監督:ロネ・シェルフィグ
出演:ジェマ・アータートン、サム・クラフリン、ビル・ナイ、ジャック・ヒューストン、ジェイク・レイシー、リチャード・E・グラント、エレン・マックロリー、エディ・マーサン、レイチェル・スターリング 、ヘンリー・グッドマン、クローディア・ジェシー、ジェレミー・アイアンズ
原題:Their Finest
制作:イギリス/2016
URL:http://jinsei-cinema.jp
場所:新宿武蔵野館

フランソワ・トリュフォーの『映画に愛をこめて アメリカの夜』に代表されるような映画の製作過程を描く映画がとても好きだ。その映画がたとえイマイチの出来の映画であってさえも。おそらくそれは、多くの人々が楽しむことのできる「映画」を作る人々に、すでに尊敬の念しか持ってないからかもしれない。出来の悪い映画を観た後でも、酷評はするかもしれないけど、その映画製作に携わった人々には感謝しかない。

ロネ・シェルフィグ監督の『人生はシネマティック!』は、1940年のロンドンで、ドイツ軍による空襲で疲弊しきった市民に勇気を与えようと「ダンケルク」を題材にした映画を作ろうと努力する人々を描いた映画だった。稼ぎのない夫の代わりに家計を支えようとコピーライターの秘書として働いていた女性が、突然、映画の脚本チームに加わることになってしまって、製作にまつわるトラブルに巻き込まれながらも、次第に「映画」と云う魔法に取り憑かれて行く過程を描くものだから、それは自分にとって面白くない映画のはずがなかった。

この映画の中で出来上がった「ダンケルク」の映画は、今年公開されたクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』とは似ても似つかない、昔ながらのイギリス映画ではあったのだけれど、ふと、映画にはどこまでリアリティが必要なんだろう? と考えてしまった。演技は大仰で、カット割りは決まりきっていて、音楽が入るタイミングもパターン化されているし、撮影セットの美術はおもいっきり張りぼてで、背景は書き割りの世界なのに、それでも人を感動させることのできた時代は良かったなあ。いまの時代は、そこからは遠く、隔たってしまった。

→ロネ・シェルフィグ→ジェマ・アータートン→イギリス/2016→新宿武蔵野館→★★★☆