監督:岩間玄
出演:森山大道、町口覚、神林豊
制作:テレビマンユニオン/2021
URL:https://daido-documentary2020.com
場所:新宿武蔵野館
あれはいつのことだったか。たぶん、青空文庫の工作員の人からだったと記憶するのだけれど、新宿の街を写した白黒の写真集を見せてもらったことがあった。そこには、ザラついて光沢のない印画紙に出力された、ブレてピントも合ってないような写真が多数収録されていた。その奇妙な生々しさに不思議な魅力を感じてしまって、えっ、なにこれ、すごい、となった。すぐさまAmazonで検索をしてみたら、おもったよりも高額だったので購入に躊躇してしまった。それが森山大道の写真集「新宿」だった。
そのとき以来、すっかり森山大道のことを忘れてしまっいたけれど、満員で入れなかったジャン=ポール・ベルモンドの映画の代わりにこの『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』を観て、ああ、やっぱり森山大道の写真はいいなあ、と云う気持ちにあらためてなった。性能の良いレンズを付けたカメラを使って、かしこまって被写体に向かうのではなくて、誰もが使うようなデジカメでひょいと撮ったスナップで遊ぶと云う姿勢は、大仰な心持ちで何かに立ち向かうことの嫌いな自分にとっては、そのさりげなさが共感以外のなにものでもなかった。
となると、森山大道の最初の写真集を復活させる過程を追いかけたこのドキュメンタリーを観て、その出来上がった写真集が高価な紙を使った大仰な豪華本であることにちょっと違和感を感じてしまった。森山大道はそれをどう感じているんだろう? まあ、そんな些細なことも気にしない姿勢ってところも森山大道なんだろうなあ。
→岩間玄→森山大道→テレビマンユニオン/2021→新宿武蔵野館→★★★☆