監督:オリヴィエ・ナカシュ、 エリック・トレダノ
出演:ヴァンサン・カッセル、レダ・カテブ、ベンジャミン・レシュール、エレーヌ・ヴァンサン、リナ・クードリ、アルバン・イヴァノフ、マルコ・ロカテッリ、ブライアン・ミヤルンダマ
原題:Hors normes
制作:フランス/2019
URL:https://gaga.ne.jp/specials/
場所:新宿武蔵野館

日本でもミニシアターを中心に大ヒットを記録した『最強のふたり』を監督したオリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノの最新作。

どこの国でも、もし認可されていない施設が横行しているとするならば、その非認可の施設を取り締まれば良いと云うことでは絶対になくて、非認可の施設が存在せざるを得ない状況に問題があるのは間違いないことだろうとおもう。オリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノが実話をもとにして監督した『スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~』でも、「自閉症」と云われる病症を見せる人たちを受け入れている非認可の施設へ政府からの調査が入る状況が描かれている。と同時に、その施設で預かっている人たちのさまざまな症状を丁寧に描写していて、それをケアする支援員のハードな仕事ぶりも映し出している。そしてさらに、社会からはじき出された若い人たちを施設の支援員として受け入れようとしている様子も描かれている。

重度の「自閉症」の人たちの受け入れを嫌がる公的な施設があるからこそ、ヴァンサン・カッセルが演じているブリュノが運営する自閉症の人たちをケアする団体〈正義の声〉が存在せざるを得ない。そして、社会からはみ出した若い人たちの行く末が犯罪に手を染めることしかなからこそ、レダ・カテブが演じているマリクが運営するドロップアウトした若者たちを社会復帰させる団体〈寄港〉が存在する。そのどちらも公的な機関ではないけれども、使命感だけから手弁当に近い報酬だけで施設を運営していて、ブリュノの婚活もままならないほどの自己犠牲は、どうして他人のためにそこまでやれるのか? と、彼らの執念ともおもえる活動ぶりに感嘆せざるを得ない内容になっていた。

もちろんこのような設定は、映画としてはおいしい題材で、とても感情移入しやすい映画ではあったけれども、それを差し引いても素晴らしい映画だった。それに「自閉症」の人たちを演じている俳優が、まるでドキュメンタリーを見ているようで、オリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノの監督としての確かな演出力を感じる映画でもあった。

→オリヴィエ・ナカシュ、 エリック・トレダノ→ヴァンサン・カッセル→フランス/2019→新宿武蔵野館→★★★★