友だちの恋人

監督:エリック・ロメール
出演:エマニュエル・ショーレ、ソフィー・ルノワール、エリック・ヴィラール、フランソワ・エリック・ゲンドロン、アンヌ・ロール・ムーリー
原題:L’Ami de mon Amie
制作:フランス/1987
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場所:角川シネマ有楽町

次のエリック・ロメールの映画は、登場人物が5人の会話劇だった。

どうしてこんなに会話劇の映画が好きになったのかはわからないのだけれど、日本語字幕と云う障害がありながらセリフの量が増えれば増えるほどその映画に対する愛情が正比例でアップしてしまう。たとえばベルイマンの『秋のソナタ』を例に取ると、リブ・ウルマンが母親役のイングリッド・バーグマンに対して数多くの言葉を重ねることによって心の奥深くに閉じこめていた感情が次第に露になって行く過程を見られることが嬉しいし、たとえばポランスキーの『おとなのけんか』では、理性的なジョディ・フォスターが売り言葉に買い言葉を続けることによって徐々にこめかみの血管が浮き立って行く過程が見られるのが好きだし、リチャード・リンクレイターの「ビフォア・シリーズ」では、言葉による相手の心の探り合い、駆け引き、愛情の高まり、失望、怒りがまるで川のように淀みなく流れて行く様子を見ることがとても楽しいし。

エリック・ロメールの『友だちの恋人』は、ビジュアルだけに頼りがちな純情で乙女チックな心の持ち主のエマニュエル・ショーレが、人生経験値の高いソフィー・ルノワールやフランソワ・エリック・ゲンドロンと言葉を交わすことによって、本当の自分の気持ちを次第に確認出来て行く過程が見られるところがとても面白い。おそらくエマニュエル・ショーレの演技経験が少ないので、演技での細かな感情の表現は乏しいのだけれども、それでもダイアローグのパワーでとても面白い映画になっている。このような何気ない男女のシチュエーションを会話だけで成り立たせる映画はとても地味だけれども、ダイアローグによって登場人物の感情の機微を察しながらドラマを見て行くことのできる会話劇ほど面白いものはない。

エリック・ロメールの作風が小津安二郎に似ているということを云う人がいるらしいけど、今までのところそうはおもえなかった。でも、この『友だちの恋人』のエマニュエル・ショーレとエリック・ヴィラールが一緒にウィンドサーフィンをするシーンをポンと挿入するところは、ちょっと『晩春』の原節子と宇津美淳がサイクリングするシーンがポンと挿入されるところをおもい出してしまった。些細な部分のことだけど。

→エリック・ロメール→エマニュエル・ショーレ→フランス/1987→角川シネマ有楽町→★★★★