監督:クリント・イーストウッド
出演:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム、オリヴィア・ワイルド、イアン・ゴメス、ニナ・アリアンダ
原題:Richard Jewell
制作:アメリカ/2019
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/richard-jewelljp/index.html
場所:109シネマズ木場
罪を犯してない人間が、国家権力やマスコミによって、あらぬ疑いをかけられて、まるで犯罪者のような扱いを受ける可能性はどれくらいあるんだろう? と考えた時に、いやいや、その確率は天文学的数字だろう、と今までは考えてはいた。でも、最近のSNS上での根拠のない憶測による犯人探しを目の当たりにすると、名もない人たちが集団となって関係のない人間を犯人扱いしてくる確率がますます増えてきていて、相手が見えないからこそ公的機関による冤罪よりもさらに怖ろしくなってきている。
そんな今の世の中だから、クリント・イーストウッド監督の『リチャード・ジュエル』で描かれる冤罪事件は身に迫るほど怖かった。1996年のアトランタで、爆発物を発見して多くの人命を救ったにもかかわらず、そのあまりにも真っ直ぐな誠実さがかえってアダとなって、FBIによって犯人に仕立てられてしまうリチャード・ジュエルと云う人物は、おそらくは誰にとっても自分と置き換えることのできる人物だろうとおもう。どんな人間だって、叩けば何かしらほこりが出てくるもので、そこを追求されたときの恐怖は、考えてみるだけでも怖ろしい。
クリント・イーストウッドの映画は、虐げられた者からの視点で描く場合が多くて、『リチャード・ジュエル』もそのパターンの映画ではあるのだけれど、いつもながら登場人物を描くのが巧くて、特に今回はリチャード・ジュエルを弁護するワトソン・ブライアントを演じたサム・ロックウェルが良かった。べらんめえ口調(なんてものはアメリカには存在しないのかもしれないけど)で権力に動じなくて、刑事事件の弁護経験の少なさにも臆することなく立ち向かって行く人物像の描き方が素晴らしかった。
→クリント・イーストウッド→ポール・ウォルター・ハウザー→アメリカ/2019→109シネマズ木場→★★★★