監督:クリス・マルケル
出演:カトリーヌ・ベルコジャ、大島渚
原題:Level 5
制作:フランス/1996
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場所:アテネ・フランセ文化センター
テリー・ギリアムの『12モンキーズ』(1995)が公開されたとき、クリス・マルケルの『ラ・ジュテ』(1962)が原案であることが話題となって、その時にはじめて映画作家のクリス・マルケルの名前を知った。そのクリス・マルケルの『ラ・ジュテ』は、普通にモノクロ撮影されたフィルムの中の1フレームを抜き出して、それをモノクロ写真のスライドショーのように連続して見せて行く手法を取っていて、その方法自体は特段に珍しいものではないけれども、近未来の廃墟となったパリと云う設定がモノクロのイメージとマッチしていて、少年時代の記憶に取り憑かれた男のノスタルジックなストーリーともぴったりと合っていた。
今回のアテネ・フランセ文化センターで観たクリス・マルケルの『レベル5』は、第二次世界大戦末期の沖縄の悲惨な戦闘が日本人でさえも記憶から抜け落ちてしまっていることを嘆いて、カトリーヌ・ベルコジャが演じているローラが亡き夫の残したコンピュータプログラムのゲーム「レベル5」をクリアして行くと云う設定で、過去の映画やドキュメンタリーフィルムの断片をコラージュのように重ねて見せていくことによって忘れ去られた沖縄の戦争を浮かび上がらせようとしていた。
まるで『ラ・ジュテ』をさらに発展させたような手法の映画だったけれども、じゃあ、沖縄の戦争のことを忘れてしまっている現実をわれわれが悔いるような映画になっていたかと云うと、うーん、その特異な手法ばかりに目が行ってしまって、本題がどこか置き去りになってしまったかのような印象を持ってしまった。新しい方法を追求しようとするクリス・マルケルの姿勢はとっても大好きなんだけれども。
→クリス・マルケル→カトリーヌ・ベルコジャ→フランス/1996→アテネ・フランセ文化センター→★★★