ウルフ・オブ・ウォールストリート

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、ジャン・デュジャルダン、ロブ・ライナー、カイル・チャンドラー、マーゴット・ロビー、ジョン・ファヴロー、マシュー・マコノヒー
原題:The Wolf of Wall Street
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.wolfofwallstreet.jp
場所:T・ジョイ 大泉

今年のアカデミー主演男優賞は、下馬評どおり『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒーが獲った。もしかすると今回はレオナルド・ディカプリオが行けるんじゃないかと一縷の望みもあったような気もするけど、やっぱりアカデミー会員は彼に冷たかった。と云うわけで、別にレオナルド・ディカプリオのファンと云うわけでもないのだけれど、「この演技でオスカーが獲れないのならいったい何で獲れるんだ」記念で『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を観に行った。

レオナルド・ディカプリオは素晴らしかった。彼が演じたジョーダン・ベルフォートと云う人物には寸分たりとも共感できなかったけれど、今回こそはこれで絶対にアカデミー主演男優賞を獲るんだとの鬼気迫る演技で、セックス&ドラッグに溺れる拝金主義者の狂乱状態を見事に演じきっていた。ディカプリオが演技をする上でのモチベーションこそが、まるで演じているジョーダン・ベルフォートから感化されたかのごとくに見えて来るのも面白い。生き馬の目を抜くハリウッドの世界でモチベーションを維持させているディカプリオも、おそらくモチベーショナルスピーカーになれるはずだ。

そのレオナルド・ディカプリオの演技に加えて、この映画の中で面白かったのは、学歴などに関係なくトップセールスマンになれる営業トークの方法をジョーダン・ベルフォートが編み出していて、それをみんなに伝授させながら会社を大きくして行っているところだった。相手をその気にさせる営業トークと云うのは、頭の良さなどとはあまり関係なくて、ある程度、マニュアル化されたテクニックだけで出来てしまうのところが怖い。もしかすると「オレオレ詐欺」をやっている奴らもモチベーショナルスピーカーの講演を聞きに行ってるんじゃないだろうか、などと、ふとおもってしまった。

→マーティン・スコセッシ→レオナルド・ディカプリオ→アメリカ/2013→T・ジョイ 大泉→★★★☆

鑑定士と顔のない依頼人

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・フークス、ドナルド・サザーランド、フィリップ・ジャクソン、ダーモット・クロウリー、リヤ・ケベデ、キルナ・スタメル
原題:The Best Offer
制作:イタリア/2013
URL:http://kanteishi.gaga.ne.jp
場所:新宿武蔵野館

公開から時間が経つと、積極的にその映画の情報を得ようとしなくとも、ぽろぽろと断片情報が漏れ聞こえてきてしまう。たとえそれがそのものズバリの情報でなくても、その映画がどう云った類いのものであるのかがおぼろげに見えてきてしまう。この『鑑定士と顔のない依頼人』の場合は、どんでん返し、とか、驚きの展開、などのキーワードをTwitterでチョロッと拾ってきてしまったので、ジェフリー・ラッシュへ謎の女から電話がかかって来た時点で、しっかりと裏読みの体制を整えてしまっていた。そうしたら、なんと、その裏読みした通りのままストーリーが進んでしまった。しっかりとしたシナリオだし、女性の肖像画で埋め尽くされた部屋などのビジュアルにも目が瞠るものがあってとても楽しめる映画ではあるのだけれど、でも単純に、フェイク映画の常道を突き進んでいるだけの映画だった。だとしたら、ヒッチコックのように途中からネタバレさせて、その上でストーリーを構築させてしまったほうが良かったような気もするけど、それはいろんなパターンの映画を見尽くしてしまった映画オタクのごたくで、まったくの素直な気持ちでこの映画を見れば充分に楽しめる映画ではあるのだけれど。『ニュー・シネマ・パラダイス』と同じで、トルナトーレの映画を楽しむにはピュアな心持ちが必要だ。

