チョコレートドーナツ

監督:トラビス・ファイン
出演:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイバ、フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー、クリス・マルケイ、ドン・フランクリン、ケリー・ウィリアムズ、ジェイミー・アン・オールマン
原題:Any Day Now
制作:アメリカ/2012
URL:http://bitters.co.jp/choco/
場所:新宿武蔵野館

まだマイノリティの人たちへの差別が激しかった70年代に、ゲイのカップルがダウン症の子を薬物依存の母親から引き取って育てようとするストーリー。そこにさらに黒人の弁護士も加わって、さまざまなマイノリティたちが寄り添ってダウン症の子を守ろうとするけれども、保守的な法曹界や融通の利かないお役所仕事に裏切られ続け、泣く泣く自堕落な母親の元にダウン症の子を返さざるを得なくなる主人公たちの姿が痛々しかった。ラストにささやかな復讐が設けられてているけど、それだけでは何とも気持ちが納まらない映画だった。そこに救いがあるとすれば、実際にダウン症であるアイザック・レイバの笑顔だろうけど、うーん、もうちょっと彼に活躍の場があれば良かったのに。ゲイのカップルであるアラン・カミングとギャレット・ディラハントがアイザック・レイバと徐々に心が通い合って行く描写がもっとあれば、ラストの哀しみも倍増しただろうに。

→トラビス・ファイン→アラン・カミング→アメリカ/2012→新宿武蔵野館→★★★

アメイジング・スパイダーマン2

監督:マーク・ウェブ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン、ジェイミー・フォックス、デイン・デハーン、コルム・フィオール、フェリシティ・ジョーンズ、ポール・ジアマッティ、サリー・フィールド、エンベス・デイヴィッツ、キャンベル・スコット、ートン・チョーカシュ
原題:The Amazing Spider-Man 2
制作:アメリカ/2014
URL:http://www.amazing-spiderman.jp/site/
場所:新宿ミラノ3

スパイダーマンの主人公ピーター・パーカーをいじめられっ子のネクラな高校生から普通の爽やかな高校生に置き換えちゃった時に、オタクな雰囲気の漂うサム・ライミ版スパイダーマンが『(500)日のサマー』のような鮮やかな青春ムービー・スパイダーマンに変貌して、それはそれで楽しめるとおもっていたのだけれど、ビルからビルへと飛び回る際の視点変動がダイナミックになったところに感動するぐらいで、他の部分はいたってフツーな映画になってしまったのはがっかりしてしまった。この『アメイジング・スパイダーマン2』も、どこか、何でも良いから、マーク・ウェブらしい部分が前面に出てこないと、これじゃ誰が撮っても同じだろう、と云う感想はまったく変わらなかった。

でも、よくよく考えてみると、映画の出来としてはマーベル・シネマティック・ユニバースの映画群とそんなに変わらないのかもしれない。ただ、マーベル・シネマティック・ユニバースの映画のほうがキャラクターを相互に乗り入れさせて、全体として一大テーマパークのような楽しさを醸し出していると云うことだけで。DCコミックも『Batman v Superman: Dawn of Justice』(2017年公開予定)が控えているので、もしかするとマーベルコミックスと同じ路線に突入してい行くんだろうか。

→マーク・ウェブ→アンドリュー・ガーフィールド→アメリカ/2014→新宿ミラノ3→★★☆

プリズナーズ

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール、ヴィオラ・デイヴィス、マリア・ベロ、テレンス・ハワード、メリッサ・レオ、ポール・ダノ、ディラン・ミネット、ゾーイ・ソウル、エリン・ゲラシモヴィッチ、ウェイン・デュヴァル、レン・キャリオー、デヴィッド・ダストマルチャン
原題:Prisoners
制作:アメリカ/2013
URL:http://prisoners.jp
場所:池袋シネマ・ロサ

ネットでは話題になっていたけど、なかなか重い腰が上げられず、ずっと先延ばしにしていたら今週で上映が終わりそうなので、よし今日は映画の日だから行こう! とやっと観に行った映画。今までの経験から、ぐずぐずと悩んだ末に、終了間際にやっと観た映画はなぜか傑作が多い。今回もそれに倣っていた。

