監督:三隅研次
出演:若山富三郎、富川晶宏、松尾嘉代、小林昭二、大木実、新田昌玄、岸田森、鮎川いづみ、水原麻紀、笠原玲子、池田幸路、正楠衣麻、若山ゆかり、三島ゆり子、江波多寛児、坂口徹
制作:勝プロダクション/1972
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場所:フィルムセンター
クエンティン・タランティーノの『キル・ビル』の殺陣は三隅研次の『子連れ狼 三途の川の乳母車』に影響を受けていると云うことを『キル・ビル』の公開時に聞いて、これは見ないといけないなあとおもいつつも月日が流れてしまって、やっと今回のフィルムセンターの三隅研次特集で観ることが出来た。
1960年代から70年代にかけてのマカロニウエスタンやカンフー映画、そして日本の時代劇やヤクザ映画に代表されるカメラアングルの凝ったオーバーアクションぎみの映画のムーブメントはいったいどこを起源にして起こったのだろう。当時のテレビドラマに対抗してなのか、大きなスクリーンを充分に活用した視覚的な娯楽映画は、なかばヤケクソにも見えるほどの映画に対する愛情がひしひしと感じられて、それを見ている我々も映画的な興奮を純粋に楽むことのできるものばかりだった。
『子連れ狼 三途の川の乳母車』はそのような映画群のひとつだった。拝一刀(おがみ いっとう)の剣や息子の大五郎の乗る乳母車から繰り出される刃によって、柳生一門や公儀からの追っ手の腕は飛び、足は飛び、人間そのものも真っ二つ。そこから飛び散る血しぶきはまるでシャワーのようだ! ここまで徹底的に人が斬られるバリエーションをまるで楽しむように作られてしまっては、こっちもゲラゲラと笑いながら一緒に楽しむ他はない。ロジャー・コーマンは『子連れ狼 三途の川の乳母車』を見て「このアイディアを考えた人間は狂気に近い才能を持つ天才にちがいない!」(ロジャー・コーマン自伝『私はいかにハリウッドで100本の映画を作りしかも10セントも損をしなかったか』より)と云ったという。まさしく、天才とキチガイの紙一重のところが頗る面白い!
このような映画を観るとウキウキしながら劇場をあとに出来る。ああ、クエンティン・タランティーノだけじゃなくて、日本映画にもこのような三隅研次を継承する監督が現れないかなあ。
→三隅研次→若山富三郎→勝プロダクション/1972→フィルムセンター→★★★★