ルーム

監督:レニー・エイブラハムソン
出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョアン・アレン、ウィリアム・H・メイシー、ミーガン・パーク、ショーン・ブリジャース、キャス・アンヴァー、アマンダ・ブルジェル、ジョー・ピングー、トム・マッカムス
原題:Room
制作:カナダ、アイルランド/2015
URL:http://gaga.ne.jp/room/
場所:ユナイテッド・シネマとしまえん

ブリー・ラーソンがこの映画でアカデミー主演女優賞を獲った。主演女優賞が獲れるのは、純粋に演技の技量だけで獲るわけではなくて、アカデミー会員内の人気や駆け引きやロビー活動などが大きく左右するのは分かっているけれど、やっぱり納得がいかない場合が多い。この映画のブリー・ラーソンが主演女優賞に値するかと云えば、うーん、どうなんだろう? 完全に子役のジェイコブ・トレンブレイに食われてしまっている。ブリー・ラーソンの演技はジェイコブ・トレンブレイの演技がなければまったく引き立たないくらいに子供の演技に依存してしまっている。なのに、アカデミー主演女優賞と云うのはやっぱり納得が行かない。演技の技量だけで云うなら『キャロル』のケイト・ブランシェットには遠く及ばない。

この映画は、まずは宣伝されている内容に引きずられて、監禁された親子が捕らわれの身から脱出するところに目が行きがちだ。でも、実際に観てみるとPTSDに苦しみながらも日常を取り戻して行く親子の姿にも多くの時間を割いていた。そしてそのPTSDとは、脱出後に取材を受けたブリー・ラーソンがテレビのインタビュアーから投げ掛けられた2つの質問の内容に大きく集約しているんじゃないかとおもう。

・必死に逃げようとしたのか?
・息子に父親は誰なのかを説明するのか?

この2つの質問を自分の中でどのように折り合いをつけるのかがPTSDを克服する一つの道筋で、そこにブリー・ラーソンの演技の技量が求められるとはおもうのだけれど、あまりにもその描写があっさりとしすぎていた。他に父親役のウィリアム・H・メイシーが娘、そして孫に嫌悪を示してしまう部分など、それに呼応したブリー・ラーソンの繊細な演技も欲しかった。そんな演技で唸ってこそアカデミー主演女優賞だったのに。

子役のジェイコブ・トレンブレイは素晴らしかった。捕らわれの身から脱出しようとして、ピックアップトラックの荷台から空を見上げるときの解放感と云ったら!

→レニー・エイブラハムソン→ブリー・ラーソン→カナダ、アイルランド/2015→ユナイテッド・シネマとしまえん→★★★