昨年の5月12日に発売された「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」を1年かけてついにやり終えた。やり終えたと云うのは、ガノンドロフを倒してゼルダとの再会を果たしたと云うことを意味していて、ゲームの達成度では44%くらい。

前作の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」も素晴らしいゲームだったけれど、その設定を踏襲しつつ、さらにマップや機能をバージョンアップさせた「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」は素晴らしさもバージョンアップしていて、終わったときの感動も倍増していた。こんな凄いゲームを多くの人にやってもらいたい! とはおもうのだけど、ガノンドロフを倒すアクション要素は誰もができるものではないので、そこが残念。アクションをめちゃくちゃ簡単にする設定もあれば良いのに。

基本的には攻略サイトを見ずに進めることを是としていて、なにがなんでもネットの情報を排除していた。でも「風の神殿」で詰まってしまった。まったく前に進めずに一ヶ月。ついにネットの情報を見てしまった。なんと! チューリを置き去りにして「風の神殿」へ行ってしまっていた。そりゃないよ。チューリと一緒じゃなければ「風の神殿」へ行けない設定にしてよ。

それからもう一つだけ、ネットの情報を見てしまった。ガノンドロフと対峙するときの必要な準備を。もちろん瘴気対策はわかっていたので「ひだまり草」は十分に用意していた。ただ、どんな武器が強力なのかは、ゲームを進めていくだけではわからない。「獣神の弓5連」がガノンドロフ討伐には必要だと云うことはネットを見なければわからなかった。

と云うことで「獣神の弓5連」が必要なので、アクションが苦手なわたくしも、果敢にも「白髪ライネル」討伐に向かった!(そうだ、「白髪ライネル」がどこにいるのかもネットの情報を参考にしてた)

いやー、「白髪ライネル」は強かった。なんとか「ジャスト回避」を体得したのだけれど、決まるのは20回に1回くらい。もう「ジャスト回避」に頼るのはやめて、ちまちまと、隠れながら弓矢を射ったりして、なんとかゴリ押しで倒すことができました。こうして「獣神の弓5連」を獲得。ネットを見ると「獣神の弓5連」を落とす確率はとても低いらしい。なのに、1回の討伐で獲得してしまった!

かくして、「獣神の弓5連」を得たわたくしは、無事にガノンドロフを倒すことができました。たしかに「獣神の弓5連」は強力で、これが無ければガノンドロフを倒すのにはもっと苦労したことでしょう。

そしてエンディング。ラストの、落ちて行くゼルダの手を握るアクションは、今までのゲームにはない感動のアクションだった。

「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の素晴らしさをなんと表現したら良いんだろう。まさに筆舌に尽くしがたくて、実際にSwutchでゲームをやらなければわからない。それも、ゲームに慣れた人でさえ、メインチャレンジだけでも40~60時間かかるらしい。そんなに時間をかけてやっとその作品の真価がわかるエンターテインメントなんて他にない。

ことあるごとに「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の素晴らしさを吹聴して回りたい!

監督:ジョナサン・グレイザー
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー、ラルフ・ハーフォース、ダニエル・ホルツバーグ、サッシャ・マーズ、フレイア・クロイツカム、イモゲン・コッゲ
原題:The Zone of Interest
制作:アメリカ、イギリス、ポーランド/2023
URL:https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/
場所:MOVIXさいたま

今年のアカデミー賞授賞式で、これは面白そうなだな、と目についた一番の映画がジョナサン・グレイザー監督の『関心領域』だった。アウシュヴィッツ強制収容所の隣に建てた新居で暮らすルドルフ・ヘス所長(クリスティアン・フリーデル)と妻ヘートヴィヒ(ザンドラ・ヒュラー)の住みよい生活を整えて行こうとする夫婦のはなし。

マーティン・エイミスの同名小説を原作としたこの映画の題名「The Zone of Interest」は、日本語に「関心領域」と翻訳しても、とてもスタイリッシュな言葉に見えて、隣のアウシュヴィッツ強制収容所から絶えず聞こえてくるかすかな怒鳴り声や叫び声にまったく反応せずに、自分の家の住環境にしか興味を示さない妻ヘートヴィヒの行動をも端的に表していた。

