監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイヴ・バウティスタ、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、スエイラ・ヤクーブ、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデム、アニャ・テイラー=ジョイ
原題:Dune: Part Two
制作:アメリカ/2024
URL:https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/
場所:109シネマズ菖蒲

ドゥニ・ヴィルヌーヴの最初の『DUNE/デューン 砂の惑星』を観終えて、あまりにも中途半端な終わり方なので、もうちょっと「(知っているけど)これからどうなるんだろう?」の期待感を持たせてよ、との不満たらたらだった。

でも、このままPART2を観ないで終わらせることもできないので、なんとなく惰性で持って映画を観に行った。そうしたら、これが素晴らしい「DUNE」の映像化だった。これだったらPART1で区切らせることなく、155分+166分=321分の映画として上映するべきだった気がする。まあ、ベルナルド・ベルトルッチの『1900年』(316分)やイングマール・ベルイマンの『ファニーとアレクサンデル』(311分)のような映画とは違って、興行的に成り立たせなければならない映画としては一気上映は無理なんだろうけれど。

この映画のラスト近く、砂虫から取られた命の水を飲んだポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)は、大人になったポールの妹アリア・アトレイデスのイメージを見る。そのアリアを演じているのはアニャ・テイラー=ジョイじゃないのか? とおもってエンドクレジットを確認したのだけれど、アニャの名前を見つけることは出来なかった。どうやらノン・クレジットらしい。アニャ・テイラー=ジョイをたった数十秒のために使ったとはとてもおもえないので、これはPART3があるんじゃないのか、との期待は膨らんでしまう。でもいまのところ、その予定は無いそうだ。作るんなら、ぶっつり2つに分けること無く、4時間でも5時間でも一つの映画にして欲しいなあ。

→ドゥニ・ヴィルヌーヴ→ティモシー・シャラメ→アメリカ/2024→109シネマズ菖蒲→★★★★

監督:ジュスティーヌ・トリエ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ、サミュエル・タイス、ジェニー・ベス、カミーユ・ラザフォード、ソフィ・フィリエール
原題:Anatomie d’une chute
制作:フランス/2023
URL:https://gaga.ne.jp/anatomy/
場所:MOVIXさいたま

昨年のカンヌ映画祭のパルムドールを獲ったジュスティーヌ・トリエ『落下の解剖学』をなんとなくスルーしそうになったのだけれど、今年のアカデミー賞で脚本賞を獲ったことなどから、やっぱり観ようかな、ってことになった。

ストーリーについては予告編からある程度予想はついていて、妻が夫を殺したのか、あるいは事故死だったのか、自殺だったのか、の法廷劇がメインで、目に障害のある息子が証言台に立たなければならない展開がちょっと目を引く映画ではあった。

この手のジャンルの映画は、昔ならば有罪か無罪かの真実が明らかになる過程が面白かった。ビリー・ワイルダーの『情婦』とか。でも、より複雑化した現在では、有罪、無罪の単純な2つに割り切ることのできない犯罪を描く映画が多くなってきた。この映画でも、たとえ妻(ザンドラ・ヒュラー)に無罪の判決がおりたとしても、すでに夫(サミュエル・タイス)を精神的に追い詰めていたのではないか、との見方も取れるし、夫側にしても夫婦喧嘩を密かに録音していたのは、それを何かしらに利用しようとしていたのではないのか、との疑念も湧くし、単純にどちらか一方だけに咎があると割り切ることのできない映画になっていた。

いつのころからか、たぶんベルイマンの『秋のソナタ』あたりからか、家族や夫婦の辛辣な喧嘩のシーンが好きになってしまった。今回の夫婦による言い争いも、息子がそれを裁判で聞かなければならない心情も加わって、なかなか辛い、厳しい、だからこそ良いシーンだった。でも、夫が密かに録音していたものの証拠開示だったのだから、そこは音だけでも良かったような気もする。再現シーンを入れてしまうと、映画を観ている我々が裁判以上の情報を得てしまうので、特に夫の精神的にやつれている表情を見てしまうと自殺説のほうに寄ってしまうので、そこはもうちょっとぼかしても良かったとおもう。

