監督:圡方宏史
出演:二代目東組二代目清勇会のみなさん
制作:東海テレビ放送/2015
URL:http://www.893-kenpou.com
場所:ポレポレ東中野
まわりから「観ろ!」と勧められていた『ヤクザと憲法』を観た。
大阪の堺市にある二代目東組二代目清勇会の事務所にカメラが入って行くところから映画がはじまる。そこにはどんなにいかつい面々が揃っているんだろうかと興味津々に見るも、若頭がちょっとドスの利いている風貌以外はなんだかフツーのおじさんばかり。組長も60歳代には見えない若いカジュアルな服装のただのおじさんで、両手をポケットに入れたままひょいひょいと事務所に入ってくる。住み込みの若い衆も落ちこぼれの高校生のようなトッポイにいちゃんで、滑舌は悪いは、気が利かないは、使える組員にはまったく見えない。これが今のヤクザなのか! とびっくりするぐらいに拍子抜けしてしまった。『仁義なき戦い』の世界からはすでにほど遠いところまで来てしまってる。
1992年(平成4年)3月1日に施行された「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(通称、暴対法、暴力団対策法、暴力団新法)によって、いわゆる暴力団に対する警察の締めつけが厳しくなった。それは、昔の仁侠映画のような「かたぎには迷惑をかけない」ヤクザの世界から、抗争によって一般人に犠牲者を出したり、覚せい剤の売買に手を出したりするヤクザの世界に変貌した結果だとおもう。でも、この映画の中でも飲食店のおばちゃんが「警察は何もしてくれない、でも彼ら(ヤクザの人びと)は助けてくれる」と云っているような、社会の底辺にいるような人たちを助けたり、義務教育から落ちこぼれた不良を救う受け皿のような役割がまだまだあるんだとおもう。それが暴力団対策法によって弱体化させられて機能しなくなっただけでなく、ヤクザの組員に対しても人権さえ無視したような、ちょっとあまりにも締め付けすぎているきらいがある。
と、この映画は、ヤクザ寄りに描いている。事務所にがさ入れに入った刑事のほうこそが「悪」に見えるような作りになってる。最後の清勇会の組長の「ヤクザをやめて、誰が受け入れてくれる?」って言葉にも、そうだよな、とヤクザに温情的になってしまう。とはいえ、そこまでヤクザに肩入れしてもいいものかどうか。なんとも複雑な映画だった。
→圡方宏史→二代目東組二代目清勇会のみなさん→東海テレビ放送/2015→ポレポレ東中野→★★★★