道中の点検

監督:アレクセイ・ゲルマン
出演:ロラン・ブイコフ、ウラジミール・ザマンスキー、アナトリー・ソロニーツィン、オレグ・ボリーソフ、アンダ・ザイツェ
原題:Проверка на дорогах
制作:ソ連/1971
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場所:新文芸座

今年の5月に観たアレクセイ・ゲルマン監督の遺作『神々のたそがれ』は、わけがわからないながらも映画から発するパワーに圧倒された映画だった。面白いかと聞かれれば、面白い映画とはまったくおもえないし、観ていてとても辛い映画だった。それなのに、すでに半年近くも経っているのに未だにその映画を引きずっているようなところがあって、心の底に得体のしれないドロドロとした澱がズシンと残ったような状態のままだ。

そんなわけだから引き寄せられるように新文芸座にアレクセイ・ゲルマンの旧作を観に行ってしまった。

アレクセイ・ゲルマンの単独としての監督処女作『道中の点検』は、第二次世界大戦中にドイツ軍に協力したソビエト軍の元伍長がパルチザンに投降し、何とかして再び祖国の兵士として認められたいと死闘するストーリーだった。この元伍長の動向に対してカメラがぴったりと寄り添う。カメラはとても近い。近すぎる。『神々のたそがれ』の「ドン・ルマータ」に対するカメラの近さとまったく同じだ。アレクセイ・ゲルマンのスタイルはすでに処女作にして確立されていた。このカメラの近さがまるでドキュメンタリーのようなリアリティを生み出し、『神々のたそがれ』よりもわかりやすく緊張感あふれるストーリーがより一層リアリティを増していた。

タルコフスキーもそうだけど、アレクセイ・ゲルマンの映画から発する不思議なオーラはいったい何から起因しているんだろう。ストーリーが面白いとか、登場人物に感情移入できるとか、そんなありふれた映画体験以外の部分に魅了される映画がロシア映画には多い。

→アレクセイ・ゲルマン→ロラン・ブイコフ→ソ連/1971→新文芸座→★★★☆