長い映画の歴史の中でサスペンス映画は、あの手この手とすべてやり尽くされていて、今となってはあっと驚くような展開は望むべくもないとおもっていた。あったとしても無理やりの展開で、そりゃないよ、と云うものばかりだとおもっていた。でも、やはり、いろいろとやりようはあるんだなあ。この映画の犯人が暴れて行く展開はまったく読めなかった。それでいて無理な展開ではなく、とても納得の行く流れだった。

以下、ネタバレ。

映画を観に行くにあたって充分にキャストの予習をしておいたならば、たぶん、犯人はすぐにわかったのかもしれない。だってメリッサ・レオが、まるでメリッサ・レオに見えない扮装で老けたお婆さん役をやっているわけだから、すぐにこいつは怪しい、とわかったはずだ。でも、その予習をしていなかったので、まさかあの婆さんがメリッサ・レオとはおもえずに、誰か名の知れない役者がやっているとおもってしまってするりとマークを外してしまった。

ヒュー・ジャックマンがポール・ダノを犯人と断定して執拗に暴力を加えるさまは、もしこれがまったく事件と関係のない人間だったとしたならば、とても不快な結末を迎えることになったに違いない。そこを巧く回避しているだけではなく、知的障害のあるポール・ダノが事件と関係しているとおもわせるセリフを云ったり、替え歌を唄ったりするシーンも、常人離れした不可思議さと云った曖昧な解決策に頼る事なく、しっかりと事件と関係していることが明らかになる部分も感動的だった。

自宅の地下から死体(おそらくメリッサ・レオの夫?)が見つかる神父やボックスに蛇を飼っている男(模倣犯)などの登場も、単純に犯人じゃないかと云うおもわせぶりのキャラクターではなくて、「迷路」のシンボルを見せることによってすべてに繋がりがあることを明らかにするシーンもゾクゾクするほど巧かった。

ラストは、おそらく映画を見ている人のすべてが、ヒュー・ジャックマンの吹くホイッスルが聞こえて来ることを固唾を呑んで見守ったとおもう。そのような一体感が得られる映画としても素晴らしかった。

たぶん、今年の映画のベストに入ってくるとおもう。それほど完璧な映画だった。

→ドゥニ・ヴィルヌーヴ→ヒュー・ジャックマン→アメリカ/2013→池袋シネマ・ロサ→★★★★☆

ブルージャスミン

監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン、サリー・ホーキンス、ボビー・カナヴェイル、ルイス・C・K、アンドリュー・ダイス・クレイ、ピーター・サースガード、マイケル・スタールバーグ、タミー・ブランチャード、マックス・カセラ、アルデン・エーレンライク
原題:Blue Jasmine
制作:アメリカ/2013
URL:http://blue-jasmine.jp
場所:ユナイテッドシネマとしまえん

今年も無事、ウディ・アレンの映画が日本にやって来た。彼もすでに78歳になるので、自分にとっては1983年の『カメレオンマン』から続いている、ウディ・アレンが1年ごとに新作を撮る→日本にちゃんと配給される→いそいそと映画館に足を運ぶ、のサイクルがいつまで維持されるのか、そしてそれが途絶えた時の哀しみというものがどれほどのものなのか、今から考えても寂しくてしかたがない。

この『ブルージャスミン』でケイト・ブランシェットはアカデミー主演女優賞を獲った。WOWOWの授賞式の中継でケイト・ブランシェットの名前が呼ばれた時におもわず「ガラドリエル様!」と叫んでしまったくらいのケイト・ブランシェットのファンなので、この授賞はものすごく嬉しかった。でも、映画を観てみれば授賞は当たり前なくらいの素晴らしい演技で、もしこれで獲れなかったら、一生ノミニーされ続けるだけの女ディカプリオになってしまうんじゃないかとおもうくらいだった。

彼女の演じる「ジャスミン」は、いつものようにウディ・アレン自身が反映されているキャラクターではあるのだけれど、今回はその転落人生をちょっと突き放して描いてみせるので、おそらくウディ・アレンの映画の中で一番の哀憫の念を感じさせる女性のキャラクターなんじゃないかとおもう。ラストシーンの独り言は、まるでビリー・ワイルダー『サンセット大通り』のラストのグロリア・スワンソンのようだった。それにしても、アレック・ボールドウィンにティーンの留学生との浮気をさせるなんて、どこまで自虐的なんだ、ウディ・アレンは!

