ディーパンの闘い

監督:ジャック・オーディアール
出演:アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、カラウタヤニ・ビナシタンビ、バンサン・ロティエ
原題:Dheepan
制作:フランス/2015
URL:http://www.dheepan-movie.com
場所:109シネマズ菖蒲

2015年のカンヌ映画祭パルム・ドールを獲った映画。

中東にばかりに目が行って、難民を出している国が世界にやまほどあることを忘れがちだけど、スリランカもその一つだった。1983年にはじまったシンハラ人とタミル人との内戦は、タミル人による反政府組織「タミル・イーラム解放のトラ」が鎮圧されて2009年にいちおうの終戦を迎えたけど、スリランカから逃げ出したタミル人が多くいることは想像にかたくない。『ディーパンの闘い』は、スリランカからフランスに逃亡したタミル人のストーリーだった。

フランスはドイツとともに難民を多く受け入れていて、それはフランスが掲げる「自由」「平等」「博愛」の精神のためだと云われている。でも、受け入れた移民に対してどこまでその精神が適応できているのかは甚だ疑問だ。フランスに来た移民たちは差別的に最下層に押し込められてしまって、大都市郊外の低所得世帯用公営住宅団地で細々と貧しく暮らして行くのが現実なんだとおもう。『ディーパンの闘い』は、この低所得世帯用公営住宅団地(バンリューと云うらしい)が主に舞台の映画で、その描写がリアルで、怖くて、不気味だった。これは現実なんだろうか? 映画用に大胆に脚色されているんだろうか? もし現実だとしたら、フランスの移民政策にはまったくの絶望しか感じることが出来ない。映画で描かれている主人公ディーパンの力強い闘争にも何の希望も見い出すことが出来ず、たとえうまくイギリスに逃げおおせたとしても、イギリスでのさらに厳しい階級社会が待ってるんじゃないかと暗澹たる気持ちしか最後には残らなかった。なんとも辛い映画だった。

→ジャック・オーディアール→アントニーターサン・ジェスターサン→フランス/2015→109シネマズ菖蒲→★★★☆