→ジュゼッペ・トルナトーレ→ジェフリー・ラッシュ→イタリア/2013→新宿武蔵野館→★★★☆

ドラッグ・ウォー 毒戦

監督:ジョニー・トー
出演:ルイス・クー、スン・ホンレイ、クリスタル・ホアン、ウォレス・チョン、ラム・シュー、ラム・ガートン、ミシェル・イェ、ロー・ホイパン、チョン・シウファイ、バーグ・ウー、フィリップ・キョン
原題:毒戦 Drug War
制作:香港、中国/2013
URL:http://www.alcine-terran.com/drugwar/
場所:新宿シネマカリテ

多作家のジョニー・トーの映画をすべて追いかけるのは大変だ。新作の『名探偵ゴッド・アイ』も見逃してしまったし、2011年の『奪命金』とこの『ドラッグ・ウォー 毒戦』のあいだにも『高海抜の恋』と云う映画を撮っているらしい。むかしのスタジオ・システムが機能していた時代ならいざ知らず、いまの時代にこんなに映画が制作できるジョニー・トーは、ある意味、奇跡の映画作家ではないかとおもうと同時に、どこかのネジがすっ飛んでしまって制御が効かなくなった映画マシーンのようにも見えて狂気さえ感じてしまう。こんなに映画を乱発できる情熱はいったいどこから来るんだろう。

『ドラッグ・ウォー 毒戦』は、キッチリとした構成されていた『奪命金』に比べると、とても直線的な映画だった。登場人物の背景などの説明はすべて省き、情感的なものまでもすべて排除して、ただ突っ走る暴走機関車のような映画だった。無表情で拳銃をぶっ放す破滅的な人間の祝宴は北野武へのオマージュのようにも見えるけど、でも、もう少しひねりがあっても良かったような気がする。

→ジョニー・トー→ルイス・クー→香港、中国/2013→新宿シネマカリテ→★★★

アメリカン・ハッスル

監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:クリスチャン・ベール、ブラッドレイ・クーパー、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、ジェニファー・ローレンス、ルイス・C・K、マイケル・ペーニャ、ジャック・ヒューストン、エリザベス・ローム、エリカ・マクダーモット、ロバート・デ・ニーロ
原題:American Hustle
制作:アメリカ/2013
URL:http://american-hustle.jp
場所:新宿武蔵野館

演技に対してストイックな役者バカとも云える俳優たちが寄り集まって演技合戦をする映画が好きなので、この映画のクリスチャン・ベール、ブラッドレイ・クーパー、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンスの演技のせめぎ合いは見ていて楽しかった。いつものように身体的特徴から入って来るクリスチャン・ベール、『世界にひとつのプレイブック』に続いて多動性障害とも見えるテンションの高いブラッドレイ・クーパー、『ザ・マスター』と同じようにタフでしたたかな演技を見せるエイミー・アダムス、そして『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー主演女優賞を獲ったジェニファー・ローレンス。さらに、ロバート・デ・ニーロだ! 勝敗を付けるものでもないけど、女同士の口喧嘩でボルテージが高まって行って、怒りが暴発するのかとおもいきや喧嘩相手のエイミー・アダムスに突然接吻するジェニファー・ローレンスがそのシーンだけでかっさらってしまったような気がする。出番は少ないけど、ジェニファー・ローレンスの勝ち。

詐欺師の映画と聞いたので、なんとなく『スティング』みたいなスカッとする映画を想像して観に行ってしまったのが間違えで、どちらかと云うとスティーヴン・フリアーズ監督の『グリフターズ/詐欺師たち』のような人間のイヤらしい面をじっくりと見せる映画だった。だから演技合戦ありきの映画で良かったわけだけれど、そこが楽しめなければまったく面白くない映画なのかもしれない。

→デヴィッド・O・ラッセル→クリスチャン・ベール→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★☆

スノーピアサー

監督:ポン・ジュノ
出演:クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、コ・アソン、ジェイミー・ベル、ジョン・ハート、ティルダ・スウィントン、オクタヴィア・スペンサー、エド・ハリス
原題:Snowpiercer
制作:韓国、フランス、アメリカ/2013
URL:http://www.snowpiercer.jp/index01.html
場所:ユナイテッドシネマとしまえん

