監督:ニア・ダコスタ
出演:ブリー・ラーソン、テヨナ・パリス、イマン・ヴェラーニ、ザウイ・アシュトン、ゲイリー・ルイス、パク・ソジュン、ゼノビア・シュロフ、モハン・カプール、サーガル・シェイク、サミュエル・L・ジャクソン
原題:The Marvels
制作:アメリカ/2023
URL:https://marvel.disney.co.jp/movie/marvels
場所:109シネマズ菖蒲

「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」もフェーズ5に入って、Disney+と契約していない身にとっては、映画公開だけを追いかけてもどこか中途半端な感じがしてならない。かと云って、Disney+に入って配信のシリーズまで追いかけたら、体がいくつあっても足りない。だから何となくMCU映画だけを追いかけている状態になってしまっている。

今回の『マーベルズ』を観るにあたって、前作の『キャプテン・マーベル』(2019)を見直してみた。『キャプテン・マーベル』がそれなりに楽しめたのは、キャロル・ダンヴァースがキャプテン・マーベルになる過程が描かれていて、そこにインフィニティ・ストーンのひとつ、空間を司る”スペース・ストーン”が関係していることが明らかななって、おお、こんな感じでインフィニティ・ストーンが様々なスーパーヒーローに関わっているんだな、と今までのMCU映画と関連していることが情報として得られた部分だったとおもう。

ところが『マーベルズ』では、今までのMCU映画を観てきただけの知識ではわからない部分、たとえばキャプテン・マーベルに憧れる女子高校生カマラ・カーンがスーパーパワーを手にすることになるのはDisney+で配信している「ミズ・マーベル」を見ていなければわからないし、マリア・ランボーの娘であるモニカ・ランボーが特殊な能力を得ることになるのはDisney+の「ワンダヴィジョン」を見ていなければわからない。チラッと登場する2代目ホークアイになっていくケイト・ビショップについてもDisney+の「ホークアイ」を見ていなければまったく馴染みがない。

てな感じで、Disney+と契約しろ!と云っているような映画になってしまっていた。この流れで行くと「ヤング・アベンジャーズ」が登場しそうな雰囲気がありありだし、さあ、どうするべきか。

→ニア・ダコスタ→ブリー・ラーソン→アメリカ/2023→109シネマズ菖蒲→★★★

監督:山崎貴
出演:神木隆之介、浜辺美波、永谷咲笑、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介
制作:TOHOスタジオ、ROBOT/2023
URL:https://godzilla-movie2023.toho.co.jp
場所:109シネマズ菖蒲

2016年に庵野秀明による『シン・ゴジラ』が作られて、そこで新しい「ゴジラ」の頂点とも云える作品を見せられてしまったので、しばらくは「ゴジラ」映画は作られないんじゃないかと勝手に推測していた。でも考えてみたら庵野版は、どちらかと云えば庵野秀明の色が濃く出たエヴァンゲリオン風「ゴジラ」映画であって、もっと原点に立ち帰った「ゴジラ」映画が作られても不思議ではなかった。

次に「ゴジラ」映画を作ったのは山崎貴だった。山崎貴の映画は『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)しか観たことがなくて、それは西岸良平の漫画の世界を映像化したビジュアルはとても良かったのだけれど、役者の演技があまりにもオーバーアクション気味なところが自分には合わなくて、その後の彼の映画を続けて見ようと云う気にはまったくはならなかった。

ところが「ゴジラ」と云うブランドは、その新しいものを見させようとするパワーが絶大で、山崎貴版でも、ちょっと観てみようかな、とおもわせるには充分だった。

で、観たのだけれど、ああ、やっぱりダメだった。例えば浜辺美波で云えば、彼女の魅力を引き出すのはツンデレ演技が一番であることを庵野の『シン・仮面ライダー』で知ってしまった。だから、この『ゴジラ-1.0』でのオーバーに感情を表現する彼女の演技にはまったく魅力を感じることができなかった。安藤サクラにしても、登場シーンからの感情をむき出しにさせる演出が、その後の神木隆之介との関わりを考えればまったく理解できなかった。

一つだけ良かったのは、明子(永谷咲笑)の演技だった。演技に無駄な感情はまったくいらない。

→山崎貴→神木隆之介→TOHOスタジオ、ROBOT/2023→109シネマズ菖蒲→★★★

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンス、ブレンダン・フレイザー、タントゥー・カーディナル、ルイス・キャンセルミ、ジェイソン・イズベル、カーラ・ジェイド・メイヤーズ、ジャネー・コリンズ、ジョン・リスゴー、マーティン・スコセッシ
原題:Killers of the Flower Moon
制作:アメリカ/2023
URL:https://kotfm-movie.jp
場所:MOVIXさいたま

先日の「被爆者の声をうけつぐ映画祭」で武蔵大学の学生が「いま花岡事件を考える〜映像・朗読による発表〜」と云う発表を行った。その発表を聞くことはできなかったけれど「花岡事件」って何だろうとWikipediaを見てみた。「花岡事件」とは1945年6月30日に中国から秋田県北秋田郡花岡町(現・大館市)へ強制連行され鹿島組 (現鹿島建設) の花岡出張所に収容されていた 986人の中国人労働者が、過酷な労働や虐待による死者の続出に耐えかね、一斉蜂起、逃亡した事件だった。中国人や朝鮮人が日本へ強制連行されたことは知っていたけれど、終戦間際にそんな事件が起きていたとは、まあ、日本としてはあまり大っぴらにしたくもない事件だろうから、まったく知らなかった。

日本の70年ほど前の事件でさえ知らないのに、アメリカのオクラホマ州オーセージ郡で1920年代に起きたオセージ族の連続殺人事件についてはもちろん知るわけがなかった。マーティン・スコセッシの『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』はその連続殺人事件を追った映画だった。

どんな事件でもその時代を反映しているので興味深いものになるのなのだけれど、そこに自分が持っていた勝手な認識を覆す発見があるとさらに面白いものになる。アメリカの先住民については西部劇のイメージが強いので、白人から住んでいた土地を追われて、最終的には一定の居住地に押し込められてしまったと云う歴史認識だった。でも、この映画ではじめて、自身の土地で発見された石油の利権を裁判で勝ち取ったオセージ族を知った。その利権によって白人よりも豪勢な暮らしをしていたインディアンがいたなんて驚きだった。

この映画の原作はデヴィッド・グランによる「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」。丹念に記録を調べて、膨大な証言をもとに書かれた小説らしい。最終的にオセージ族は、石油の利権を略奪しようとする白人によって悲惨な運命を辿ってしまう。これもひとつのアメリカの黒歴史になるんだとおもう。

スコセッシはその長い小説(日本語訳で528ページ)をうまく3時間26分にまとめていた。あまり頭の良くないアーネスト・バークハートを演じるレオナルド・ディカプリオは素晴らしいし、彼と結婚するオセージ族のモーリー・バークハートを演じるリリー・グラッドストーンも素晴らしかった。グラッドストーンは先住民のブラックフィートとニミプーの血を引いているらしい。

これはデヴィッド・グランの「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」を読まないと。

→マーティン・スコセッシ→レオナルド・ディカプリオ→アメリカ/2023→MOVIXさいたま→★★★★