セデック・バレ 第一部太陽旗

監督:ウェイ・ダーション(魏徳聖)
出演:リン・チンタイ(林慶台)、マー・ジーシアン(馬志翔)、ダーチン(大慶)、シュー・イーファン(徐詣帆)、スー・ダー(蘇達)、ルオ・メイリン(羅美玲)、ランディ・ウェン(温嵐)、ティエン・ジュン(田駿)、リン・ユアンジエ(林源傑)、安藤政信、河原さぶ、木村祐一、春田純一、ビビアン・スー(徐若瑄)、田中千絵
原題:賽德克·巴萊
制作:台湾/2011
URL:http://www.u-picc.com/seediqbale/
場所:吉祥寺バウスシアター

日本のメディアから流れてくる情報だけを鵜呑みにしていると、台湾の人たちは第二次世界大戦時の日本軍の所業に対して寛大さを示していて、中国や韓国の人たちに比べても日本に対して好意を持っているようなイメージを持たされる事が屡々だけど、ほんとうにそんな簡単なことなんだろうかといつもおもってしまう。だいたい私たちは台湾について何も知らないし、世界史でも台湾の歴史はほとんど習わない。だから台湾を中国の延長線上のようなイメージとしてしか見ることができない。もうちょっとホウ・シャオシェン監督の『悲情城市』に描かれているような台湾の歴史くらいをしっかりと知った上で、台湾人は統治した日本に感謝している、なんて勝手な認識に浮かれるべきなんだろうとおもいながら、そしてそんな浮かれ気分にガツンを鉄槌を加えるべく『セデック・バレ』を観に行った。

この『セデック・バレ』は、台湾の山間部に住んでいるセデック族によって1930年に起こされた抗日暴動事件「霧社事件」を描いている。日清戦争によって日本の領土となった台湾では、日本政府によってインフラや商業施設の整備、教育の向上が図られる一方で、統治者による原住民への差別、暴力が甚だしく、その不満が爆発した結果が「霧社事件」だった。おそらくこの当時の日本は、日清、日露戦争での勝利が続き、どこかおかしな勘違いをしてしまって、アジアの盟主として他の国々を自分たちよりも低いレベルに見て、その国民に対しては近代化の遅れている野蛮人として蔑む風潮が出来上がりつつあったのではないかとおもう。確かにセデック族の風習として、敵の部族の首を狩ることによって一人前の成人となる儀式があったりと、絶えず「狩り場」をめぐって部族間の闘争に明け暮れているので、見た目には文化程度の低い民族に見えてしまう。ただ、そんな彼らの文化をしっかりと理解しないで、鉄拳制裁で無理矢理従わせる当時の日本人統治者の行動は、現在の日本の「体罰」問題にも見える綿々とした文化なんじゃないかおもって、映画を見ていてとても恥ずかしくなってしまう。他にもセデック族の女性を強制的に酒の席に同席させて性的な嫌がらせを行うなど、どれをとって見ても今現在の新聞紙上を賑わしている諸問題に通じている。

日本人の首がどんどんと切り飛ばされるシーンはとても不快だけれども、事実に則った「荒唐無稽ではない」抗日映画を見ることは、現在の日本のダメな点を理解する上でもとても重要ではないかとおもうので、来週には「第二部 虹の橋」を観に行って、さらに針のむしろに坐ろうとおもう。

→ウェイ・ダーション(魏徳聖)→リン・チンタイ(林慶台)→台湾/2011→吉祥寺バウスシアター→★★★☆