監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:アデル・エネル、オリビエ・ボノー、ジェレミー・レニエ、オリビエ・グルメ、ファブリツィオ・ロンジョーネ
原題:La fille inconnue
制作:ベルギー、フランス/2016
URL:http://www.bitters.co.jp/pm8/
場所:新宿武蔵野館
主人公の生活範囲内で繰り広げられるだけのコンパクトなストーリーをコンスタントに撮る監督の映画が大好きだ。例えばウディ・アレンとかケン・ローチとか。最近ここに、ベルギーのダルデンヌ兄弟が加わっていることに気が付いた。いや、『サンドラの週末』を観るまでは、日本で公開される映画を追いかけてはいたけれども、とりたてて、そんなに愛着を持った監督では無かったような気がする。でも、マリオン・コティヤールの演技にやられてしまった。彼女の演技を引き出したダルデンヌ兄弟を俄然注目するようになってしまった。
『午後8時の訪問者』も素晴らしかった。若い診療医を演じるアデル・エネルの周りで引き起こるちょっとした事件をサスペンス仕立てで描きながらも、そこから現在のベルギーが抱える社会問題が浮き彫りになって来る描写力はさすがだった。
ただ、とても細かいことだけど、一つだけ注目するポイントがあった。
アデル・エネルがワッフルを食べるシーンが出て来たのだ。
ベルギーと云えば、ワッフルだ。
そのベルギー・ワッフルにはブリュッセル・ワッフルとリエージュ・ワッフルの2種類あって、日本で良く見られる丸形(楕円)のものはリエージュ・ワッフルだそうだ。
あれっ? いつもベルギーのリエージュ(の近郊のセランという街)を舞台にしているダルデンヌ兄弟の映画にリエージュ・ワッフルが出て来たことがあっただろうか?
無かった気がする。
と云うようなことをTweetしたら、親切にも『午後8時の訪問者』の公式Twitterの人が答えてくれた。
@agtc ずーっとリエージュ近郊のセランという街で撮影しています。ワッフルの登場で言うと『ロゼッタ』がワッフル屋の仕事巡る物語なのですよー。
— 午後8時の訪問者 (@Dardenne_cinema) 2017年5月6日
ああ、そうだった。確かに『ロゼッタ』で主人公がワッフル屋で働くシーンがあった。でも、問題にしていたのは、ワッフルを食べるシーンがあったかなあ、だった。
ワッフルを食べると云う行為は、やはり、どこか、生活に余裕があるように見える。
たいした余裕では無いのかもしれないけれど、今までのダルデンヌ兄弟の映画には、そんなちょっとした余裕もない人物ばかりが主人公だった。だから、ワッフルを食べるシーンなんて無かったんじゃないのかなあ、とおもったまでだった。
『午後8時の訪問者』の主人公は、保険診察ばかりの開業医と云えども医者と云う高収入が得られる職業に就いている人物だったところが今までのダルデンヌ兄弟の映画とは違うところだった。だからワッフルを食べるシーンが出て来たのかなあ、なんて、ものすごく細かいところに目が向いてしまった。
ダルデンヌ兄弟をしっかりと注目しはじめたのは『サンドラの週末』からなので、もしかするとワッフルを食べるシーンを忘れていたりする可能性もある。もう一度、すべてを見返したいなあ。
→ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ→アデル・エネル→ベルギー、フランス/2016→新宿武蔵野館→★★★★