人類滅亡からかろうじて生き残った人間たちが乗る方舟列車“スノーピアサー”号の中だけで展開するストーリーは、コンパクトなシチュエーションで展開する映画が好きな自分にとってはとても面白い映画だった。最後尾の車両から先頭車両“フロント”へ至る道のりの中で、いったいこの列車は何両連結なのかと云うほど、次から次へと車両ごとにめまぐるしく展開する人間博覧会も面白いし、随所に盛り込む小道具を使った伏線のはり方、そしてその回収の方法も面白かった。ただ、社会階層の縮図として各車両が存在するのならば、“フロント”へ向かって秩序立ってそれぞれの階層の車両が並んでいたら良かったのに。あまりにも乱雑としているので“フロント”にたどり着いた達成感がまったくなかった。外へ出る扉が2両目にだけ存在する理由も、その秩序の中から生まれてくるような設定であったのならもっと深みがあったのに。

韓国のパク・チャヌク監督が撮った『イノセント・ガーデン』を観た時に感じた、無理矢理ハリウッドの映画を撮らされた、と云うような感覚は、このポン・ジュノの『スノーピアサー』では感じられなかった。それはおそらくパク・チャヌクの会社であるモホ・フィルムズがこの映画をコントロールできていたからじゃないかとおもう。特にポン・ジュノとなじみのある韓国人のソン・ガンホ、コ・アソンを使う事が出来たことは大きかった。やはり非英語圏の外国人監督がハリウッドシステムで映画を撮るためには、制作サイドも一緒に持って行けるに越した事はないよなあ。

→ポン・ジュノ→クリス・エヴァンス→韓国、フランス、アメリカ/2013→ユナイテッドシネマとしまえん→★★★☆

マイティ・ソー/ダーク・ワールド

監督:アラン・テイラー
出演:クリス・ヘムズワース、ナタリー・ポートマン、トム・ヒドルストン、アンソニー・ホプキンス、ステラン・スカルスガルド、イドリス・エルバ、クリストファー・エクルストン、アドウェール・アキノエ=アグバエ、カット・デニングス、レイ・スティーヴンソン、ザッカリー・リーヴァイ、浅野忠信、ジェイミー・アレクサンダー、レネ・ルッソ
原題:Thor: The Dark World
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.marvel-japan.com/movies/thor/
場所:新宿ミラノ1

昨年の『アベンジャーズ』のヒットでますます活気づくマーベル・コミック系映画なんだけど、おそらく、この『マイティ・ソー』単体だけの映画化ならば絶対に観に行かなかったとおもう。『アベンジャーズ』があったからこそ、クロスオーバーしたそれぞれの作品にも興味が湧くようになったし、さらにそこからまた違った作品にも注意が向くようになって、その映画化作品も観ようと云う気にさせられてしまう。

例えば、この映画のエンドクレジット後には、さらりとベニチオ・デル・トロが登場する。“コレクター”と云う名前のヴィラン(怪人)で、今年の8/1にアメリカで公開予定(日本では9/13予定)の『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』にも登場する「エルダーズ・オブ・ジ・ユニバース」(ガードナー、グランドマスター、コレクター、チャンピオン、ランナー)の一人だ。で、その「エルダーズ・オブ・ジ・ユニバース」とは何かと云うと、マーベル・コミックの「アベンジャーズ」や「シルバーサーファー」などに登場するキャラクター集団だ。

エルダーズ・オブ・ジ・ユニバース

その“コレクター”が「あと5つある」と云って集めていたものは“インフィニティ・ジェム”と呼ばれるものらしくて、「魂(ソウル、緑)」「力(パワー、赤)」「空間(スペース、紫)」「現実(リアリティ、黄色)」「時間(タイム、オレンジ)」「精神(マインド、青)」の6つの内、今回は緑(だったとおもう)を集めた事になる。これの意味する事は何なんだ! とマーベル・コミック系映画ファンのあいだでは話題になっているらしい。『アベンジャーズ』のラストに出てきたサノス(これもマーベル・コミックに出てくるヴィラン)は、この6つのジェムを嵌めたインフィニティ・ガントレットを作り出すので、それと関連するんだろうか。

インフィニティ・ガントレット

と、マーベル・コミックについてまったく知識がなかったので一生懸命にネットで調べた。うーん、どんどん興味が広がって行く。そのうちマーベルのアメコミもよみそうな勢いだ。

