監督:ロバート・バドロー
出演:イーサン・ホーク、カルメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー、ケダー・ブラウン、ケヴィン・ハンチャード
原題:Born to Be Blue
制作:アメリカ、カナダ、イギリス/2015
URL:http://borntobeblue.jp
場所:角川シネマ新宿
イーサン・ホークが1950年代のジャズ界で活躍したトランペット奏者、チェット・ベイカーを演じた伝記映画。
最近の伝記映画の傾向として、その人の生涯の分岐点ともなるようなコアな部分だけを取り上げて、そこからフラッシュバックなどの手法を用いて過去を振り返るタイプの映画が多くなって来ている。2時間から3時間の枠で、生まれてから亡くなるまでを追いかけなければならないような慌ただしい映画よりも、このようなコンパクトなタイプのほうが伝記映画としてしっくり来るような気がする。
『ブルーに生まれついて』はそのような手法を使っていながら、あえてチェット・ベイカーの絶頂期を切り取るのではなくて、クスリが止められなくなって次第に転落して行く部分をメインとして、人気絶頂の頃のエピソードをフラッシュバックで挟んで行くと云うストーリーにしている。そこにはジャズ・ミュージシャンの特異な世界の映画として特化するのではなくて、誰しもが経験するような「自分の弱さ」についての普遍的なテーマを主題にしようとしてる部分が見えて、最近の時事ネタをも巻き込んでとても身につまされる映画になっているところがとても良かった。
映画のラストで、カメラがスーッと寄って行って、注射針の先に血がついていることがわかった時に、ああ、やっぱり止められないのか、と落胆させられるシーンが辛かった。あのような、マイルス・デイヴィスの前で再起した自分の演奏を披露しなければならないような状況に追い込まれれば、誰だって緊張感に負けてクスリに手を出してしまうよなあ、と擁護してしまう自分がそこにいるのも辛かった。
→ロバート・バドロー→イーサン・ホーク→アメリカ、カナダ、イギリス/2015→角川シネマ新宿→★★★☆