監督:王兵(ワン・ビン)
出演:
原題:苦銭/Bitter Money
制作:フランス、香港/2016
URL:http://www.moviola.jp/nigai-zeni/
場所:シアター・イメージフォーラム
王兵(ワン・ビン)監督のドキュメンタリー映画を観ると、何気ない日常にカメラが向いているだけなのに、なぜかその描写にくぎずけになってしまう。それは『鉄西区』の線路の上をひた走る鉄道であったり、『鳳鳴 中国の記憶』の滔々と過去を語る鳳鳴(フォンミン)の顔であったり。今回の『苦い銭』でも、故郷の雲南省から遠く離れた浙江省湖州市(上海の近くにある市)へと出稼ぎに向かう姉妹がバス、鉄道、車と乗り継いでいるだけの描写なのに、いつの間にか彼女らの視線と同化して、どっぷりと映画の中に引き込まれてしまう。それは王兵(ワン・ビン)監督の被写体へ向ける視線に絶えず真摯な眼差しがあるからなんだろうとおもう。過度のドラマティックさを追求するわけでもなく、おいしい「画」を撮ろうと努力するわけでもなくて、被写体にそっと寄り添うように、そこにただカメラの視線があるだけの撮影方法に知らず知らずのうちに共感しているからなんだろうとおもう。
中国経済の実態が田舎からの出稼ぎ労働者で成り立っていることは、なんとなくそうだろうなあ、とはおもっていたけれど、実際にドキュメンタリーの映像で見せられると強烈だった。朝の7時から夜中の12時までミシンの前で縫製させられているなんて、産業革命の時に炭鉱労働をさせられる年端もいかない子供たちと同じような人権問題のレベルなんじゃないのかなあ。今後、日本で洋服を買ったときに、そこに「Made in China」と書いてあったのなら、絶対にこの映画に出てきた女性たちの顔をおもい出すとおもう。
しかしあれだけ立派な車が走っていたり路駐していたりするのに、道端にゴミが散乱していると云うアンバランスさが今の中国だなあ。
→王兵(ワン・ビン)→→フランス、香港/2016→シアター・イメージフォーラム→★★★★