監督:細田守
声:役所広司、宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず、山路和弘、宮野真守、山口勝平、長塚圭史、麻生久美子、黒木華、諸星すみれ、大野百花、津川雅彦、リリー・フランキー、大泉洋
制作:スタジオ地図/2015
URL:http://www.bakemono-no-ko.jp/index.html
場所:109シネマズ木場
細田守監督の前作『おおかみこどもの雨と雪』にイマイチ乗れなくて、さらにその前作の『サマーウォーズ』の批評をあとからいろいろと読んでいくうちに、もしかすると『サマーウォーズ』を面白く感じたのは作品の持っていた勢いだけで楽しんでしまった結果だけではなかったのかと考えるようになってしまった。『サマーウォーズ』のテレビ放映を確認しても、
「サマーウォーズ」しか見てないが、つらかったのは自覚のない選民思想だ。天才がいて、権力者がいて、世界を左右するカードも持つ一族。その他は愚かしく、または一族を称揚するだけの存在だ。落ちた衛星が温泉まで湧かせるのもやばい。自分らを甘やかし、特別な存在であると勘違いさせる作品だった。
— 深町・猫に知られるなかれ・秋生 (@ash0966) 2015, 7月 20
このような指摘ばかりに目が行ってしまって、能天気に楽しんでいた初見の時とはまったく様相が変わってしまった。
そんな不安な心持ちで今回の『バケモノの子』に臨んだものだから、作品をしっかりと検証するような形で鑑賞する結果となってしまった。
細田守監督の作品はクライマックスがとても楽しい。『サマーウォーズ』の「おねがいしま〜〜〜〜す!」が象徴するように、映画のすべてをその1点に集約させて行くかのような作りになっているので、まるでゲームのボスキャラを倒すような快感は映画観賞後にあとを引いてとても気持ちいい。でも、そこへ至る過程の、クライマックスを否が応でも盛り上げるための設定がちょっと粗くなってしまって、その設定だけをクローズアップさせてしまうと、先の批判のような気持ちの悪さだけが目立ってしまう。『サマーウォーズ』は『時をかける少女』よりも世界が広がったぶん、それが顕著になってしまったんだとおもう。
『おおかみこどもの雨と雪』にイマイチ乗れなかったのは、『時をかける少女』や『サマーウォーズ』ほどのクライマックスを重視する作品ではなかったのに、やっぱり設定の粗さがあったからではないかとおもう。「花」が「おおかみおとこ」との子供をすぐ作っちゃうことも気になるし、産まれた「狼の子」を普通の人間の生活の場に置くのも気になりっぱなしだったし。
それでは今回の『バケモノの子』はどうだったのか。
『サマーウォーズ』と同じようにクライマックスを重視する映画ではあったけれども、展開される世界がコンパクトであったために、今回はそんなに破綻しているようには見えなかった。疑似的父子関係や自分自身との対決を描くための用意も粗いとはおもえなかったし、サブキャラクターとの関係もすんなりと受け入れられるものだった。ただ、やっぱり、細田守が描く女の子のキャラクターは、男の目線から見た都合の良い女と云われてもしかたがないよなあ。白い丸っこい小さい生物のキャラクターもいらないし。
→細田守→(声)役所広司→スタジオ地図/2015→109シネマズ木場→★★★☆