監督:アキ・カウリスマキ
出演:シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、イルッカ・コイブラ、ヤンネ・ヒューティライネン、ヌップ・コイブ、カイヤ・パカリネン、ニロズ・ハジ、サイモン・フセイン・アルバズーン
原題:Toivon tuolla puolen
制作:フィンランド/2017
URL:http://kibou-film.com
場所:ユーロスペース

アキ・カウリスマキの映画を観ると、感情をあまり表にあらわさない主人公や、それを助ける義理人情の厚い周囲の人々のさりげない行動に、出しゃばり過ぎない日本人的な奥ゆかしさを感じてしまう。それに、使われている音楽がどこか昭和のムード歌謡を感じさせたりと、フィンランド人は見た目こそスウェーデン人やドイツ人のようなゲルマン系の人種に似ているけど、DNAだけで判断すればアジアに近いんだなあと云うことをどことなく実感してしまう。

今回の主人公はフィンランド人ではなくて、時事的な話題も取り込んだシリア人でありながら、やはりそこはアキ・カウリスマキの色が濃く反映されていて、今までの映画の主人公と同じように静かなタイプの人間だった。勝手なイメージから判断すれば、アラブの人間ならばもっと感情をあらわにするんじゃないかとハラハラしている我々のおもいをよそに、役所から移民申請を拒否されても、ネオナチのような人間から暴行を受けても、それをただ甘んじて受け入れてしまうのは意外だった。だから、ちょっと風貌が似ていることから、主人公のカーリドがどんどんと山田孝之にしか見えなくなってしまって、さらに寿司屋の店員をしたりするものだから、ますます何事にも気持ちを荒げず、耐え忍ぶ日本人にしか見えなくなってしまった。

ユーロスペースの土曜日の午後5時30分の回はほぼ満席だった。日本でアキ・カウリスマキの映画が人気なのは、そこに古き良き日本の面影を感じ取ってるからなのかなあ。最近の日本はあまりにもギスギスしすぎる。

→アキ・カウリスマキ→シェルワン・ハジ→フィンランド/2017→ユーロスペース→★★★☆