監督:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ジレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー、ローラ・リニー
原題:Nocturnal Animals
制作:アメリカ/2016
URL:http://www.nocturnalanimals.jp
場所:渋谷シネ・パレス
コーエン兄弟の『ノーカントリー』を観たとき、映画を通して発散される暴力の匂いにぐったりと疲れてしまった。でもそれは映画としての魅力を発揮していることに相違なくて、爽やかなハッピーエンドとは対極にありながらとても面白い映画だった。
トム・フォードの『ノクターナル・アニマルズ』は、映画の中での現実とそこで読まれる小説の虚構がシンクロする不思議なドラマだった。で、その小説で展開される暴力が異様な緊迫感を生んで、それが主人公の現実の生活にまで及んで来ることによって、映画を観ているこちらにまでその緊張が徐々に伝播して来てクタクタに疲れる結果となってしまった。でもそれは『ノーカントリー』の時と同じように、心地よい疲れと云うか、映画にのめり込みすぎた気持ちの良い疲れだった。
この映画の主題は人間の弱さについてだった。弱さを「繊細さ」や「優しさ」と捉えると長所に聞こえるけど、一般的に「チキン」、つまり「弱虫」のことだろうとおもう。個人的には「弱虫」と馬鹿にされても動じない人間こそが本当の強い人間だとはおもうけど、映画の中の小説のように妻や娘がレイプされて殺されても動じない人間が強い人間だとは到底おもえない。そこが究極のジレンマになっている。
ラストはなんとなく「死」を予感させる。「弱さ」は「死」をも引き寄せるんだろうなあ。
→トム・フォード→エイミー・アダムス→アメリカ/2016→渋谷シネ・パレス→★★★★