監督:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、リンダ・メイ、シャーリーン・スワンキー、ボブ・ウェルズ
原題:Nomadland
制作:アメリカ/2021
URL:https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html
場所:MOVIXさいたま
いまの経済至上主義の世の中で、そこからあぶれた人たちが絶対的な敗者なのかと云えば、どこに価値観を見出すかで様相がまっく変わってしまうので、世間のお金にまつわる煽りに便乗する気もない人たちにとっては、そんなことでマウンティングしてくる人たちこそ、何かに魂を奪われてしまった敗者に見えるに違いないとおもう。
クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』に出てくるフランシス・マクドーマンドが演じるファーンは、2008年に起きたリーマンショックによる経済危機によって、キャンピングカーによるノマド(放浪暮らし)を余儀なくされてしまう。夫に先立たれた彼女は、まるで季節労働者のようにAmazonの倉庫などでパートとして働きながら生計を立てて、同じようなノマド生活をする先人たちの考えや哲学に耳を傾けながら、自分なりのノマド生活を実践して行く。
そんなファーンを心配した姉が自分の家に招いて、一緒に暮らさないか、と話しを持ち出すシーンがあった。ちょうど姉の夫の友人たちが遊びに来ていて、食事のときの株式や投資ファンドの話題が気に食わないファーンは、その座をしらけさせてしまう。そこで彼女は、多くの人たちが「常識」とするものを「常識」として受け入れることのできない自分がいることに気づいたのだとおもう。
自分が以前に住んでいたネバダ州の企業町エンパイアの雄大な砂漠を見るファーンの姿で映画は締めくくられる。ノマドの人たちがめぐり逢う雄大な自然に価値観を見出すのか、株価やファンドで儲けたお金でモノを買うことに価値観を見出すのか、自分はどっちだろうと考えたときに、前者である、と云いたいところだけれど、後者にも足を踏み込んでしまっているのは間違いないし、宙ぶらりんの状態にいる自分がいつももどかしい。
→クロエ・ジャオ→フランシス・マクドーマンド→アメリカ/2021→MOVIXさいたま→★★★★