→ウディ・アレン→ケイト・ブランシェット→アメリカ/2013→ユナイテッドシネマとしまえん→★★★★

とらわれて夏

監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、クラーク・グレッグ、ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク、マイカ・モンロー、トビー・マグワイア
原題:Labor Day
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.torawarete.jp
場所:新宿武蔵野館

今までのジェイソン・ライトマンの映画は、『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』『ヤング≒アダルト』と、シチュエーションの組立てがとても面白くて、まったく次の展開が読めなくて、わくわくさせられる映画が多かった。ところが今回の映画は、何と云うのか、今までにさんざんと扱われて来た題材と云うのか、手垢にまみれた感がいっぱいのストックホルム症候群の映画で、ストーリーの展開にわくわくさせられる感覚はまったくなかった。

それに、ケイト・ウィンスレットが登場する映画の雰囲気がどれも似たようなものに映るのはどうしてなんだろう。この映画のイメージも『リトル・チルドレン』や『愛を読むひと』とあまり変わらないように見えてしまった。どの映画も欲求不満なキャラクターばかりを演じているからだろうけど、『ヤング≒アダルト』のシャーリーズ・セロンに比べるとあまりにも差がありすぎる。まあ、たぶん、好みの問題だけなんだろうけど。今回のジェイソン・ライトマンは、ラストの取って付けたようなハッピーエンドも含めて、ちょっとがっかり。

→ジェイソン・ライトマン→ケイト・ウィンスレット→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★

WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜

監督:矢口史靖
出演:染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明、優香、西田尚美、マキタスポーツ、有福正志、近藤芳正、光石研、柄本明
制作:「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜」製作委員会/2014
URL:http://www.woodjob.jp
場所:109シネマズ木場

矢口史靖の映画は、ある業界と云うのか、ジャンルと云うのだろうか、にスポットを当てて、その現場の中へ映画を見ている我々の代理人としての新人を放り込み、業界特有のディティールに戸惑い、挫折しながらも、次第にその場に溶け込んで行き、同化して行く主人公の姿を追いかけるものが多い。すでに業界内にいる人間と新人とのコントラストをはっきりとさせるために、時には演技がオーバーアクションだったり、ステレオタイプが登場する場面では鼻白む場合もあるけど、あっけらかんと対立軸を明確にして前面に押し出して来る映画は見ていて気持ちが良い。

『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』の業界は「林業」だった。都会のどうしようもないチャラいあんちゃんが不純な動機で林業研修にやって来て、携帯の電波も届かない、コンビニもない三重県の山間の田舎で、当地の住人や林業現場の人たちに揉まれながらも徐々にそこに根ざして行く姿を描いている。チャラいあんちゃんを演じているのは染谷将太。意気込みや情熱のない人間を演じさせたら今のところおそらく彼が一番だ。へらへら、ちゃらちゃらしながら地道に林業のテクニックを身に付けて行って、地元の人たちにも受け入れられて行く姿は見ていて楽しかった。

→矢口史靖→染谷将太→「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜」製作委員会/2014→109シネマズ木場→★★★☆

8月の家族たち

監督:ジョン・ウェルズ
出演:メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、クリス・クーパー、アビゲイル・ブレスリン、ベネディクト・カンバーバッチ、ジュリエット・ルイス、マーゴ・マーティンデイル、ダーモット・マローニー、ジュリアン・ニコルソン 、ミスティ・アップハム、サム・シェパード
原題:August: Osage County
制作:アメリカ/2013
URL:http://august.asmik-ace.co.jp
場所:新宿武蔵野館

メリル・ストリープの映画である。メリル・ストリープの演技を楽しめば良いのである。それは見る前からわかっていたことなので、一生懸命にそこを楽しもうと努力したのだけれど、結局はダメだった。女優としてのメリル・ストリープの素晴らしさにケチをつける気はこれっぽちも無いけど、さすがにここまで来るとメリル・ストリープの演技の巧さに辟易してしまう。そしてその演技に対抗するようなジュリア・ロバーツにも辟易してしまった。つまり、すべてがメリル・ストリープと云うブラックホールに吸い込まれてしまって、何もかもがメリル・ストリープ印になってしまうほどにメリル・ストリープの映画になってしまうのだ。

