監督:パベウ・パブリコフスキ
出演:ヨアンナ・クーリグ、トマシュ・コット、ボリス・シィツ、アガタ・クレシャ、セドリック・カーン、ジャンヌ・バリバール、アダム・フェレンツィ、アダム・ボロノビチ
原題:Zimna wojna
制作:ポーランド、イギリス、フランス/2018
URL:https://coldwar-movie.jp
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町
ポーランド映画で初のアカデミー外国語映画賞に輝いた『イーダ』を撮ったパベウ・パブリコフスキ監督の新作。でも残念ながら『イーダ』は観る機会を逃したままで、パブリコフスキ監督の映画は2011年の『イリュージョン』に続いて2作目。
ロマン・ポランスキー監督の『水の中のナイフ』を見たときに、そのモノクロ映画の白と黒がクッキリとしたコントラスト強めの画調にすっかりと魅了されてしまった。それはアンジェイ・ワイダでも感じるし、もちろんタル・ベーラでも感じることだった。東欧の映画監督はどうしてこんなにも白と黒をキレイに扱えるんだろうなあ、と感じていたところにパベウ・パブリコフスキ監督の『イーダ』の予告編が来て、また東欧の監督に白黒の上手い使い手が現れた! と喜んでいたのに、なぜか見逃してしまった。
『COLD WAR あの歌、2つの心』の白黒画像もやはりコントラストがはっきりとした綺麗な映画だった。映画のはじまりに、ポーランド各地に当地の民謡を採録して行くシーンがあって、合唱をする人たちの着ている民族衣装がモノクロでありながらもカラーで見せるきらびやかさとはまた違った、情報量をグレートーンの中に押し込めたからこそ人間の視覚に訴えかける美しさがあった。この映画の導入部から、その美しさに参ってしまった。
そしてタイトルの『COLD WAR』からもわかるように西側と東側が分断されていた冷戦時代のストーリーは、コントラストのはっきりとしたモノクロだからこそ見せる切ない情感が、離れ離れになる男と女のセンチメンタリズムにぴったりだった。ちょっとマーティン・リット監督の『寒い国から帰ったスパイ』をおもい出してしまった。それにしても、女はたとえ障害があっても飄々としてうまく立ち回る力強さを兼ね備えているけれど、男はそんな女によってボロボロにされてしまう芯の弱さがあるなあ。
→パベウ・パブリコフスキ→ヨアンナ・クーリグ→ポーランド、イギリス、フランス/2018→ヒューマントラストシネマ有楽町→★★★☆