キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
出演:クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、セバスチャン・スタン、アンソニー・マッキー、コビー・スマルダーズ、フランク・グリロ、エミリー・ヴァンキャンプ、ヘイリー・アトウェル、ロバート・レッドフォード、サミュエル・L・ジャクソン
原題:Captain America: The Winter Soldier
制作:アメリカ/2014
URL:http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki
場所:シネマスクエアとうきゅう

ここまでマーベル・シネマティック・ユニバースの映画が増えてくると、例えば『アベンジャーズ』と『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』との時系列が気になって来る。単純に公開順を時間の流れと考えて良いのか、それとも微妙に前後しているのか。それが知りたくてネットを徘徊していると次のページを見つけた。『アベンジャーズ』の公開に合わせてアートブック「Avengers: The Art of Marvel’s The Avengers」が発売されて、その中に「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズのタイムラインが載っているらしい。その日本語化をしているサイトだ。

http://gameandmovie.blog.fc2.com/blog-entry-25.html

で、タイムラインがこれ。

http://blog-imgs-55-origin.fc2.com/g/a/m/gameandmovie/Cinematic_Universe_Timeline_japan.gif

『アベンジャーズ』までのタイムラインだけど、おお、時間軸がよくわかる。と云うか、キャプテン・アメリカが北極圏で発見されるのはつい最近じゃないか。キャプテン・アメリカも見つかってから『アベンジャーズ』の闘いがあって、そしてこの『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の「ヒドラ」との闘いがあって、そしておそらく『アベンジャーズ2』の闘いも控えているのだろうし、裏では『マイティ・ソー』の闘いも同時進行しているだろうし、何? この世界? 的なマーベル・シネマティック・ユニバースだ。

マーベル・シネマティック・ユニバースの映画は、それぞれにしっかりとクライマックスを設けているし、それなりにストーリーを完結させているのに、他の映画との繋がりを暗示させるラストシーンを持って来て、次の映画への関心を持続させる方法は巧いともおもえるし、あこぎだとも云えるし、そんなに繋げちゃったらいろいろと破綻しちゃうじゃないの? と云う心配まで、もう、渾沌として来た。この映画のエンドクレジットに出て来た「もの」はどうやら『マイティ・ソー』のロキの杖らしい。うーん、それは何だ! 『アベンジャーズ2』へ続く… か!

→アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ→クリス・エヴァンス→アメリカ/2014→シネマスクエアとうきゅう→★★★☆

アナと雪の女王(2D日本語吹替版)

監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
声:神田沙也加、松たか子、原慎一郎、ピエール瀧、津田英佑、多田野曜平
原題:Frozen
制作:アメリカ/2013
URL:http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki
場所:シネマスクエアとうきゅう

『アナと雪の女王』が動員1265万人を突破して、興収収入は159億を越えたそうだ(2014年5月6日現在)。映画が大ヒットするのはもちろんこの映画に魅力があって、多くの人を感動させられる要素があるからこそヒットするのだろうけど、ここまで化けてしまうとその大衆性に嫌気がさして、とても観に行く気が失せてしまうのがひねくれ者の常だ。一方で、オタク気質のレア物一辺倒も大嫌いで、カルトっぽいものばかり追いかけるのも大嫌いで、柳下毅一郎が云うような「ロメールやリヴェットの話ばかりする映画マニア(含評論家)はどうも信用できない」な奴らも大嫌い。

なわけだから、大ヒットしている映画なんて大衆受けのする要素が最大公約数として集まった味の薄い映画でしかないとおもいながらも『アナと雪の女王』を観に行く。

ところがこれが、期待度のハードルをものすごく下げたことが功を奏したのか、とても面白かった。

まず、吹替えが良かった。特にアナ役の神田沙也加が良かった。神田沙也加なんて、親の七光り以外に何があるのかまったく理解していなかったけど、芸能関係をつかさどるDNAのパートがあって、それがしっかりと遺伝されたのではないかとおもえるほど吹替えが巧かった。

それから、オラフ、と云う名前の雪だるまのキャラクターだ。芝居の中に出てくる道化の役割をしっかりと担っているて、出てくるタイミングも抜群に良い。吹替えのピエール瀧も素晴らしい。もしこのオラフがいなかったら、この映画をここまで面白いとは感じなかったかもしれない。

それから、もちろん松たか子のレリゴー。考え抜かれた日本語の翻訳がCGアニメとリップシンクするのは感動的だ。

とにかく、どんなにくだらざそうな映画だとしても、大衆迎合的な映画に見えたとしても、まずは映画館に足を運んで観てみなければ。そこにはおもった以上のテクニックと考え抜かれた構成と演出があるのかもしれない。

→クリス・バック、ジェニファー・リー→(声)神田沙也加→アメリカ/2013→シネマスクエアとうきゅう→★★★★

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!

