監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、ガリバー・マクグラス、グロリア・ルーベン、スティーヴン・ヘンダーソン、エリザベス・マーヴェル、デヴィッド・ストラザーン、ブルース・マクギル、ジョセフ・クロス、ジェレミー・ストロング、グレインジャー・ハインズ、リチャード・トポル、デイキン・マシューズ、ウォルト・スミス 、ジェームズ・アイク・アイクリング、ジェームズ・スペイダー、ハル・ホルブルック、トミー・リー・ジョーンズ、リー・ペイス、ーター・マクロビー、マイケル・スタールバーグ、ウォルトン・ゴギンズ、リス・マクギヴァー、デヴィッド・ウォーショフスキー、ジャレッド・ハリス 、ジャッキー・アール・ヘイリー
原題:Lincoln
制作:アメリカ/2012
URL:http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/
場所:新宿ミラノ2
誰でも知っているような歴史上の人物を扱う時に、ありきたりな史実を並べるのでは能がないので、その人物にとってのエポックメイキングな出来事だけをクローズアップして、そこをディープに描き切る方法は偉人伝映画の常套となってきている。スピルバーグはリンカーンを描くにあたって、アメリカ合衆国の奴隷制度を廃止させる憲法修正第13条を下院で通過させようとした1865年だけに特化させたシナリオを用意した。この史実は、日本人にとってはさらりと世界史で習うだけの部分なので、実際にどのような流れで憲法修正第13条が下院で通過したのか理解するのにはとても良い機会ではないかと期待してこの映画を観に行った。
でも、そんな期待は簡単に裏切られてしまった。ホワイトハウスや下院などでの政治家同士のやりとりがメインとなるので台詞が多くなるのはわかるけど、その内容がとても分かりづらい。台詞そのものの内容が分かりづらいことも然る事ながら、そこで描こうとしている対立軸もとても分かりづらかった。奴隷制度廃止を優先させようとするリンカーンと南軍との和平を優先させようとする保守派与党議員との対立、下院採決での票読みにおけるリンカーンと野党議員との対立、そしてそこに包括的に関わってくるリンカーンと奴隷解放を積極的に推し進めるトミー・リー・ジョーンズが演じている共和党議員との関係、この3つの軸をしっかりと掘り下げもせず、メリハリもなく、だらだらと描いているようにしか見えなかった。これではリンカーンの人物像も法案通過の苦悩もしっかりとは浮かび上がってはこない。
憲法修正第13条が下院を通過するかどうかのサスペンスだけに落とし込まなかったのは素晴らしいとはおもうけど、サリー・フィールドが演じているリンカーンの妻やジョゼフ・ゴードン=レヴィットが演じている息子とのやり取りをカットしてまでも、もうちょっとしっかりと政治家達の描写に時間を割かなければ、この時代に命を懸けてまで奴隷制度廃止を推し進める意味がまったく伝わってこなかった。これだったら、票読みのサスペンスにしてくれたほうが良かったのに。
→スティーヴン・スピルバーグ→ダニエル・デイ=ルイス→アメリカ/2012→新宿ミラノ2→★★☆