岸辺の旅

監督:黒沢清
出演:深津絵里、浅野忠信、小松政夫、村岡希美、奥貫薫、赤堀雅秋、蒼井優、柄本明
制作:「岸辺の旅」製作委員会/2015
URL:http://kishibenotabi.com
場所:丸の内TOEI

「幽霊」の存在を信じるかと聞かれたときには、信じる、と答えるとおもう。しかし、その「幽霊」とは、多くの人が信じているような外的要因から現れるものではなくて、人間の脳が作り出す内的要因のものではないかと考えている。今までよく云われてきたような「幻視」に近いものかもしれないけれど、その脳の生み出す映像を他人と共有することが出来る点で「幻視」とはちょっと違うのかもしれない。他人が作り出す脳内映像を共有することによって、まるで外的要因の物体に見えてしまうものが「幽霊」の正体ではないかと今のところそうおもっている。

この自分なりにおもい描く「幽霊」の正体を絶対視してしまうと、「幽霊」を扱ったホラー映画のほとんどに鼻白んでしまう。黒沢清が「幽霊」を扱う映画も、たとえば『回路』とかも、どうしても興ざめしてしまう。どんなに優れている映画であろうと、「幽霊」はそう云うものではないだろう、が先に立ってしまうとまったく楽しめなくなる。

今回の『岸辺の旅』の「幽霊」は、無理やりに深津絵里の脳内が作り出すイメージと考えてしまえば、今までの黒沢清の映画の中でも一番の納得行く映画だった。もちろん原作ではそのような「幽霊」の扱いになっているとわけではなくて、生者と死者の境界線のことを描いているんだろうけれども。でも「死者の世界」の概念を持ち込まれると途端にストーリーに興味がなくなってしまうので、そこはあえて無視で。

→黒沢清→深津絵里→「岸辺の旅」製作委員会/2015→丸の内TOEI→★★★☆