監督:エドガー・ライト
出演:サイモン・ペグ、ニック・フロスト、パディ・コンシダイン、マーティン・フリーマン、エディ・マーサン、ロザムンド・パイク、ソフィー・エバンス、サマンサ・ホワイト、ローズ・レイノルズ、デヴィッド・ブラッドレー、ピアース・ブロスナン
原題:The World’s End
制作:イギリス/2013
URL:http://www.worldsend-movie.jp
場所:ユナイテッドシネマ豊洲

「酔っぱらい」と云うキーワードだけで、なぜか『ハングオーバー!』みたいな映画を想像してしまったのだけれど、エドガー・ライトの映画がそんな訳がなかった。どちらかと云うと『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』に似ていて、映画の雰囲気を途中から一転させて、あれよあれよと云う間におもっても見ないような展開へ畳みかけるテクニックはさすがエドガー・ライトだった。ただ、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』のような過去の映画にオマージュを捧げるようなシーンはあまり登場せず、純粋なるSFコメディ映画だった。“Robot”についての言葉遊びを出して来るのなら、もっとその手のロボット映画とか寄生獣系の映画(『ヒドゥン』とか『スピーシーズ』とか)のパロディがあっても良かったのに。

映画の中に12ヶ所のパブが出てくる。このパブすべてでビールを飲む事を中年になってから再び挑戦しようとするのがこの映画の基本的なストーリーラインだった。でも途中からそんな事はどうでも良くなって、とんでもないストーリーに展開して行く。観終わってから、はたと気付く。あの、パブは何だったんだろう? エドガー・ライトとサイモン・ペグの事だからそこにも何か仕掛けがあるんじゃなかろうかと。

その12ヶ所のパブの名前は以下の通り。

1. The First Post
2. The Old Familiar
3. The Famous Cock
4. The Cross Hands
5. The Good Companions
6. The Trusty Servant
7. The Two Headed Dog
8. The Mermaid
9. The Beehive
10. The King’s Head
11. The Hole in the Wall
12. The World’s End

The First Post The Old Familiar The Famous Cock The Cross Hands
The Good Companions The Trusty Servant The Two Headed Dog 8_The_Mermaid
The Beehive The King’s Head The Hole in the Wall The World’s End

そこで、このパブの名前についてネットを徘徊してみると、それについていろいろと言及している人がいるにはいる。

The Meanings Behind the 12 Pubs in The World’s End
http://oracleoffilm.com/2013/10/02/the-meanings-behind-the-12-pubs-in-the-worlds-end/

Special Features – What Do The Pub Names in The World’s End Mean?
http://www.flickeringmyth.com/2013/07/special-features-what-do-pubs-in-world.html

The World’s End Pub Name Meanings (I Think!)
http://radiodan.wordpress.com/2013/08/27/the-worlds-end-pub-name-meanings-i-think/

うーん、どれも何かこじつけのような内容ばかり。エドガー・ライトとサイモン・ペグによる公式見解みたいなものがあればそれを聞いてみたい。

→エドガー・ライト→サイモン・ペグ→イギリス/2013→ユナイテッドシネマ豊洲→★★★☆

LEGO® ムービー(2D、日本語吹替え版)

監督:フィル・ロード&クリストファー・ミラー
出演:ウィル・フェレル、ジャドン・サンド
原題:The Lego Movie
制作:アメリカ、オーストラリア、デンマーク/2014
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/lego/
場所:ユナイテッドシネマ豊洲

LEGOの映画と聞いて、おお見よう! なんてことは絶対になくて、誰からも勧められなければ簡単にスルーしていた映画なのに、またこれがTwitterなどで話題になっていたのでおもわず最終日に駆け込んでしまった。

ファーストシーンからの情報量の多さとギャグのノリ(そして日本語吹替えのノリ)にこのまま最後まで付いて行けるのかととても不安な出だしだったのだけれど、『トイ・ストーリー』などの折り目正しいピクサーのCGアニメーションを徹底的におちょくっているような、そして、「アンチヒーロー」と云う体裁をとことんまでこねくり回して、解体したり、再構成したりして、まるでLEGOブロック自体を遊んでいる(遊んだことないけど)ような映画にしているところがとても面白かった。

