レヴェナント: 蘇えりし者

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター、フォレスト・グッドラック、ポール・アンダーソン、ブレンダン・フレッチャー、クリストファー・ジョーナー、メラウ・ナケコ、ブラッド・カーター、ルーカス・ハース
原題:The Revenant
制作:アメリカ/2015
URL:http://www.foxmovies-jp.com/revenant/
場所:109シネマズ菖蒲

むかしから、西部劇に代表されるように、復讐劇は映画の基本ストーリーとも云えて、主人公が窮地に追い込まれて「死」の一歩手前にまで行きながら、そこからギリギリに這い上がって復讐を果たす時ほど、映画を観ている側のカタルシスが得られて面白くなる。『レヴェナント: 蘇えりし者』は、主人公のレオナルド・ディカプリオの生への執着がすさまじく、死線を彷徨いながら徐々に体力を回復して行く過程の描写が凄まじい。その過程を得て、いくつかの幸運に助けられながら、ついに復讐を果たすドラマの振れ幅が大きく、2時間30分もの長さを感じさせない面白い映画だった。

ただ、この復讐劇の発端を考えると、むかしながらの単純な復讐劇ではないことがわかる。

なぜレオナルド・ディカプリオは熊に襲われたのだろう?

熊に襲われなければ、この復讐劇はなかった。つまり、レオナルド・ディカプリオが熊に襲われることこそがこの映画のすべてであって、復讐劇はそれに付随するエピソードでしかなかった。

この映画の舞台となった西部開拓時代のアメリカ北西部のインディアンの間では熊(グリズリー)が神聖視されていたのではないかと容易に想像することができる。(一部の部族では熊は「死と再生」を意味したらしい。http://www.aritearu.com/Influence/Native/NativeBookPhoto/VoiceBear.html )そのインディアンの神に遣わされた熊によってレオナルド・ディカプリオは半殺しの目に遭う。それは、白人でありながらインディアンの妻を迎えて、その息子を設けたことに対する懲罰を意味することのか、その息子を取り上げることによって、人間としてより強くなるべく再生の機会を与えられたためなのか。

生死の境目を彷徨うレオナルド・ディカプリオは、息子を殺したトム・ハーディに対する怨念のみを生きるよすがとして生まれ変わり、ついに仇敵と対面を果たす。しかし、追跡の途中に命を助けられたインディアンの云う「復讐は神にゆだねられる」(どうやらこれは聖書の言葉っぽい、ローマ人への手紙12章19節か)の言葉の通りに、トム・ハーディの死をインディアンたちの手にゆだねる。この最後の描写を持ってしても、映画のすべてが、どこか、インディアンの神聖な儀式のようなイメージを受ける。ただ、トム・ハーディの処罰は熊によって行われるべきことのような気もするけど。

表面的は単純な復讐劇の構図を持った映画だったけど、どちらかと云えば、インディアンの世界の「死と再生」の世界観になぞらえたストーリーだったのかもしれない。

→アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ→レオナルド・ディカプリオ→アメリカ/2015→109シネマズ菖蒲→★★★★