唯一、それに抵抗する勢力として、光っていたのがジュリア・ロバーツの妹役を演じたジュリアン・ニコルソンだった。グイグイと、前へ前へと演技の巧さを押し出してくる女優ばかりの中では、かえって静かな演技のジュリアン・ニコルソンのほうが引き立ってしまうと云う面白さ。アカデミー助演女優賞のノミネートはジュリア・ロバーツではなくてジュリアン・ニコルソンのほうだったんじゃないのか。

メリル・ストリープの映画は、もうスパイク・ジョーンズあたりに『マルコヴィッチの穴』のようなメリル・ストリープ自身の映画を撮ってもらったらどうだろう。『ザ・メリル・ストリープ』と云うタイトルにでもして。

→ジョン・ウェルズ→メリル・ストリープ→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
出演:クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、セバスチャン・スタン、アンソニー・マッキー、コビー・スマルダーズ、フランク・グリロ、エミリー・ヴァンキャンプ、ヘイリー・アトウェル、ロバート・レッドフォード、サミュエル・L・ジャクソン
原題:Captain America: The Winter Soldier
制作:アメリカ/2014
URL:http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki
場所:シネマスクエアとうきゅう

ここまでマーベル・シネマティック・ユニバースの映画が増えてくると、例えば『アベンジャーズ』と『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』との時系列が気になって来る。単純に公開順を時間の流れと考えて良いのか、それとも微妙に前後しているのか。それが知りたくてネットを徘徊していると次のページを見つけた。『アベンジャーズ』の公開に合わせてアートブック「Avengers: The Art of Marvel’s The Avengers」が発売されて、その中に「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズのタイムラインが載っているらしい。その日本語化をしているサイトだ。

http://gameandmovie.blog.fc2.com/blog-entry-25.html

で、タイムラインがこれ。

http://blog-imgs-55-origin.fc2.com/g/a/m/gameandmovie/Cinematic_Universe_Timeline_japan.gif

『アベンジャーズ』までのタイムラインだけど、おお、時間軸がよくわかる。と云うか、キャプテン・アメリカが北極圏で発見されるのはつい最近じゃないか。キャプテン・アメリカも見つかってから『アベンジャーズ』の闘いがあって、そしてこの『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の「ヒドラ」との闘いがあって、そしておそらく『アベンジャーズ2』の闘いも控えているのだろうし、裏では『マイティ・ソー』の闘いも同時進行しているだろうし、何? この世界? 的なマーベル・シネマティック・ユニバースだ。

マーベル・シネマティック・ユニバースの映画は、それぞれにしっかりとクライマックスを設けているし、それなりにストーリーを完結させているのに、他の映画との繋がりを暗示させるラストシーンを持って来て、次の映画への関心を持続させる方法は巧いともおもえるし、あこぎだとも云えるし、そんなに繋げちゃったらいろいろと破綻しちゃうじゃないの? と云う心配まで、もう、渾沌として来た。この映画のエンドクレジットに出て来た「もの」はどうやら『マイティ・ソー』のロキの杖らしい。うーん、それは何だ! 『アベンジャーズ2』へ続く… か!

→アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ→クリス・エヴァンス→アメリカ/2014→シネマスクエアとうきゅう→★★★☆

アナと雪の女王(2D日本語吹替版)

監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
声:神田沙也加、松たか子、原慎一郎、ピエール瀧、津田英佑、多田野曜平
原題:Frozen
制作:アメリカ/2013
URL:http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki
場所:シネマスクエアとうきゅう

『アナと雪の女王』が動員1265万人を突破して、興収収入は159億を越えたそうだ(2014年5月6日現在)。映画が大ヒットするのはもちろんこの映画に魅力があって、多くの人を感動させられる要素があるからこそヒットするのだろうけど、ここまで化けてしまうとその大衆性に嫌気がさして、とても観に行く気が失せてしまうのがひねくれ者の常だ。一方で、オタク気質のレア物一辺倒も大嫌いで、カルトっぽいものばかり追いかけるのも大嫌いで、柳下毅一郎が云うような「ロメールやリヴェットの話ばかりする映画マニア(含評論家)はどうも信用できない」な奴らも大嫌い。