この、おもちゃ箱をひっくり返したような、いや、LEGOのBrick Boxをひっくり返したような渾沌の映画をもっと楽しむにはもう一度見ないとダメだ。それから、フィル・ロード&クリストファー・ミラーの他の映画も追いかけないと。

→フィル・ロード&クリストファー・ミラー→ウィル・フェレル→アメリカ、オーストラリア、デンマーク/2014→ユナイテッドシネマ豊洲→★★★☆

それでも夜は明ける

監督:スティーヴ・マックイーン
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ポール・ジアマッティ、ルピタ・ニョンゴ、サラ・ポールソン、ブラッド・ピット
原題:12 Years a Slave
制作:イギリス、アメリカ/2013
URL:http://yo-akeru.gaga.ne.jp
場所:新宿武蔵野館

今までのアカデミー作品賞を獲った映画ならば、その時代のアカデミー会員の勝手な盛り上がりで獲ってしまったようなぬるい映画でも、アカデミー作品賞と云う威光が絶大なる効力を発揮して、日本での興行もそれなりに客が入ったような気がするけど、もうそう云う時代ではないんだなあと、この『それでも夜は明ける』が証明してしまった。

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.153】「それでも夜は明ける」、アカデミー賞効果の現在

それなのに、そういう時勢を映画会社は読み切れずに、未だにアカデミー作品賞と云う冠にあぐらをかいただけの宣伝での興行結果がこれだった。おそらく、これじゃダメだろうとスティーヴ・マックイーン監督を日本に呼び寄せたけど、公開から一ヶ月以上も経ってから呼んだって効果が出るわけがない。

スティーブ・マックイーン監督来日 “同郷”木村佳乃とロンドントーク?

『アナと雪の女王』が大ヒットしているわけだから洋画マーケットが急激に縮小しているとはおもえないけど、でも、今まで通りの宣伝方法では客が入らなくなってしまっているのは確かだとおもう。

『それでも夜は明ける』の映画自体は、誠実な、端正な映画だった。アカデミー作品賞を獲るような映画にそのような真面目なものが多いのはわかっているので、まあ、そんなもんだろうとおもって観ていたら、そのままの通りだった。でも、真面目で誠実なものなんて、たいがいが面白くもなんともない。この映画の「狂気」担当のマイケル・ファスベンダーあたりにもっと異常性を見せて欲しかった。

→スティーヴ・マックイーン→キウェテル・イジョフォー→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★

Life!

監督:ベン・スティラー
出演:ベン・スティラー、クリステン・ウィグ、シャーリー・マクレーン、アダム・スコット、キャスリン・ハーン、パットン・オズワルト、ショーン・ペン
原題:The Secret Life of Walter Mitty
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.foxmovies.jp/life/
場所:T・ジョイ 大泉

ダニー・ケイの『虹を掴む男』をベン・スティラーがリメイクすると聞いた時に、ダニー・ケイのボケた感じをそのままベン・スティラーがなぞって大暴れすることをストレートに期待してしまったが、いざふたを開けたら、何とも大まじめに「あなたの人生はそれで良いんですか?」みたいな素直に語りかけられる映画だった。まあ、映画としては、これはこれで良いとはおもうけど、ベン・スティラーに期待するのは、そこじゃない、と云うおもいは強くてがっかりしてしまった。原作を読んでないので、ジェームズ・サーバーのストーリーがどういうものかわからないけど、ダニー・ケイの『虹を掴む男』のリメイクと宣伝を打っている以上、これじゃダメなんじゃないのかなあ。少なくともダニー・ケイの『虹を掴む男』のリメイクを謳う必要性をまったくない感じられない。

ベン・スティラー監督作品をこれまですべて見て来たわけだけど、これだったら『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』のほうがどれほど愛おしいことか!

→ベン・スティラー→ベン・スティラー→アメリカ/2013→T・ジョイ 大泉→★★☆

ロボコップ

監督:ジョゼ・パジーリャ
出演:ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン、マイケル・キートン、アビー・コーニッシュ、ジャッキー・アール・ヘイリー、サミュエル・L・ジャクソン
原題:RoboCop
制作:アメリカ/2014
URL:http://www.robocop-movie.jp
場所:新宿ミラノ3

ポール・バーホーベン監督の『ロボコップ』を観た時に、そのグロテスクな描写に今までのハリウッド映画には無いテイストを感じて、それが好きか嫌いかには関わらず、いや、どちらかと云うと好きなテイストではなかったものの、その後のポール・バーホーベン監督の映画をずっと追い続けてしまった。ヨーロッパの監督がハリウッドの色に染まって自分を見失う場合が多いのに、自分の色を失わずに変態性を爆走させるポール・バーホーベンに好感を持ったんじゃないかとおもう。

