監督:新海誠
声:原菜乃華、松村北斗(SixTONES)、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介、松本白鸚
制作:「すずめの戸締まり」製作委員会/2022
URL:https://suzume-tojimari-movie.jp
場所:109シネマズ木場

新海誠監督の新作は、今まではぼんやりとイメージできる範囲に留めて置いた日本でのリアルな震災被害のことを、そのものずばりストレートに訴えかける内容にしてきた。そしてそこへ、茨城県鹿嶋市の鹿島神宮、千葉県香取市の香取神宮、三重県伊賀市の大村神社、宮城県加美町の鹿島神社に存在していて、地震を鎮めているとされる「要石」を重要なアイテムとして登場させ、日本古来の神話をもじかに絡めてきた。

となると、真っ先におもい浮かべてしまったのは、2008年にフジテレビでドラマ化もされた万城目学の小説「鹿男あをによし」だった。「鹿男あをによし」での「鎮めの儀式」がそのまま『すずめの戸締まり』での「後ろ戸」を閉める行為に見えてしまった。

ただ、『すずめの戸締まり』に「鹿男あをによし」を連想はしても、新海誠の脚本が万城目学の小説ほど日本古来からの神仏的な薀蓄に長けてはいないので、やたらと底の浅いストーリーに見えてしまった。押井守のアニメのような衒学趣味的なものにしろとは云わないまでも、もうちょっと万城目学くらいの日本故事の造詣の深さがあったら良かったのに。

→新海誠→(声)原菜乃華→「すずめの戸締まり」製作委員会/2022→109シネマズ木場→★★★

監督:ライアン・クーグラー
出演:レティーシャ・ライト、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、ウィンストン・デューク、フローレンス・カサンバ、ドミニク・ソーン、ミカエラ・コール、テノッチ・ウエルタ・メヒア、マーティン・フリーマン、ジュリア・ルイス=ドレイファス、アンジェラ・バセット
原題:Black Panther: Wakanda Forever
制作:アメリカ/2022
URL:https://marvel.disney.co.jp/movie/blackpanther-wf
場所:ユナイテッド・シネマ浦和

ティ・チャラ/ブラックパンサー役のチャドウィック・ボーズマンが2020年8月28日に大腸癌で亡くなって、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)での「ブラックパンサー」シリーズの今後がどうなるのかとおもっていたけれど、この『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で解答を出してきた。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』では、ワカンダ王ティチャカの末子で、ティ・チャラ/ブラックパンサーの妹である王女シュリ(レティーシャ・ライト)が次期ブラックパンサーになる過程が描かれていた。そして、ワカンダで取れる貴重な鉱石ヴィブラニウムをめぐってアメリカなどの西側諸国との決定的な亀裂をメインに持ってくるのかとおもったら、ここで新たなヴィランのネイモア(テノッチ・ウエルタ・メヒア)を登場させてきた。ワカンダの新しいブラックパンサーと海の王国タロカン帝国の王ネイモアとの戦いがこの映画の主軸となっていた。

このネイモアの原点は、マーベル・コミックの最古参のヒーローでもあるネイモア・ザ・サブマリナーなんだろうか? そのあたりの出典はマーベル・コミックを読んだこともないのでよくわからない。

で、ワカンダ王国が黒人社会を意味するのだとしたら、タロカン帝国は、この映画での描かれ方からして、ヒスパニック系社会を意味しているようにも見えた。このふたつの社会が対立しながらも最後は同盟を結ぶくだりは、今後のヴィブラニウムを狙う西側諸国との決定的な対決に突き進んでいかざるを得ないようにも見えてしまった。でも、そのような分断を描くのだとしたら、現実社会とまったく同じ不毛さが募るばかりなので、なにか新たな対立軸を持ってくるのかなあ?

ひとつ気になったのは、新たなブラックパンサーであるシュリを演じたレティーシャ・ライトの華の無さ。どうなんだろう? 彼女でブラックパンサーをシリーズ化出来るんだろうか。

→ライアン・クーグラー→レティーシャ・ライト→アメリカ/2022→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★

監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントン、ラミ・マレック、アニャ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナ、アンドレア・ライズボロー、クリス・ロック、マイケル・シャノン、マイク・マイヤーズ、テイラー・スウィフト、ロバート・デ・ニーロ
原題:Amsterdam
制作:アメリカ/2022
URL:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/amsterdaml
場所:109シネマズ菖蒲

1933年のニューヨーク。第1次世界大戦の戦地で知り合って親友となった医師バート(クリスチャン・ベール)と弁護士ハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は殺人事件に巻き込まれて容疑者にされてしまう。二人はその疑いを晴らそうと奔走するうちに、戦後アムステルダムで一時を一緒に過ごしたヴァレリー(マーゴット・ロビー)と再会することをきっかけに、次第に自分たちがドイツで台頭するナチスの影響が波及しつつあるアメリカでの巨大な陰謀に巻き込まれてしまう。

この「巨大な陰謀」とは、おそらくアメリカ人にとってはとても有名な「ビジネス・プロット(Business Plot)」と呼ばれるものらしい。財界の指導者たちがナチスに傾倒し、大衆に人気があったスメドレー・バトラー少将を指導者に推したてクーデターを起こそうと目論んだ陰謀事件。日本人にはまったく馴染みのないアメリカの黒歴史だった。

だからアメリカ人にとっては、周知の事実としてストーリーに組み込まれてもプロットの理解度は早いのだろうけれど、日本人にとっては次から次へと知らない史実が提供されて、様々な人物も矢継ぎ早に登場するので、頭の中が目まぐるしく展開して観ていて疲れ果ててしまった。

まあ、でも、最後まで飽きることなく観ることができたのは、この手の陰謀論のような映画が好きだからなのかもしれない。昨今のSNS上での陰謀論も面白いからねえ。と云ったって陰謀論なんてものは、実際の「ビジネス・プロット」が後の歴史学者から疑問を呈されているように、そしてフィクションを織り交ぜたこの映画のように、「ほぼ実話」くらいの気持ちで付き合うのが一番だとおもう。陰謀なんて、あるし、無い。

→デヴィッド・O・ラッセル→クリスチャン・ベール→アメリカ/2022→109シネマズ菖蒲→★★★☆