なわけだから、大ヒットしている映画なんて大衆受けのする要素が最大公約数として集まった味の薄い映画でしかないとおもいながらも『アナと雪の女王』を観に行く。

ところがこれが、期待度のハードルをものすごく下げたことが功を奏したのか、とても面白かった。

まず、吹替えが良かった。特にアナ役の神田沙也加が良かった。神田沙也加なんて、親の七光り以外に何があるのかまったく理解していなかったけど、芸能関係をつかさどるDNAのパートがあって、それがしっかりと遺伝されたのではないかとおもえるほど吹替えが巧かった。

それから、オラフ、と云う名前の雪だるまのキャラクターだ。芝居の中に出てくる道化の役割をしっかりと担っているて、出てくるタイミングも抜群に良い。吹替えのピエール瀧も素晴らしい。もしこのオラフがいなかったら、この映画をここまで面白いとは感じなかったかもしれない。

それから、もちろん松たか子のレリゴー。考え抜かれた日本語の翻訳がCGアニメとリップシンクするのは感動的だ。

とにかく、どんなにくだらざそうな映画だとしても、大衆迎合的な映画に見えたとしても、まずは映画館に足を運んで観てみなければ。そこにはおもった以上のテクニックと考え抜かれた構成と演出があるのかもしれない。

→クリス・バック、ジェニファー・リー→(声)神田沙也加→アメリカ/2013→シネマスクエアとうきゅう→★★★★

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!

監督:エドガー・ライト
出演:サイモン・ペグ、ニック・フロスト、パディ・コンシダイン、マーティン・フリーマン、エディ・マーサン、ロザムンド・パイク、ソフィー・エバンス、サマンサ・ホワイト、ローズ・レイノルズ、デヴィッド・ブラッドレー、ピアース・ブロスナン
原題:The World’s End
制作:イギリス/2013
URL:http://www.worldsend-movie.jp
場所:ユナイテッドシネマ豊洲

「酔っぱらい」と云うキーワードだけで、なぜか『ハングオーバー!』みたいな映画を想像してしまったのだけれど、エドガー・ライトの映画がそんな訳がなかった。どちらかと云うと『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』に似ていて、映画の雰囲気を途中から一転させて、あれよあれよと云う間におもっても見ないような展開へ畳みかけるテクニックはさすがエドガー・ライトだった。ただ、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』のような過去の映画にオマージュを捧げるようなシーンはあまり登場せず、純粋なるSFコメディ映画だった。“Robot”についての言葉遊びを出して来るのなら、もっとその手のロボット映画とか寄生獣系の映画(『ヒドゥン』とか『スピーシーズ』とか)のパロディがあっても良かったのに。

映画の中に12ヶ所のパブが出てくる。このパブすべてでビールを飲む事を中年になってから再び挑戦しようとするのがこの映画の基本的なストーリーラインだった。でも途中からそんな事はどうでも良くなって、とんでもないストーリーに展開して行く。観終わってから、はたと気付く。あの、パブは何だったんだろう? エドガー・ライトとサイモン・ペグの事だからそこにも何か仕掛けがあるんじゃなかろうかと。

その12ヶ所のパブの名前は以下の通り。

1. The First Post
2. The Old Familiar
3. The Famous Cock
4. The Cross Hands
5. The Good Companions
6. The Trusty Servant
7. The Two Headed Dog
8. The Mermaid
9. The Beehive
10. The King’s Head
11. The Hole in the Wall
12. The World’s End

The First Post The Old Familiar The Famous Cock The Cross Hands
The Good Companions The Trusty Servant The Two Headed Dog 8_The_Mermaid
The Beehive The King’s Head The Hole in the Wall The World’s End

そこで、このパブの名前についてネットを徘徊してみると、それについていろいろと言及している人がいるにはいる。

The Meanings Behind the 12 Pubs in The World’s End
http://oracleoffilm.com/2013/10/02/the-meanings-behind-the-12-pubs-in-the-worlds-end/

Special Features – What Do The Pub Names in The World’s End Mean?
http://www.flickeringmyth.com/2013/07/special-features-what-do-pubs-in-world.html

The World’s End Pub Name Meanings (I Think!)
http://radiodan.wordpress.com/2013/08/27/the-worlds-end-pub-name-meanings-i-think/

うーん、どれも何かこじつけのような内容ばかり。エドガー・ライトとサイモン・ペグによる公式見解みたいなものがあればそれを聞いてみたい。

→エドガー・ライト→サイモン・ペグ→イギリス/2013→ユナイテッドシネマ豊洲→★★★☆