そのポール・バーホーベン版『ロボコップ』が公開されてから27年もの歳月を経てわざわざリメイクするのだから、そして同じように非ハリウッドの監督を持って来て映画化するのだから、また同じような驚きをもたらしてくれるんじゃないかと期待したわけだけど、ジョゼ・パジーリャと云うブラジル人監督にそれほど特異なスタイルを感じられなかった。すっかり、すっきりと普通のSFアクション映画になっていた。どうやらジョゼ・パジーリャ監督のおもい通りには撮らせてもらえなかったらしく、同じブラジル人監督のフェルナンド・メイレレスに語ったところによると「10個アイデアを出したら9個が却下される」状態だったらしい。ポール・バーホーベン版ロボコップの流れを汲む映画を作るのだとしたら、もっと監督に自由に撮らせるべきだった。自由に撮らせるつもりがないなら、わざわざ海外から監督を呼んで来る事もなかったろうに。

→ジョゼ・パジーリャ→ジョエル・キナマン→アメリカ/2014→新宿ミラノ3→★★★

ホビット 竜に奪われた王国(IMAX 3D)

監督:ピーター・ジャクソン
出演:マーティン・フリーマン、イアン・マッケラン、リチャード・アーミティッジ、オーランド・ブルーム、エヴァンジェリン・リリー、ルーク・エヴァンズ、リー・ペイス、スティーヴン・フライ、グレアム・マクタヴィッシュ、ケン・ストット、エイダン・ターナー、ディーン・オゴーマン、マーク・ハドロウ、ジェド・ブロフィー、アダム・ブラウン、ジョン・カレン、ピーター・ハンブルトン、ウィリアム・キルシャー、ジェームズ・ネスビット、ケイト・ブランシェット
原題:The Hobbit:The Desolation of Smaug
制作:アメリカ/2013
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitdesolationofsmaug/
場所:ユナイテッドシネマとしまえん

3部作中の2作目になる『ホビット 竜に奪われた王国』は、ドワーフの王子トーリン・オーケンシールドたちが自分たちの王国エレボールにて邪悪な竜スマウグと対決するパートと、中つ国に忍び寄る邪悪な気配を調査するべくドル・グルドゥアに向かうガンダルフのパートに別れてしまって、それが二つとも3作目に向かうための下地作りでしかないので見終わったあとの中途半端さは否めない。でも、いつも云っていることではあるのだけれども、ピーター・ジャクソンが作り出すトールキンの世界が大好きなので、161分と云う長尺のこの映画がまったく厭きない。3作目の『ホビット ゆきて帰りし物語』が公開されてDVDにでもなったら、『ホビット』シリーズと『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを一気に、1日で見てもいいくらいだ。

スマウグとも、ネクロマンサー(死人占い師)とも、その決着がお預けとなったこの映画の最大のハイライトは、もしかすると、アゾグらオークたちに追われたドワーフ+ビルボ・バギンスたちの樽による川下りだったんじゃないのかなあ。最近のCG映画に飽きているとは云え、このシーンのカメラの視点移動はダイナミックで素晴らしかった。ピーター・ジャクソンの良さは、動的イメージの豊富さにあるんだとおもう。

ケイト・ブランシェットが演じるガラドリエル様のファンとしては、今回の映画ではガンダルフとのテレパシー(?)のイメージ・シーンでしか登場がなかったのは残念だったが、ガンダルフとラダガストとの会話から次作の『ホビット ゆきて帰りし物語』では大活躍が予想出来て、早く、その大団円で感動したい!

→ピーター・ジャクソン→マーティン・フリーマン→アメリカ/2013→ユナイテッドシネマとしまえん→★★★★

ダラス・バイヤーズ・クラブ

監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:マシュー・マコノヒー、ジェニファー・ガーナー、ジャレッド・レト、スティーヴ・ザーン、ダラス・ロバーツ、マイケル・オニール、デニス・オヘア、グリフィン・ダン
原題:Dallas Buyers Club
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.finefilms.co.jp/dallas/
場所:新宿シネマカリテ

