監督:テレンス・マリック
出演:クリスチャン・ベール、ケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマン、ブライアン・デネヒー、アントニオ・バンデラス、ウェス・ベントリー、イザベル・ルーカス、テリーサ・パーマー、フリーダ・ピントー、イモージェン・プーツ
原題:Knight of Cups
制作:アメリカ/2015
URL:http://seihai-kishi.jp
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷
テレンス・マリックの映画は、長編デビュー作の『地獄の逃避行』の時からすでに美しい自然と対比するように登場人物たちを配置した情景描写を多用していて、そこに登場人物によるモノローグを重ねながらストーリーを進めて行くスタイルを取っていた。でも『地獄の逃避行』や『天国の日々』のころは、まだはっきりとしたストーリーの中にそのイメージを断続的に挟み込むだけで、誰もが理解することのできるフツーの起承転結を重んじる劇映画の体をなしていた。それが『天国の日々』から20年のブランクの後に撮った『シン・レッド・ライン』ではそのスタイルが先鋭化していて、とても叙情的で詩的なイメージを先行させる作風に変化しつつあった。それがさらに『ツリー・オブ・ライフ』では鋭角化して、おぼろげながらストーリーラインはあるけどれども、情景イメージと登場人物によるモノローグと云った構成が散発的に連なって行くだけのスタイルに変貌して、まるで映像詩集のような体をなすようになってしまった。それは『トゥ・ザ・ワンダー』でも、今回の『聖杯たちの騎士』でも同様のスタイルを採用している。
最初の『ツリー・オブ・ライフ』の時にはそのスタイルにも新鮮味があって、ストーリーを追いかける必要性がないくらいの心地よさを感じることができたけれども、それが『トゥ・ザ・ワンダー』『聖杯たちの騎士』と繰り返されると、うーん、どうしても映像美を強調させたイメージばかりなのが鼻につくようになってしまって、ストーリーの補助がないままに美しい映像だけを見せられ続ける退屈さが先行してしまうんじゃないかともおもう。ヒッチコックの云う「観ている人たちのエモーション(感情)」を持続させることに失敗しているんじゃないかと考えざるを得なくなってしまう。
私のようなテレンス・マリックの映画が好きなものにとってはこのようなスタイルでも「エモーション」を持続することには何の問題もないけど、一般の観客にとってはどうなんだろう? できることならば『天国の日々』あたりの原点に立ち返ってくれると嬉しいんだけれども。
→テレンス・マリック→クリスチャン・ベール→アメリカ/2015→ヒューマントラストシネマ渋谷→★★★☆