監督:ジョシュ・トランク
出演:トム・ハーディ、リンダ・カーデリーニ、ジャック・ロウデン、マット・ディロン、ノエル・フィッシャー、カイル・マクラクラン
原題:Capone
制作:アメリカ/2020
URL:https://capone-movie.com
場所:新宿シネマカリテ

アル・カポネと云えば、学校の授業の世界史で習わなくとも、日本人でさえもなんとなく知ることになるアメリカ近代史の中の有名人のひとりで、さらにアメリカ映画をたくさん観ている人ならば、ブライアン・デ・パルマ監督の『アンタッチャブル』でのロバート・デ・ニーロのアル・カポネをおもい浮かべる人もいるかもしれない。

でも、そのアル・カポネの晩年となると、さすがにそこまでの情報は持ってなくて、たしか脱税で捕まった、くらいの知識しかなかった。

ジョシュ・トランク監督の『カポネ』は、そのアル・カポネの晩年を描いていて、フロリダ州パーム・アイランドの豪華な屋敷で余生を送るカポネをトム・ハーディが演じていた。

梅毒を患っていたアル・カポネは、もう完全に心身ともにおかしくなっていて、うんちを漏らすは、幻覚を見るは、人として体をなしていない状態で、そんなぶざまな人間を延々と映画として見せられて、トム・ハーディはすごいな、よくこんな役を引き受けたな、の感想くらいしか持てなかった。アル・カポネの相棒ジョニー・トーリオをマット・ディロンが演じていて、そこがこの映画のポイントのようにもおもえるけれど、二人のシーンがこの映画に与えている影響がよくわからなかった。この相棒ジョニーや、隠し子トニーとの関係も含めて、もっとアル・カポネの内面をえぐり出すような映画であれば良かったのに。

→ジョシュ・トランク→トム・ハーディ→アメリカ/2020→新宿シネマカリテ→★★★

監督:アントワーヌ・ランボー
出演:マリナ・フォイス、オリヴィエ・グルメ、ローラン・リュカ、フィリップ・ウシャン、インディア・ヘア
原題:Une intime conviction
制作:フランス・ベルギー/2018
URL:http://www.cetera.co.jp/kakushin/
場所:新宿武蔵野館

2000年にフランスで実際に起こった未解決事件の「ヴィギエ事件」を題材にした裁判サスペンス。

大学教授は本当に妻を殺したのか? そこが焦点となるこの映画は、容疑者である大学教授の娘に家庭教師をしてもらっているシングルマザーのノラが、娘が全面的に父を信用していることに加えて、マスコミ主導で大学教授を犯人に仕立てあげようとする風潮に対抗する点からも、自分の仕事をほっぽり投げてまでも裁判にのめり込む行動が主となっていた。

このノラの人物像がフィクションであることにちょっとがっかりもして、さらに、夫が犯人なのか? それとも妻の愛人が犯人か? のサスペンス部分が平坦で、終始、どうやら大学教授は冤罪のようだ、のままにストーリーが進んで行くのがちょっと退屈だった。

実話だから、その事実を変えることはもちろん出来ないのだけれど、どうやら大学教授は冤罪のようだ、に進んでいきながらも、実は……、になることを最後まで期待してしまった映画だった。

→アントワーヌ・ランボー→マリナ・フォイス→フランス・ベルギー/2018→新宿武蔵野館→★★★

監督:柴田昌平
出演:熊谷幸治、宮尾亨、横石臥牛、谷川菁山、加藤宏幸、小泉龍人、任星航、ティエリー・ヴォワザン、山花京子、のん(ナレーション)
制作:プロダクション・エイシア、NHKエデュケーショナル、Tencent Penguin Pictures/2021
URL:http://asia-documentary.kir.jp/ceramics/
場所:ポレポレ東中野

何かの「物」の成り立ちを聞くと、必ず、へぇ~っ、になる。新旧を問わず、すべての「物」に対してそうなる。

最近でも、新型コロナウイルス感染症の重症化の目安となる血液中の酸素飽和度を測定できるパルスオキシメータは、日本人の青柳卓雄と言う人が今から50年近くも前に原理を開発したと聞いて、へぇ~っ、になった。その青柳卓雄の開発信念は「患者モニタリングの究極の姿は治療の自動化であり、その理想に近づくためには、無侵襲連続測定の開発が重要である」と云うことだったらしい。ITや電子デバイスが進化した現在なら誰でもおもい付くことだけれども、それを50年近くも前に考えていたとは驚きだった。

青柳卓雄氏とパルスオキシメータ(日本光電ホームページ、https://www.nihonkohden.co.jp/information/aoyagi/

そのような電子機器でさえも、へぇ~っ、になるのに、もっと一般的な、誰もが昔から使っている普遍的な道具の成り立ちを聞くと、へぇ~っ度がますますアップする。

柴田昌平監督の『陶王子 2万年の旅』は、我々のもっとも身近な道具の一つである「器」の成り立ちを追っているドキュメンタリーだった。縄文土器、景徳鎮、マイセンと、それぞれの名前を聞いたことがあっても、それが線で結ぶことは自分の中であまりなかった。時系列に、流れるように「器」の変遷を追って行けば、同時に人間の文明の歴史に直結していることが、へぇ~っ、だった。

映画が終わったあとに、ZOOMによる柴田昌平監督による質疑応答が行われて、監督はとくに、映画の中に差し込まれる陶器の人形劇の評判を気にしていた。たしかに、それ、いるのかな? とは多少はおもうけれど、のんのナレーションといっしょに映画のイメージを決定づけけていて、それはそれで良かったような気もする。

→柴田昌平→のん(ナレーション)→プロダクション・エイシア、NHKエデュケーショナル、Tencent Penguin Pictures/2021→ポレポレ東中野→★★★★