映画館での予告編を観たかぎりでは、エイズになってしまったマシュー・マコノヒーが余命30日を宣告されながらも残りの人生を謳歌させて死ぬ、のようなイメージしか受け取れなかったのだけれど、まあ、ある意味、それはそうなんだろうけど、この映画の大切な要素としての「医者の処方するいい加減な薬」と云う部分がまったく抜け落ちていた。病院から渡される薬に何の疑いもなく全幅の信頼を寄せることに常日ごろから疑問を感じているので、マシュー・マコノヒーがその事に対して真っ向から対決する部分は見ていて楽しかった。結局のところ、経済性ばかりを優先させた今の時代では、病院やFDA(アメリカ食品医薬品局)も経済的な利潤を追い求める仕組みの中で動かざるを得なくて、患者の治癒なんてものは二の次になるのはあたりまえなわけで、その薬を疑いもなくほいほい飲んでしまうのは危険このうえないことをこの映画は見せてくれる。

医者が処方する薬のでたらめさに加えて、何年もかかる新薬の認可制度も問題視する。もうすでに死のうとしている人に対して有効とおもわれる薬に対する臨床試験の用意周到さはまったく患者の気持ちを度外視している。不治の病になった時点で大きなリスクを負ってしまっているわけだから、それに対抗するにはリスク以外に何もないのに、リスクを冒すのは危険すぎると云うのはいったい何なんだろう。もうすでに危険なんだ!

自分の医者嫌い、薬嫌いを決定させたのは、もしかするとミロシュ・フォアマンの『カッコーの巣の上で』を見たあたりなのかもしれない、と気付いた。この映画を見てますますそれが増長してしまう。映画は、商業映画もドキュメンタリー映画も、それが真実かどうかは見極めが難しいけれど不正を衝く映画が多いので、嫌いなものがどんどん増えてしまう。

→ジャン=マルク・ヴァレ→マシュー・マコノヒー→アメリカ/2013→新宿シネマカリテ→★★★☆

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ステイシー・キーチ、ボブ・オデンカーク、マリー・ルイーズ・ウィルソン、ミッシー・ドーティ、アンジェラ・マキューアン
原題:Nebraska
制作:アメリカ/2013
URL:http://nebraska-movie.jp
場所:新宿武蔵野館

ネブラスカには娯楽がカレッジ・フットボール観戦しかない、と聞いたことがある。アメリカのちょうどど真ん中に位置するネブラスカ州には何にもなく、人々の楽しみと云えばネブラスカ大学リンカーン校の活躍くらいだと云うのだ。そのネブラスカ大学リンカーン校も最近は精彩がなく、1997年に全米チャンピオンに輝いたっきり、APのTOP25にはランキングされるものの、リンカーンの街が全米の注目を集めることはなくなってしまった。ネブラスカのイメージと云えば、たったそれしかない。リンカーンの街自体のイメージも、リンカーン校のキャンバス内にある8万人収容のメモリアム・スタジアムくらいしかない。

『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』は、100万ドル当たったと信じ込む年老いた父親と、そんなものは詐欺だと云いつつも付き合ってしまう人の良い息子の、その当選金を受け取るべくモンタナ州のビリングスからサウスダゴタ州のラシュモア山を経由してネブラスカ州リンカーンへと向かうロード・ムービーだった。自分にとってあまりイメージのなかったネブラスカ州の街並みを存分に見せてくれる。でもその街並みは、スティーヴン・スピルバーグの『未知との遭遇』のワイオミング州とも、デイヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』のワシントン州とも、フレデリック・ワイズマンの『州議会』のアイダホ州ともあまり変わらないと云うか、よくあるアメリカの田舎の風景だった。

そしてやはり、ネブラスカに住む人たちの週末の楽しみはフットボールだった。ただ、ネブラスカ大学リンカーン校の停滞が象徴するように、親戚の老夫婦とまるまると太った従兄弟たちがアメリカン・フットボール観戦のためにテレビを囲むシーンは、まるで底に溜まった沈殿物のような、もうすでに終わってしまった残滓でしかない人々の集いでしかなかった。そんな中で唯一、活動的に行動しているのが100万ドル当たったと信じ込む老人だけで、その思い込みがきっかけで色めき立って活性化する街の人々や、溝が出来ていた家族が再び結びついて行くシーンには、まやかしであってさえも前向きな行動がもたらす静かな希望が見えて来て、それがアメリカ中西部のだだっ広いスペースと色彩の無いモノクロ映像によって増幅し、不思議な爽快感が全体を支配しているのは面白かった。

ラストの、今まで乗ってきた日本車のスバル・レガシィをフォードのピックアップトラックに買い替えて、それを父親へプレゼントするシーンは、ネブラスカ州出身のアレクサンダー・ペインによる古き良きアメリカの郷愁も込められていて、それがこの映画のテーマの一つでもあった。

→アレクサンダー・ペイン→ブルース・ダーン→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★☆