監督:ヤン・コマサ
出演:バルトシュ・ビィエレニア、アレクサンドラ・コニェチュナ、エリーザ・リチェムブル、レゼック・リコタ、ウカシュ・シムラト、トマシュ・ジェンテク、バーバラ・クルザイ、ズジスワフ・ワルディン
原題:Boże Ciało
制作:ポーランド、フランス/2019
URL:http://hark3.com/seinaru-hanzaisha/
場所:新宿武蔵野館
少年院にいる若い男が、少年院に来る司祭の教えに影響を受けて、神学校に入ろうと願うが犯罪者は受け入れられず、その神父の世話で退院後に向かった製材所の仕事をすっぽかして、近くの教会でニセ司教として活動してしまうはなし。
司祭の教えに共感しながらも、身に染み付いてしまった自堕落な行動を正そうともしない主人公の、倫理に沿った行いへの理解と動物的本能から来る行動の共存は、ある特殊な人間の行いと見るのではなくて、まるで自分たち平凡な人間の本質をついているように見えてきて、映画を観ているうちにどんどんと主人公に感情移入できてしまうところが面白かった。
そして、主人公がニセ司教としておさまってしまった教区で起きた過去の交通事故が、人間の正しさと愚かさがとても曖昧なところにあることをさらに際立たせていて、ニセ司教の男が特殊な存在ではないことを目のあたりにさせるエピソードとして中心に据えている構造が巧かった。
酒好きの男が乗った車に責任があったのか、対向車に乗り込んでいた若い男女が6人に責任があったのか、そのどちらであるのか判断がつかないのに、酒好きの男の未亡人を村八分にしてしまう人間の愚かさに割って入るのがニセ司教と云う、誰にでも小さな正義があるし、聖人に見える人間にだって小さな悪が潜んでいることを明確に見せているエピソードだった。
ニセ司教になっていることがばれて、少年院に来ていた司教が事態の収拾に乗り込んで来たときに、その本物の司教のほうがまるでヤクザのようにに見える風貌にさせていたことも、この映画のテーマを如実に物語っていて、その一貫したストーリーテリングに感心してしまった。面白かった。
→ヤン・コマサ→バルトシュ・ビィエレニア→ポーランド、フランス/2019→新宿武蔵野館→★★★★