監督:アスガル・ファルハーディー
出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリシュスティ、ババク・カリミ
原題:فروشنده
制作:イラン、フランス/2016
URL:http://www.thesalesman.jp
場所:ル・シネマ

今年のアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされていながら、トランプ大統領がイスラム圏特定7か国の国民を90日間入国禁止にしたことに抗議し、アスガル・ファルハーディー監督と主演女優のタラネ・アリドゥスティが授賞式をボイコットしたことでも話題となった『セールスマン』をル・シネマの最終日にやっと滑り込んで観てみた。

アスガル・ファルハーディー監督の2011年の作品『別離』はとても面白い映画だった。イランの社会状況を反映させたサスペンス調のこの映画は、男と女の関係や富めるものと貧しいものとの関係など、イスラム社会であっても日本と共通するテーマを扱いながらも、まだまだ高圧的な男性が女性を支配する状況はムスリム特有の問題であって、そこから生まれるDVをも感じさせる暴力的な緊迫感がサスペンスを盛り上げる要素として有効で、予測もつかない展開にぐいぐいと引き込まれる映画だった。

今回の『セールスマン』は、構造としては『別離』にとても良く似ていたけれど、アーサー・ミラーの「セールスマンの死」を上演する劇団員の夫婦と云う設定がとても効いていて、二人の関係がまるで「セールスマンの死」の中の年老いた63歳のセールスマン、ウィリィ・ローマンと家族との関係にダブるところが「映画内劇」とか「映画内映画」が大好きな自分としては堪らなかった。イランであろうとアメリカだろうと、宗教は違えども人間関係から起きる問題は普遍的であることから、二国間に横たわる政治的な緊張をも乗り越えてテヘランでアメリカの戯曲を上演しようと努力する人びとを見るのも楽しかった。

でもやっぱり、『別離』ほどではなかったけど、夫が妻に対する高圧的な態度は不快だなあ。イスラム圏の映画を見ると、よくある情景なんだけど。

https://wan.or.jp/article/show/3470

このブログに人が云うには「もっともっと頭が古くさくてさらに高圧的な態度にある男性はイランにはまだまだごまんといます」なんだそうだ。

→アスガル・ファルハーディー→シャハブ・ホセイニ→イラン、フランス/2016→ル・シネマ→★★★★