監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:アンジュ・ダルジャン、テオフィル・バケ、ディアーヌ・ベニエ、オドレイ・トトゥ、ジャナ・ビトゥネロバ
原題:Microbe et Gasoil
制作:フランス/2015
URL:http://www.transformer.co.jp/m/goodbyesummer/
場所:シネマカリテ
スパイク・ジョーンズの『マルコヴィッチの穴』を観たときに、なんだこりゃ! になった。俳優のジョン・マルコヴィッチを実名で出演させて、その頭の中に入ってしまうと云う奇想天外なストーリーをどうやったら考えつくんだろうと脚本を書いたチャーリー・カウフマンの自由奔放なアイデアに感嘆した。
そこからチャーリー・カウフマンを注目するようになって、ミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』に行き着いた。(その前に『ヒューマン・ネイチュア』があったんだけどなぜか見逃した。)その『エターナル・サンシャイン』もまた奇抜なストーリーで、『マルコヴィッチの穴』と同じように先の読めない面白さがあって、ますますチャーリー・カウフマンのことが気になるようになってしまった。
このようにチャーリー・カウフマン繋がりでミシェル・ゴンドリーを追いかけるようになり、さらに彼の監督作『僕らのミライへ逆回転』をDVDで見たら、ゴンドリー自身の脚本ながらも絶対にチャーリー・カウフマンに影響を受けているだろうとおもわれる、なんだこりゃ! な映画で、2013年に作った『ムード・インディゴ うたかたの日々』もチャーリー・カウフマン的「なんだこりゃ!」度がますますアップしていた。
この『グッバイ、サマー』もストーリーを要約すれば、
クラスメイトからはちょっと浮いている14歳の少年“Microbe(チビ)”が「変わり者」の転校生“Gasoil(ガソリン)”と出会って、夏休みに親に内緒で二人で旅行をするうちにいろいろな体験をして、次第に自分の中にもある普通とは違う部分に自信を持つようになって行く。
と、ごく普通の青春友情ストーリーに見える。でもさすがはチャーリー・カウフマンを継承するミシェル・ゴンドリーだった。これをごく一般的な青春ドラマだけにはしなかった。外見はロブ・ライナーの『スタンド・バイ・ミー』のように見えつつも、ことごとく先の展開が読めなくて、次から次へと現れる登場人物たちにも主人公との関わり方にまったく意味を見い出せない。それでもトリックスターのような役割を持つ“Gasoil(ガソリン)”が作った「動く城」を駆って、奇妙なモンスターたちをなぎ倒して経験値を上げるがごとく、少年たちはひと夏の経験のあとに大人へと成長して行くのだ。
スパイク・ジョーンズ、チャーリー・カウフマン、ミシェル・ゴンドリーの作る世界はどこか共通していて、なぜか日本的な要素が入り込んでくることが多い。今回もコリアンタウンで働く風俗嬢が日本語を話すし、“Microbe(チビ)”はサムライ・カットにはなるし。ちょうどチャーリー・カウフマンが作った人形アニメーション『アノマリサ』で、日本のからくり人形のようなロボットが「桃太郎」を日本語で歌うのを見たばかりだから、また出た日本、とおもってしまった。そのような部分も確認しつつ、これからもこの3人の映画は追いかけて行きたいとおもう。
→ミシェル・ゴンドリー→アンジュ・ダルジャン→フランス/2015→シネマカリテ→★★★☆