ホーリー・モーターズ

監督:レオス・カラックス
出演:ドニ・ラヴァン、エディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、エリーズ・ロモー、レダ・ウムズンヌ、ジェフリー・キャリー、アナベル・デクスター・ジョーンズ、ナースチャ・ゴルベワ・カラックス、レオス・カラックス、ミシェル・ピコリ
原題:Holy Motors
制作:ドイツ、フランス/2012
URL:http://www.holymotors.jp/
場所:シネマカリテ

レオス・カラックスの映画は、最初に観た『汚れた血』で衝撃を受けて、期待して観に行った『ポンヌフの恋人』の酷さにがっかりして、さらに次作の『ポーラX』も今一つピンとこなかったので、この『ホーリー・モーターズ』もあまり期待しないで観に行った。

映画の冒頭からして、なんだこりゃ、の雰囲気が漂っていて、さらに意味不明のシーンが続いたので、またまた期待外れの予感が全体を支配していたのだけれど、伊福部昭の『ゴジラ』の曲が流れたあたりから、あっ! この映画はカラックスの“映画愛”を描いているんだ! と気付いて、そうしたらドニ・ラヴァンに下されるすべての「アポ」が様々なジャンルの映画を象徴しているように見えてきて、インターミッションもあるし、ミュージカルも出て来て、最後は何だ、『カーズ』か! とすべてが楽しくなってしまった。

途中、ドニ・ラヴァンがマネージャー兼運転手のエディット・スコブに「森でのアポはないのか?」と尋ねるシーンがあった。「森」とは何なんだろう? 前作の『ポーラX』を云っているような気もするけど、何となく「森=癒し」のことを云っているようにも見える。「森=ファンタジー」なのか。いや、この映画の冒頭からして「森=リンチ」で、もっと深層心理のことを云ってるのかもしれない。勝手な深読みからこのセリフにこそ、レオス・カラックスが13年間も長編映画を撮れなかった意味が隠されているように感じてしまった。カラックスはずっと「森」のアポを待ち続けているんだな、と。もしかすると次作は間隔が空かずにすぐに撮って、もしかしたら「森」の映画なんじゃないかと期待してしまう。

→レオス・カラックス→ドニ・ラヴァン→ドイツ、フランス/2012→シネマカリテ→★★★☆