→アラン・テイラー→クリス・ヘムズワース→アメリカ/2013→新宿ミラノ1→★★★

ハンナ・アーレント

監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
出演:バルバラ・スコバ、アクセル・ミルベルク、ジャネット・マクティア、ユリア・イェンチ、ウルリッヒ・ノエテン、ミヒャエル・デーゲン
原題:Hannah Arendt
制作:ドイツ・ルクセンブルク・フランス/2012
URL:http://www.cetera.co.jp/h_arendt/
場所:吉祥寺バウスシアター

伝記映画の一つの手法として、その人の生涯の中でもとりわけて重要な事件に焦点を当てて、そこから人物像を浮かび上がらせる方法があるんだけど、この『ハンナ・アーレント』は、彼女が1961年にイスラエルで行われたナチス戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴し、ザ・ニューヨーカー誌に「彼は思考を停止した凡人にすぎない」とレポートを書いたことから世論から糾弾された事件にフォーカスを当てた映画だった。沈思黙考することもなしに感情をむき出しにしてハンナ・アーレントを攻撃する人々を、思考を停止して仕事をこなしたアドルフ・アイヒマンと重ね合わせて、いかに「思考すること」が大切なことなのかを明らかにして行く手法はとても巧かった。生涯をジェットコースターのように突っ走る伝記映画よりも、この映画のようにしっかりとしたテーマを中心に置いて描く伝記映画のほうが断然に面白い。

一般大衆がいっときの感情によって反射的に批判的な言動をする行為は、情報過多のいまの時代にこそ顕著になって来ていて、最近でもテレビ番組やコマーシャルや、コンビニの弁当にまで! 及んでいる。その点においてもまったくタイムリーな映画だった。

→マルガレーテ・フォン・トロッタ→バルバラ・スコバ→ドイツ・ルクセンブルク・フランス/2012→吉祥寺バウスシアター→★★★★

もらとりあむタマ子

監督:山下敦弘
出演:前田敦子、康すおん、伊東清矢、中村久美、富田靖子、鈴木慶一
制作:『もらとりあむタマ子』製作委員会/2013
URL:http://www.bitters.co.jp/tamako/
場所:新宿武蔵野館

AKB48には興味がないけど、渡辺麻友や柏木由紀や篠田麻里子が上位に来るのは理解できる。大島優子も最初は理解できなかったけど、『闇金ウシジマくん』を見てからは、ひらひら衣装のアイドルよりは素のほうが断然良いじゃん、と理解するようになって来た。でも、前田敦子だけはどうしても理解できない。どこが良いのかさっぱりわからない。どうして彼女がダントツのNo.1だったんだろう。自分とアイドルヲタの人たちとそこまでアイドルを見る視点が違うものなんだろうか。(ポット出版から出ている岡田康宏「アイドルのいる暮らし」を読んでもそんなに違いは感じられないんだけど)

山下敦弘監督の『苦役列車』に続いてスクリーンでの前田敦子を観たわけだけれども、『苦役列車』よりは良かったとおもう。でも、AKB48総選挙1位と云う肩書きが無くてもスクリーンテストに合格するようなビジュアルなのかは、やっぱり、疑問だ。ごめん。映画は良かったです。

→山下敦弘→前田敦子→『もらとりあむタマ子』製作委員会/2013→新宿武蔵野館→★★★☆

かぐや姫の物語

監督:高畑勲
声:朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、古城環、中村七之助、橋爪功、朝丘雪路、仲代達矢
制作:スタジオジブリ/2013
URL:http://kaguyahime-monogatari.jp
場所:109シネマズ木場

高畑勲と云えば世界名作劇場のアニメーション「赤毛のアン」で、「赤毛のアン」と云えば高畑勲が演出をして、近藤喜文がキャラクターデザイン・作画監督をして、宮崎駿が場面設定・画面構成をした世界名作劇場のアニメーションなわけで、それ以外は考えようもないほどに自分の中では固定してしまっている。もちろん高畑勲には『火垂るの墓』があるわけだけれども、それでもやっぱり「赤毛のアン」以外には考えられない。

