イレブン・ミニッツ

監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:リチャード・ドーマー、ボイチェフ・メツファルドフスキ、パウリナ・ハプコ、アンジェイ・ヒラ、ダビド・オグロドニク、アガタ・ブゼク、ピョートル・グロバツキ、アンナ・マリア・ブチェク、ヤン・ノビツキ、ウカシュ・シコラ、イフィ・ウデ、マテウシュ・コシチュキェビチ、グラジナ・ブウェンツカ=コルスカ、ヤヌシュ・ハビョル
原題:11 minut
制作:ポーランド、アイルランド/2015
URL:http://mermaidfilms.co.jp/11minutes/
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町

イエジー・スコリモフスキの新作はたった11分間の群像劇。

さまざまな困難に遭遇する人たちのいくつものエピソードが折り重なって、時間を行きつ戻りつしながら、時にはエピソード同士がすれ違いながら語られる映画の群像劇がとても大好きだ。古くはエドマンド・グールディングの『グランド・ホテル』から、最近ではジョニー・トーの『奪命金』とか。

でも、イエジー・スコリモフスキはもうそんな使い古されたスタイルをそのまま持ってくるようなことはせずに、たった11分間の群像劇に挑戦した。17時から17時11分までに起きた主に次の7つのエピソードを平行させて描いて行く。

・映画監督と女優、そしてその夫
・ホットドック屋の親父とバイク便の息子
・窓拭きの男とポルノビデオを見せる女
・医者と妊婦と死にかけた男
・質屋に押し入る少年
・画家
・犬を連れて歩く女

それぞれのエピソードがたった11分間しかなくて、これらを同時平行で見せるためにさらに切り刻んで、その細かくなった断片をモザイクのように並べて見せて行くのは、まるでパケット化されたデータ通信のようだった。

この映画のエンドクレジット直前のイメージが、並べられた監視映像のモニターがどんどんと小さくなっていって、スクリーン狭しと無数に増えて行くのはまさにデジタル符号化のイメージだった。その右上にあったモニターの一つが黒く何も映っていなくて、そこはまさしく「ドット落ち」に見える。そこで、あっ! と気が付いた。それぞれのエピソードの中の何人かが空を指さして「あれは何だ?」と云う。カメラは何も映さない。でもそれは「ドット落ち」だったんじゃないのか? 転送ミスだったのだ。

見終わってから冷静に考えれば、それぞれのエピソードの時間的な整合性は取れていないとはおもうけれど、そのことはあまり関係ないような気がする。データ通信なわけだから。

→イエジー・スコリモフスキ→リチャード・ドーマー→ポーランド、アイルランド/2015→ヒューマントラストシネマ有楽町→★★★★