監督:大九明子
出演:篠原涼子、中村倫也、関水渚、岩田剛典、中尾明慶、浅利陽介、前野朋哉、泉澤祐希、佐藤晴美、宮尾俊太郎、空気階段、ヒコロヒー、伊勢志摩、六角精児、尾美としのり、池田鉄洋、臼田あさ美、片桐はいり、皆川猿時、向井理、高橋克実
制作:「ウェディング・ハイ」製作委員会/2022
URL:https://movies.shochiku.co.jp/wedding-high-movie/
場所:109シネマズ菖蒲

大九明子監督が綿矢りさの原作を映画化した『勝手にふるえてろ』と『私をくいとめて』を面白いとおもったわりには、彼女の他の監督作品を一本も観たことがなかった。なので、最近やたらと予告編を見させられた『ウェディング・ハイ』へ行ってみることにした。今回はバカリズムのオリジナル脚本。

自分の頭の中で作り上げた理想を誇大妄想化させた女子の日常を描いた『勝手にふるえてろ』や『私をくいとめて』に比べて、今回の『ウェディング・ハイ』でのそれぞれの登場人物の内面葛藤は、綿矢りさが書き連ねるめんどくささ爆発の脳内世界に比べてあまりにもありきたりすぎて、ああ、『勝手にふるえてろ』と『私をくいとめて』を面白く感じたのは、やっぱり原作によるところが大きかったんだなと納得してしまった。

それに『ウェディング・ハイ』のストーリー構成が複雑なわりにはあまり笑えなかった。ウェディングプランナーの奔走を描く前半と、時間を巻き戻しての新婦を奪いに来た元カレがご祝儀泥棒を捕まえる後半とのあいだに、もっと相互作用を設けなければ、すれ違い、伏線の回収、そうだったのか!の納得感などからくる笑いがまったく生まれてなかった。

とくに元カレの下痢のくだりはまったく笑えないよ。

→大九明子→篠原涼子→「ウェディング・ハイ」製作委員会/2022→109シネマズ菖蒲→★★☆

監督:濱口竜介
出演:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉
制作:NEOPA fictive/2021
URL:https://guzen-sozo.incline.life
場所:池袋シネマ・ロサ

濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が日本映画で初めてアカデミー作品賞にノミネートされた。このニュースを聞いた第一印象は、社会的な多様性をやたらと重要視し始めているアメリカ社会の時代の流れに、無理やりはめ込まれてしまっている感じだなあ、だった。とは云っても、とても素晴らしい映画なんだから、そんなことをゴチャゴチャ考えずに手放しで喜ぶべきなんだろうとおもう。

その『ドライブ・マイ・カー』と同じ時期に撮影していた『偶然と想像』は、「魔法(よりもっと不確か)」「扉は開けたままで」「もう一度」の3つの短編作品集。どのストーリーも、偶然から派生する人と人との関わり合いを濱口竜介メソッドの演出法による会話劇で描いていて、ラストの落とし方が3つとも小気味よくて観ていて楽しかった。

とくに3話目の「もう一度」が、ほとんど占部房子と河井青葉による二人芝居なので、演劇的な空間が大好きな自分にとってはとくに面白いストーリーだった。

濱口竜介監督には、ウディ・アレンとかホン・サンスのように、コンパクトな会話劇をコンスタンスに作って欲しい気もするけれど、もし『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー作品賞を撮ったりしたら、どうなるんだろう? それでもウディ・アレンと同じように、小さな作品をコンパクトに作っていってほしいなあ。

→濱口竜介→古川琴音→NEOPA fictive/2021→池袋シネマ・ロサ→★★★★

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、デヴィッド・アルヴァレス、マイク・ファイスト、ジョシュ・アンドレス、コリー・ストール、ブライアン・ダーシー・ジェームズ、リタ・モレノ
原題:West Side Story
制作:アメリカ/2021
URL:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/westsidestory
場所:109シネマズ菖蒲

ロバート・ワイズ監督の1961年の映画『ウエスト・サイド物語』を最初に観たのは、おそらくは映画館ではなくてテレビ放映だったとおもう。そしてすぐさまサントラを買って、使い古された慣用句だけれども、文字通り、擦り切れるほどレコードプレーヤーで聞いた。なかでも好きな曲は“アメリカ”で、今でもその曲を聞くとテンションがあがって、ラテンのノリで踊りたくなってくる。踊れないけど。

その『ウエスト・サイド物語』を、なんとスティーヴン・スピルバーグ監督がリメイクした。彼にとって初めてのミュージカルなんじゃないのかな。『1941』はミュージカルじゃないよね。コメディからシリアスなものまで、どんなものでもこなせる職人監督の、またまた使い古された慣用句だけれども、面目躍如だった。

でも、この映画をどんな顔して観て良いのかよくわからなかった。ストーリーは知っているし、使われる楽曲もすべて昔と同じだった。場面設定も、いろいろと工夫はしていたけれど、とりたてて大きな変更点はなかった。ミュージカルシーンもキレキレで、とても素晴らしいんだけれども、ロバート・ワイズ版の映画をスティーヴン・スピルバーグがバージョンアップする意味をあまり見出すことが出来なかった。それだけロバート・ワイズ版の完成度が高かったんだとおもう。

と云ったりはするものの、スティーヴン・スピルバーグ版も素晴らしい映画だったことに違いはなかった。リタ・モレノを出してくるズルさがあるんだけれどもね。

→スティーヴン・スピルバーグ→ベアンセル・エルゴート→アメリカ/2021→109シネマズ菖蒲→★★★☆