監督:ペドロ・コスタ
出演:ヴェントゥーラ、ヴィタリナ・ヴァレラ、ティト・フルタド、アントニオ・サントス
原題:Cavalo Dinheiro
制作:ポルトガル/2014
URL:http://www.cinematrix.jp/HorseMoney/
場所:ユーロスペース
昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でこの映画を観たときは、立て続けに何本も映画を見て疲れていた所為か、その時の調子も悪かったのか、まるで映画の内容と同調したかのように生きているのか死んでいるのかわからないほどに朦朧となってしまって、ゾンビのような男が暗い廃虚を彷徨っているイメージしか記憶に残らなかった。
その雪辱戦として観た今回は体調も良く、周りには寝息を立ててぐっすり眠っている人もいる中でしっかりと映画を観ることができた。しかし、その内容を理解するには自分の知識の範囲内では到底無理で、元ポルトガル領の国カーボベルデからリスボンに移住してきた男ヴェントゥーラが、その死に際に自分の生きてきた過去と現在、そして未来をも彷徨い歩く姿を構図豊かなイメージの奔流として見せられただけとしか捉えようがなかった。
おそらく、ヴェントゥーラの妻ズルミラへの手紙のこととか、同じカーボベルデ出身の女ヴィタリナのことなどは記憶の迷路に迷い込んだ幻想として捉えるだけでも許してくれそうだけど、後半の多くを占める顔を黒く塗って鉄かぶとを被った兵隊とのまるでテレパシーのような会話はそれだけで済ませてしまうのはもったいないような気がする。でもそこを理解するには1974年にポルトガルで起きたカーネーション革命のことをもっと知らなければならないし、それがなければ最後に出てくるケースに入ったナイフの意味も理解することはできないような気がする。(途中にカーボベルデの音楽バンド、オス・トゥバロスの曲が流れるが、その曲名は「アルト・クテロ(高貴なナイフ)」だそうだ!)
http://creatorspark.info/musicmovie/26299
ここのインタビューを読むとペドロ・コスタはナイフのことさえ忘れている!
結局、映画なんてそう云うものなんでしょう。映画の解釈なんて、後付けで評論家がするもの。
イメージ豊かなこの映画はそれだけでも見るに値する映画ではあるけれど、ポルトガルの歴史を知らなければこの映画の本質を理解するには至らないので、自分の知識のなさを悔やむ結果に終わるだけだった。
→ペドロ・コスタ→ヴェントゥーラ→ポルトガル/2014→ユーロスペース→★★★☆