→ジュスティーヌ・トリエ→ザンドラ・ヒュラー→フランス/2023→MOVIXさいたま→★★★☆

監督:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、パティ・ルポーン、ゾーイ・リスター=ジョーンズ、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、カイリー・ロジャース、パーカー・ポージー、ヘイリー・スクワイアーズ、ドゥニ・メノーシェ、マイケル・ガンドルフィーニ、リチャード・カインド
原題:Beau Is Afraid
制作:アメリカ/2023
URL:https://happinet-phantom.com/beau/
場所:MOVIX川口

いままでアリ・アスターの作品を『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』と観てきて、映画を楽しみながらも突然起きるとてつもなく残虐なシーンにあまりにも衝撃を受けたので、アリ・アスターの新作と云うだけで、またそのような衝撃的なシーンがいつ起きるのだろうかとドキドキしながら『ボーはおそれている』を観てみた。

おそるおそる映画を観はじめると、最初から残虐的なシーンがありながらも、自分がアリ・アスターの映画をおそれている以上に主人公のボー(ホアキン・フェニックス)がすべてのものに怯えて、小動物のようにビクビクしているので、そこに安心感が芽生えると云うのか、反動で笑ってしまうような気分にさせられてしまった。なるほど、『ボーはおそれている』をホラー・コメディ映画と分類しているのは、そんなところに所以があったのか。

でも、ボーの自律神経が乱れているような状態を3時間も見せられて、それが母親による支配が原因だとわかったとしても、これはいったい何の映画なのだ? の疑問が最後まで残ってしまった。

映画を観終わったあとにYouTubeの町山智浩の解説を見ると、この映画はアリ・アスターがユダヤ人であることからくる宗教的な映画だと云う。ユダヤ社会では母親が子供に対してすべてをコントロールしようとする傾向があるようで、加えてユダヤ教の厳しい戒律を守ることのできない葛藤なども絡んで、複雑性PTSDのような精神疾患を発症してしまった男の映画だと云うことがわかってきた。そこにユダヤ文学で有名なフィリップ・ロスの小説にもインスパイアされたイメージも加わって、日本人にはわかりにくい、得体のしれない映画に出来上がっていた。

まあ、ユダヤ教でなくとも、たとえ日本人であったとしても、親から支配を受けている子供はいるとおもう。最近のNHK「クローズアップ現代」で特集していた親から教育虐待(子どもの心身が耐えられる限界を超えて親が教育を強制すること)を受けている子供なども、おそらくこのボーのような状態なのかもしれない。でも、そのような精神状態を映画で疑似体験させられもなあ。映画がアメリカでコケた理由もわからなくもない。

町山智浩の解説でも云っていたけれど、この映画の脚本が完成したのはもっと前だろうから、アリ・アスター自身にそんな意識はなかったのだろうけれど、いまこの映画を観るとどうしてもボーの母親にイスラエルを重ねて見てしまう。となると、ますます精神的に滅入る映画で、そこはアリ・アスターの真骨頂だった。

→アリ・アスター→ホアキン・フェニックス→アメリカ/2023→MOVIX川口→★★★☆

監督:マシュー・ヴォーン
出演:ブライス・ダラス・ハワード、ヘンリー・カヴィル、サム・ロックウェル、ブライアン・クランストン、キャサリン・オハラ、デュア・リパ、アリアナ・デボーズ、ジョン・シナ、サミュエル・L・ジャクソン
原題:Argylle
制作:イギリス、アメリカ/2024
URL:https://argylle-movie.jp
場所:109シネマズ菖蒲

マシュー・ヴォーンが作るアクション映画のテンポが好きなので、『キングスマン』と同じノリだろうと新作の『ARGYLLE/アーガイル』も観てみた。

スパイ小説「アーガイル」シリーズの著者である小説家エリーは、小説の内容が現実に進行している陰謀に似すぎているために事件に巻き込まれてしまう、と云う「つかみ」はOKなんだけれど、エリーを演じているブライス・ダラス・ハワードがあまりにもアクションに似合わない体型をしているので、そこばかりが気になってしまった。もちろんそこのギャップを楽しめれば良いのに個人的にはダメでした。

映画の終わり方からして、続編がある匂いがプンプンしているけれど、そこまでそれぞれのキャラクターに魅力があるとはおもえない。エリーの愛猫であるアルフィーの活躍の場ももうちょっと欲しいなあ。

→マシュー・ヴォーン→ブライス・ダラス・ハワード→イギリス、アメリカ/2024→109シネマズ菖蒲→★★★