映画自体も、題名から感じるスタイリッシュさを体現していて、途中、突然画面が赤くなって環境音楽的なものが流れ続けるシーンは、まるでガス室に送り込まれたようなイメージを連想させてとても怖いシーンだった。でもそのスタイリッシュさは、まるで舞台劇のように場所が限定されてこそ引き立つんだけれど、映画の後半に向けてルドルフ・ヘス所長が転勤する場面も描かれてしまって、場所が大きく広がってしまったのは残念だった。

→ジョナサン・グレイザー→クリスティアン・フリーデル→アメリカ、イギリス、ポーランド/2023→MOVIXさいたま→★★★☆

監督:今井友樹
出演:
制作:工房ギャレット/2024
URL:https://studio-garret.com/tsuchinoko/
場所:ポレポレ東中野

今井友樹監督の新作は『おらが村のツチノコ騒動記』。えっ? なぜいま、ツチノコのはなし? との疑問が真っ先にうかぶ。映画を観始めると、今井監督の故郷は岐阜県の東白川村で、全国的にもツチノコの目撃証言が多いところだそうだ。だからツチノコの映画を撮ったのだろうけれど、それでもなお、なぜいま、ツチノコのはなし? の感想は変わらない。

自分にとって「ツチノコ」を知るきっかけとなったのは、少年マガジンに連載された矢口高雄の漫画「バチヘビ」だった。東北地方ではツチノコを「バチヘビ」と云うそうだ。そのころ(1973年ころ)に、第一次? ツチノコブームが起きていた。小学生だったので、少年マガジンの巻頭特集によくあったUFOや雪男やネッシーなどとともに、その存在を疑うことはなくて、自分も発見したくてうずうずしていた。

それから月日が流れて、80年代に第二次ツチノコブームが起きた。今井監督が子供の頃にそのブームに巻き込まれたことが、この映画を作るきっかけだった。でも、ツチノコがいると信じる人たちと距離を取っていた監督が、そこには何かがある、と考えたきっかけは何だったんだろう? おそらくは、情報ばっかりあふれているこの世知辛い世の中への反発だとはおもうので、そこももう少し突っ込んで語って欲しかった。

ツチノコは、ヘビが大きなネズミを飲み込んだものなのか、それとも妖怪のようなものなのか、はたまた集団ヒステリーなのか。個人的には、それがすべて複合された結果ではないかとおもっている。永遠に見つかることは無いのだろうけれど、いるかも知れない、と考えられるゆとりのようなものがこの情報化社会には大切だとはおもう。

→今井友樹→→工房ギャレット/2024→ポレポレ東中野→★★★☆

監督:濱口竜介
出演:大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、菊池葉月、三浦博之、鳥井雄人、山村崇子、長尾卓磨、宮田佳典、田村泰二郎
英題:Evil Does Not Exist
制作:NEOPA、fictive/2023
URL:https://aku.incline.life
場所:川越スカラ座

この映画は、『ドライブ・マイ・カー』で作曲を務めた石橋英子が、彼女のライブパフォーマンスのための映像制作を濱口竜介に依頼したことからはじまっている。そこから二人の試行錯誤がはじまり、濱口は「従来の制作手法でまずはひとつの映画を完成させ、そこから依頼されたライブパフォーマンス用映像を生み出す」ことを決断。こうして石橋のライブ用サイレント映像「GIFT」と共に誕生したのがこの映画だった。

石橋英子の仕事場は長野県の諏訪地域にあって、そこをたびたび訪れた濱口竜介が石橋の地元の友人たちからその土地の自然の知識を得ることによってこの映画の物語が膨らんでいったらしい。それについての濱口の言及は以下の動画から。

