リアル〜完全なる首長竜の日〜

監督:黒沢清
出演:佐藤健、綾瀬はるか、中谷美紀、オダギリジョー、染谷将太、堀部圭亮、松重豊、小泉今日子
制作:「リアル〜完全なる首長竜の日〜」製作委員会/2013
URL:http://www.real-kubinagaryu.jp/index.html
場所:109シネマズ木場

黒沢清の映画を今までに4本(『ドレミファ娘の血は騒ぐ』『CURE』『ニンゲン合格』『トウキョウソナタ』)しか見てなくて、その4本ともにそんなに面白い映画とはおもえなかったので、まだ黒沢清の高評価の理由が充分に分かっていない。おそらくは代表作(なんだろうか?)の『回路』あたりを見れば、その高評価の一端を伺えることが出来るのだろうけど、見よう見ようとおもいながらもすっかり忘れていて、結局はこの新作を観ることになってしまった。

映画の導入部分は素晴らしかった。フィロソフィカル・ゾンビのイメージ造形や佐藤健の意識に混線してくるずぶ濡れの男の子のイメージなどは背中がゾクゾクするほどの怖さで、それをきっかけとしてどんどんとストーリーにのめりこんで行くことができた。もしかすると、これでやっと黒沢清の高評価を理解することができるのか! と喜んで見ている内に、残念ながらにもそれはガラガラと崩れて行き、徐々にすぼんで行ってしまった。

特に、ずぶ濡れの男の子のイメージが見せた過去のトラウマへの恐怖が、「首長竜」と云う恐竜のイメージとミスマッチを起こしているのは辛かった。子どもの頃の恐怖を封印するべき先が「首長竜」と云うのがあまりにもイメージとして曖昧で、佐藤健と綾瀬はるかの過去が明らかになって行く時に介在させる象徴としても、いくら何でも大げさで、でかくて、大味なものでしかなかった。それぞれの読者が書かれてある文章をおもいのままにイメージ化するのにまかせる小説ならまだしも、それを具体的にCG化させたものが画面いっぱいに広がって傍若無人に暴れ回るシーンでは、黒沢清がこの映画に用意した恐怖や哀惜や後悔などのトーンをもすべて破壊しているように見えてしまった。いや、もしかして、恐竜は破壊の象徴なのかもしれないけど、それがこの映画の中に上手く組み込まれているとはおもえなかった。

とは云え、これまでに見た黒沢清の映画の中で一番面白かったとおもうし、いろいろなところに黒沢清の高評価の片鱗を見ることが出来たようにもおもえる。なので、次回作も見ようとおもう。

→黒沢清→佐藤健→「リアル〜完全なる首長竜の日〜」製作委員会/2013→109シネマズ木場→★★★☆