監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェンズ、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター、ロス・ブリュースター
原題:Sorry We Missed You
制作:イギリス、フランス、ベルギー/2019
URL:https://longride.jp/kazoku/
場所:新宿武蔵野館
『家族を想うとき』の主人公リッキーは個人事業主の宅配ドライバー。配達量が多ければ多いほど大金が稼げるとの謳い文句に乗って大手の配送業者のフランチャイズに入って、介護業を行っている妻の車を売ってまでしてトラックも調達してしまう。さあ、あとは働くだけだ! と云っても、簡単に計画通りにことが運ぶわけもなく、車の無くなった妻はバス移動を余儀なくされて今まで以上に仕事に時間を取られてしまうし、息子は万引きを働くし、娘は不眠症になるし、息子の学校に呼び出されたことで仕事に穴を空けてペナルティを払う騒ぎにもなってしまう。結果、夫婦間はギクシャクしてしまって、子どもたちとの関係も最悪。なにひとつ上手く行かなくなってしまう。
個人事業主にとって大手企業のフランチャイズ傘下に入ることのメリットはもちろんあるのだろうけれど、そのフランチャイズの縛りが強ければ強いほどデメリットが上回ってしまって、それとともに起こる問題が負のスパイラルとなって襲いかかり、簡単に破綻へと追い込まれてしまう。まさに『家族を想うとき』は負の連鎖の映画だった。
最近の日本でも、セブンイレブンがフランチャイズ店に24時間営業を強要する問題があったり、「amazonのデリバリープロバイダがみんなを激怒させている」はドライバーが『家族を想うとき』のリッキーのような状況に陥っているんじゃないかと察することができたり、イギリスと状況はまったく同じだった。
今の状況から逃げ出すようにトラックを走らせるリッキーの悲壮な横顔で映画は暗転してエンドクレジットが流れるのだけれど、下から上へと流れるアルファベットの字面を眺めながら、リッキーの今後におもいを巡らせていた。ハッピーな方向に向かうはずもないのに、ハッピーになることを願って。
→ケン・ローチ→クリス・ヒッチェンズ→イギリス、フランス、ベルギー/2019→新宿武蔵野館→★★★★