お百姓さんになりたい

監督:原村政樹
出演:明石誠一、小林綾子(ナレーション)
制作:日本/2019
URL:https://kiroku-bito.com/ohyakusho-san/
場所:鶴瀬コミュニティセンター

この映画に出演している関根悠里さんの関係で、富士見市の鶴瀬コミュニティセンターまで行って原村政樹監督の『お百姓さんになりたい』を観る。

埼玉県三芳町にある明石農園を営む明石誠一さんは、2.8ヘクタールの畑で農薬や除草剤、肥料さえも使わない「自然栽培」を使って60種類もの野菜を育てている。映画『お百姓さんになりたい』は、さまざまな経歴を持つ人たちが明石農園で農業研修をする姿を描きながら、そして関根悠里さんのようなさまざまな障害を持つ人たちとの関わり合いを見せながら、生産性重視の合理性からは距離を置いた農法が、三芳町と云うコンパクトなコミュニティの協力を得て、いかにして実践し続けて行けるのかを試行錯誤する明石誠一さんにフォーカスを合わせた映画になっていた。

映画が終わったあとに、今回の鶴瀬コミュニティセンターでの上映会を主催した関根悠里さんの父親、関根健一さんが司会を努めたトークショーがあった。参加したのは監督の原村政樹さんと、もちろん明石誠一さん、そして関根さん父娘。そこではやはり「効率」がテーマになった。いまの売上重視の経済至上主義では効率化が絶対視されていて、ゆったり、とか、のんびり、なんてことは許されない。失敗したらそのリカバリーも早急に行わなければ世間から一斉に非難されてしまうことだってある。でも農業について云えば、効率化を実践するには自然に反することを行わなければならない場合があり、それをわざとしないことにブランド性を持たせたりできるところがちょっと変わっている部分でもある。とは云え、まったく効率化を無視して良いかと云えばそうでもなくて、そこでのバランス感覚が難しいところでもあったりする。明石さんは絶えずそのバランスを考えていて、悪い無駄を省きながら、良い無駄を尊重しているところが素晴らしかった。

明石農園では精神的な障害を持っている人も受け入れていて、その人なりのペースで仕事を行っているシーンが出て来る。そこにはもちろん効率化とは程遠い世界があって、ゆったり、とか、のんびりな世界が広がっている。そんなペースはグローバル経済では許されなくて、やはりコンパクトなコミュニティの中にこそ組み込まれるものなのかなあ、とはおもう。大きなグローバル化のうねりと、小さなコミュニティの世界との、この2つの歯車がうまく噛み合うことこそが理想なんだろうけど。

やはり観終わったあとにいろいろと考えさせられるドキュメンタリーは良いなあ。

→原村政樹→明石誠一→日本/2019→鶴瀬コミュニティセンター→★★★★