監督:姫田忠義
出演:高知県吾川郡池川町椿山の人々
制作:民族文化映像研究所/1977
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場所:まつだい郷土資料館
昨年に姫田忠義さんが亡くなって、おそらくその追悼の意味も込めて、民族文化映像研究所(民映研)に繋がった人たちが「姫田忠義ドキュメンタリー作品連続上映会」を新潟県の松代で開くことになったので、その5回目の上映会に行って来た。
なぜ新潟県の松代かと云うと、その民映研に関係していた人が今は松代の近くの松之山浦田に移り住んでいることもあって、十日町市の市民活動ネットワーク「ひとサポ」が上映会を企画したらしい。東京から松代まで行くのに交通の便はそんなに良くないのだけれど、でも民映研の映画は都会で観るよりもこのようなちょっと辺鄙なところで観たほうが臨場感がいや増すのは間違いないので、重い腰を上げて何とか行ってきた。(車を運転してくれた人が一番大変なんだけれども。ありがとうございます。)
『椿山』は高知県吾川郡池川町椿山で行われていた焼畑の様子を1973年から1977年にかけてカメラに収めたドキュメンタリー映画だった。柴田昌平監督のNHKスペシャル『クニ子おばばと不思議の森』を見て、名前だけは知っていた「焼畑」と云う行為を何となく理解はしていたので、内容としてはその復習のような感覚で見てしまった。
姫田忠義さんの映画を見ていつもおもうのは、姫田さんの語り口調とセットになった映像体験なんだと云うことだ。「いや、実はこれが面白いことなんだけれども」と云った前振りを含んでいるような小さな笑いのある口調と独特の“間”があるナレーションに、人物の所作をしっかりと捉えた映像が合わさってこそが民映研の映画で、姫田忠義さんの映画だと云う気がする。「姫田忠義」の名前を映画監督として掲げることをなぜか嫌っていたのだけれど、映像と語り口調のコラボレーションを行っているのはまぎれもなく監督としての姫田忠義だ。
映画の終了後、『椿山』の撮影を行った澤幡正範さんの講演があって、当時の撮影の厳しさなどを聞くことが出来た。映画の中に台風のシーンが出て来るのだけれども、そのような過酷な状況に追い込まれてこそ地元の人たちとの結びつきが強くなって行ったそうだ。やはりドキュメンタリーを撮ると云う行為は、被写体との間の信頼関係をいかにして構築して行く行為であるか、と云うことを改めておもい知らされた。ドキュメンタリー映画は、撮影状況も含めてすべてがドキュメンタリーなわけだから、撮影にまつわるアウトテイク的な逸話もめちゃくちゃ面白い。ルイス・ブニュエルが当時秘境と云われたスペインとポルトガルの国境付近のラス・ウルデスを撮ったドキュメンタリー映画『糧なき土地』も、その撮影状況を合わせて聞けたらどんなに面白いだろう。
→姫田忠義→高知県吾川郡池川町椿山の人々→民族文化映像研究所/1977→まつだい郷土資料館→★★★☆