監督:キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、チュ・ジフン、クァク・ドウォン、チョン・マンシク、キム・ヘゴン、キム・ジョンス、ユン・ジヘ、ユン・ジェムン、キム・ウォネ
原題:아수라
制作:韓国/2016
URL:http://asura-themovie.jp
場所:新宿武蔵野館

ナ・ホンジン監督の傍若無人な映画に呆気に取られていたら、韓国映画はそれだけにとどまらなかった。キム・ソンスの『アシュラ』もどこかタランティーノを感じつつも、そこまでスタイリッシュに落とし込まない武骨なバイオレンスのやりたい放題に呆気に取られてしまった。それに、映画の冒頭にかぶさる「人間は嫌いだ」のナレーションが示すように、北野武の『アウトレイジ』よろしく登場人物の全員が悪人であるうえに、日本人よりも顕著に見られるストレートな感情の爆発がさらに嫌悪感を増幅させて、そのたたみかけるような人間の嫌らしさがかえって痛快でもあった。

刑事を辞めて悪徳政治家の下で働こうとしているチョン・ウソンが、不治の病で死のうとしている妻からも「悪人」と云われながらも、どこか「善人」が見え隠れする気弱さがまるで自分とオーバーラップしてしまって身につまされてしまう。おそらく、そんな中途半端な奴が極悪人よりも一番たちが悪い。

若い男女のラブストーリーばかりの日本映画から見ると、このようなアグレッシブな映画が出てくる韓国映画界には嫉妬を感じるけど、だからと云って現在の日本映画が韓国映画よりも劣ると云う主張にはくみすることができない。日本映画界のほうが何だかんだと云ってもまだまだバラエティに富んでいるとはおもうけど。

→キム・ソンス→ファン・ジョンミン→韓国/2016→新宿武蔵野館→★★★☆