この『かぐや姫の物語』は、高畑勲の演出作品としては『ホーホケキョとなりの山田くん』以来の14年ぶりの長編アニメーションになるわけだけど、考えてみたら『平成狸合戦ぽんぽこ』も『ホーホケキョとなりの山田くん』も観ていない。やはり「赤毛のアン」を基本とした場合に、この二つの映画にまったく魅力を感じなかったからだろうとおもう。

でも今回は宣伝効果も手伝って、内容的にも観ようと云う気にさせられたので映画館に足を運んでみた。

『火垂るの墓』と同様に素晴らしい映画だった。1コマごとのクオリティの高さはまるでユーリ・ノルシュテインやフレデリック・バックの短編アニメーションを見ているようだった。ただ、公開からだいぶ時間が経ってしまったので、そのあいだにいろんな情報が、知らなくても良いような情報が入って来てしまったので、そのような芸術的な短編アニメーションと同等のクオリティを求める劇場長編アニメーションと云うものの意味を考えられずには観られなかった。

知らなくても良いような情報とは以下のようなblogの記事。

高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』が出来るまで – 1年で365本ひたすら映画を観まくる日記

途中から出典が不明確になってしまうblogではあるのだけれど、以下のインタビューなども合わせて読めば、まあ、現場はめちゃくちゃ大変だったのではないだろうかと想像できる。

【私の時間 シネマ】日常を懸命に生きる大切さを 「かぐや姫の物語」プロデューサー語る

高畑勲は素晴らしい演出家ではあるとおもうんだけど、その気難しさが作品そのものにそのまま出てしまっているような気がして、なぜか「赤毛のアン」以外は愛着を感じることができない。そうだとすると「赤毛のアン」は何だったんだろう? 当時の世界名作劇場と云うアニメーションの制作状況が何か不思議な化学作用を起こさせていたんだろうか。

→高畑勲→(声)朝倉あき→スタジオジブリ/2013→109シネマズ木場→★★★☆

ゼロ・グラビティ

監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー、エド・ハリス(声のみ)、ファルダット・シャーマ、エイミー・ウォレン
原題:Gravity
制作:アメリカ/2013
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/#/home
場所:ユナイテッドシネマとしまえん

ネットの予告編を見た時から、宇宙空間を浮遊する無重力感と視点移動のダイナミックさにいやがうえにも期待が高まっていた『ゼロ・グラビティ』だけど、そんな中途半端な期待感を軽く越えるほどの出来栄えの良さだった。しかも3Dの効果が素晴らしく、破壊された人工衛星の破片が映画を観ているこちらに向かってバチバチとぶつかってくる感覚は、おもわず身体をよけてしまうくらいだった。いや、そんな見せ物としての3D効果だけではなくて、地球に帰ってきたサンドラ・ブロックが、ようやく岸にたどり着いて浜辺に倒れ込むシーンの奥行き感がまた効果抜群だった。宇宙船の中の胎児が、成層圏と云う産道を通って、広々とした空間に生まれ落ちる生命体を感じさせる感動的なシーンだった。

このように全体的には『2001年宇宙の旅』を意識させるシーンの連続だったけど、地球側のオペレーターとしてエド・ハリスが声だけで出演していたのも嬉しかった。エド・ハリスと言えば『ライトスタッフ』で、アメリカ初の地球周回軌道を飛行したジョン・グレンを演じていた。サンドラ・ブロックが地球に再突入するシーンは、このジョン・グレンの再突入シーンとまったくオーヴァーラップしてしまった。

それから、絶体絶命のサンドラ・ブロックが懸命にヒューストンと連絡を取ろうとした時に、おもわず地球の電波を受信してしまうシーンがあった。相手が何語をしゃべっているのかまったくわからないが、名前が「アニンガ」であることを理解し、一緒に聞こえてくる犬の鳴き声や赤ん坊の泣き声に癒されるシーンがあった。この地球側のシークエンスをアルフォンソ・キュアロン監督の息子、ホナス・キュアロンがスピンオフとして撮っていた。これは面白い。

→アルフォンソ・キュアロン→サンドラ・ブロック→アメリカ/2013→ユナイテッドシネマとしまえん→★★★★