監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、ロビン・ライト、マッケンジー・デイヴィス、カーラ・ジュリ、レニー・ジェームズ、デイヴ・バウティスタ、ジャレッド・レト
原題:Blade Runner 2049
制作:アメリカ/2017
URL:http://www.bladerunner2049.jp
場所:109シネマズ木場

1982年に公開されたリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』の続編が35年目にしてついにやって来た。それも自分にとっての最近のイチオシ監督であるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の手による映画化なので否応にも期待感が膨らんでしまった。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督にとってカルト映画とも云える前作の続編を作り上げることには大変なプレッシャーをも感じていたんじゃないかとおもう。でも、ドゥニ・ヴィルヌーヴの才能はそれを補って余りあるものだった。うまく自分の土俵に引っ張り込んで、クローネンバーグとかエゴヤンとかとも共通するカナダ人監督特有の温かみのある人間を排除するような寒々しい世界を作り上げていた。特に、ロサンジェルス市内の酸性雨の降る湿った風景(前作を引き継いだイメージ)やウォレス社内の人工的な暗い風景とロサンジェルス郊外の赤っちゃけた風景との対比が素晴らしかった。前作の『ブレードランナー』にオマージュを捧げているような共通した部分もありながら、それでいて独自の世界を作り上げているアートディレクションにはとても感心した。

で、前作から引き継いでいる最大の謎が「デッカードはレプリカントなのか?」なんだけど、結局、今回も明快な解答はなかった。ただ、今回の映画では、主人公であるライアン・ゴズリング演じる「K」がレプリカントであることを明確にしていて、クライマックスでの「K」と「ラヴ」との格闘シーン(そのパンチの繰り出し方や不屈な耐久性)に、まるで前作の「デッカード」と「ロイ・バッティ」との格闘シーンと、おそらく、意識的にオーヴァーラップさせていることから判断するには、やはりデッカードはレプリカントだったんじゃないかとおもわざるを得ない作りにはなっている。さらに、「デッカード」の「ユニコーンの記憶」と「K」の「木馬の記憶」を対比させていることからも二人に共通項を見出すことができる。

となると、なぜ「デッカード」と「レイチェル」の二人のレプリカントに寿命の縛りがなかったのか、そしてレプリカント同士の生殖が可能なのか、と云う疑問が生まれてしまう。ここが今回の映画の最大のポイントで、そこに人間の世界の宗教が取り扱って来た「奇跡」を持ち込んでいることから、この二人がレプリカントたちの救世主的な祖となって、その娘である「アナ・ステリン」がそれを受け継ぐ教祖となって行くんじゃないかと想像してしまう。レプリカントたちを支えるのは「アナ・ステリン」が作った彼らの記憶との共感。

もし次回作があるとするのならば、人間とレプリカントとの全面戦争になるんじゃないのかあ。レプリカントたちを支えるのは「アナ教」ともなる「アナ・ステリン」、そしてそのコピーである「K」と云うことになるのかな。「K」が「ユダ」にならなければ良いのだけれど。

→ドゥニ・ヴィルヌーヴ→ライアン・ゴズリング→アメリカ/2017→109シネマズ木場→★★★★