監督:森達也
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、柄本明、ピエール瀧、水道橋博士、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、木竜麻生、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、碧木愛莉、豊原功補
制作:「福田村事件」プロジェクト/2023
URL:https://www.fukudamura1923.jp
場所:イオンシネマ春日部
1923年(大正12年)9月1日に起きた関東大震災後の混乱の中、朝鮮人が凶悪犯罪や暴動を行っているとの噂が広まり、民衆・警察・軍によって朝鮮人、またそれと間違われた中国人、日本人などの多くが殺された。その中の、日本人が朝鮮人と間違われて殺された事件の一つが福田村事件だった。
福田村事件とは、1923年(大正12年)9月6日、香川県からの薬の行商団15名が千葉県東葛飾郡福田村(現在の野田市)で地元の福田村および田中村(現柏市)の自警団によって、おまえたちは朝鮮人じゃないか? と疑惑をかけられ、その中の9名が殺害された事件だった。
デマによって一般の人たちが疑心暗鬼になって、そこに集団心理も働いて、普段ならば考えられないおかしな行動を起こす人が多く現れてしまう現象は、関東大震災が起きた1923年でも、福島第一原子力発電所事故が起きた2011年でもまったく同じだった。それはさらに情報が無駄に拡散する現在でもますます起きやすくなっていることをおもうと、人間の心理的な面をアップデートさせるにはどうしたら良いんだろうかと考えてしまう。クローネンバーグが『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』で描いていた苦痛を感じない人類進化以外にあり得ないのかなあ。
フェイクニュースやデマが簡単にSNSで広がる世界になったいま、森達也が監督した『福田村事件』で、デマで突き動かされていまう人間のどうしようもない生態を見るのは意味のあることだとはおもうのだけれど、この映画では同時に人間の欲情の生態をも見せている。それも主に女性の欲求不満から来るとおもわれる生態を。このふたつを同時見せる意味は何だったんだろう。そこがさっぱりわからなかった。
久しぶりに福田村に戻ってくる澤田智一(井浦新)と澤田静子(田中麗奈)夫婦がこの福田村事件の目撃者であるような構成も中途半端だった。だったら、完全なドキュメンタリードラマに徹しても良かったのに。
→森達也→井浦新→「福田村事件」プロジェクト/2023→イオンシネマ春日部→★★★