チリの闘い 第一部:ブルジョワジーの叛乱

監督:パトリシオ・グスマン
出演:サルバドール・アジェンデ
原題:La batalla de Chile
制作:チリ、フランス、キューバ/1975
URL:http://www.ivc-tokyo.co.jp/chile-tatakai/
場所:ユーロスペース

昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭の上映ラインナップに入っていたのに、全編で4時間23分と云う長尺(それにメイン会場ではないパイプイスの小屋)に恐れおののいて観ることをやめてしまって後悔していたパトリシオ・グスマン監督の『チリの闘い』が、おそらくいろいろな方面からの絶賛の声に後押しされたために、めでたくロードショー公開されたのでじっくりと吟味するためにもまずは第一部だけを観た。

1973年3月の総選挙からはじまる第一部は、アジェンデ大統領率いる左派の人民連合に投票するのか、キリスト教民主党と国民党の右派の野党に投票するのか、カメラが街に出てインタビューするところからはじまる。まずは公平性を期して、左派推しの人たちと右派推しの人たちを平等にインタビューするかたちで映画は進んで行くのだけれども、右派推しの人の自宅にカメラが入って行くと、調度品も立派な裕福な家の人であることがわかって来る。貧しい労働者は左派に、裕福な人たちは右派に投票する構図が見えてくる。

この選挙でアジェンデ大統領率いる人民連合は議席数を伸ばしはしたが、選挙以前にはアジェンデ支持だったキリスト教民主党が反アジェンデへと転向したために議会では議席数で劣勢に立たされて行く。そのために、与党の法案はことごとく否決され、物資が充分に民衆に行き渡らない経済悪化の状況を改善する手だてさえも頓挫するようになってしまう。

で、ここからがアメリカの関与が見え隠れしてくる。当時、第2のキューバが生まれることを危惧していたアメリカは、チリの社会主義政権をなんとかして倒そうとCIAを使っていろんな妨害を仕掛けてくる。キリスト教民主党が反アジェンデになったのも、右派にストライキやデモを行わせたのもアメリカ(CIA)の後押しらしいことが見えてくる。このことが『第一部:ブルジョワジーの叛乱』にはあますことなく記録されている。特に、銅山のストライキを行っているのは右派の一部の人間でしかないことを世間に解らせようと、左派の人たちの必死の姿が白黒のスクリーンいっぱいから溢れ出てくる。『第一部』のテーマは、労働者階級の人たちが必死にアジェンデ政権を擁護しようと走り回る姿だった。

いままでストライキと云えば労働者のものだと思っていたけれど、そのストライキを労働者たちを分裂させるための道具として使うなんてどこまで汚いんだCIA! と憤懣やる方ないおもいでまずは『第一部』を観終えた。

→パトリシオ・グスマン→サルバドール・アジェンデ→チリ、フランス、キューバ/1975→ユーロスペース→★★★★