『悪は存在しない』の舞台は、山あいにある架空の町「水挽町(みずひきちょう)」と云う小さな集落。この町の開拓三世の寡黙な男・巧と、その一人娘・花の生活を静かに追いかけながら、東京にある芸能事務所がコロナの助成金を得てグランピング場を作る計画を持ち込んでくる物語と展開していく。

これだけを見れば、自然と共存する町の人々と、利益ばかり追いかける都会の人との衝突、そして理解、融和へと、ガス・ヴァン・サントの『プロミスト・ランド』(2012)のような、よくあるストーリー展開へ向かうのではないかと先読みしてしまう。でも、それだけでは終わらせないラストを濱口竜介は用意していた。

ラストシーンの意味は何なんだろう? その正解を濱口竜介も持っていないようなことを先の動画では云っていた。たぶん、人それぞれ、自由に解釈すれば良いんだとおもう。手がかりとしては、グランピング場が作られる予定の場所は鹿の通り道であること。芸能事務所の担当者が鹿の立場になって考えられないこと。鹿は日本においても「神の使い」であったり「森の守り神」であったりすること。あたりかなあ。

映画を3回観てやっとラストの意味がわかりました! と濱口は観客に云われたそうだ。よし、あと2回観よう!

→濱口竜介→大美賀均→NEOPA、fictive/2023→川越スカラ座→★★★★

監督:クリストファー・ノーラン
出演:ジェレミー・セオボルド、アレックス・ハウ、ルーシー・ラッセル、ジョン・ノーラン、ディック・ブラッドセル
原題:Following
制作:イギリス/1999
URL:https://following-2024.com
場所:新宿武蔵野館

クリストファー・ノーランの長編処女作が、おそらくは新作『オッペンハイマー』の公開を機にHDレストア版として公開されたので観に行った。

上映時間69分の中編とも云えるこの映画は、クリストファー・ノーランが好んで使う時間軸の錯綜をすでにこの時点で使用していた。彼が映画を撮り始めた最初から、物語が時間軸通りに進んでいくことを拒否していたことがよくわかる。そのため、次作の『メメント』ではこの習作を経て、すぐさま時系列を逆転させる映画を作ったんじゃないかとおもわれる。そしてその傾向は『TENET テネット』で頂点に達する。

クリストファー・ノーランはどうしてそこまで正方向に進む時間を拒否するんだろう?

その解答を探してネットを彷徨うと、クリストファー・ノーランと糸井重里の対談に目が止まった。

https://www.1101.com/n/s/tenet/2020-09-21.html

これは『TENET テネット』公開時のもので、正方向の時間軸を完全に無視した映画を観て興奮した糸井重里の問いにクリストファー・ノーランが答えるかたちの対談になっていた。そこでクリストファー・ノーランは、

観ている人をちょっと混乱に陥れるというか、
そういう狙いが私の作品にはありますね。
そうすることによって、
いつも新しい何かを提供したい。

観ている人を混乱に陥れる方法は、例えばヒッチコックの『サイコ』のようなミステリーやサスペンス映画にはたくさんある。でもクリストファー・ノーランはストーリーのプロットで観客を混乱に陥れると云うよりは、映画を作るときの慣習と云えば良いのか、ルールと云えば良いのか、誰もが正方向に進んでいると考える時間軸を突然前後させたり、まるっきり逆方向にしたりと、時間をいじることによって混乱に陥れようとしている。どうしてそこに注目するのか、その理由がわかるインタビュー記事は見当たらない。

『オッペンハイマー』での時間軸を前後させる方法は、観ているものを混乱させはするものの、オッペンハイマーの苦悩を表現させる方法としてはとても有効だったような気もする。でも『TENET テネット』で時間をリアルタイムに逆転させたのはやりすぎだったような気もする。

自分としては『インセプション』くらいの混乱が一番心地よかった。いろいろクセがあって一筋縄では行かないクリストファー・ノーランだけれど、次はどんな映画を撮るんだろう? の楽しみがあるのは確かなんだよなあ。

→クリストファー・ノーラン→ジェレミー・セオボルド→イギリス/1999→新宿武蔵野館→★★★☆