス/2019→新宿武蔵野館→★★★★