監督:細田守
声:中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森川智之、津田健次郎、小山茉美、宮野真守、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世、佐藤健
制作:スタジオ地図/2021
URL:https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp
場所:MOVIXさいたま
細田守監督の『サマーウォーズ』を公開時に映画館で観たとき、その面白さに熱狂してすぐさまBlu-rayを買ってしまったほどだった。それは今でも変わらず、テレビ放映で見ても面白い作品だとおもう。ところが細田守監督のその後の作品が、『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』『未来のミライ』と、どれも面白くない。それぞれの映画の世界観が『サマーウォーズ』ほどにまとまってなくて、どちらかと云えば混乱しているように見えてしまう映画ばかりだった。こんな映画ばかり見せられると、もしかすると『サマーウォーズ』はたまたま上手くハマっただけの映画だったのか? の懸念さえ芽生えてきてしまった。
『サマーウォーズ』を何度も見ていると、ストーリーを強引に進めている部分が気になってくる。仮想世界のアカウントが国のインフラ制御にまで関わっているのはやり過ぎだし、そんな現実とシンクロしている世界にしてはセキュリティがユルユルだし、RSA暗号を紙とペンだけで解読するのも無理があるし、格闘ゲーのようなものをキーボードでコントロールさせるなんてあり得ないし、とにかく気になる部分をあげつらって行けば枚挙にいとまがない。もうちょっとディティールを詰めても良かった気がする。
でも、アニメーションとしてビジュアル的な派手さに重きをおいて、複雑な部分をハッタリで押し通したとしても、映画として面白ければそれはそれで良いとはおもう。それが『サマーウォーズ』では上手くハマっていた。おそらく他の作品では失敗していたんだとおもう。
今回の『竜とそばかすの姫』も『サマーウォーズ』と同じような仮想世界を描いていた。全体的なストーリー構成も『サマーウォーズ』と似通っていて、だからなのか今回もとても面白く映画を観ることができた。
ただ、今度ばかりは『サマーウォーズ』を教訓にして、少しばかり身構えて映画を観たために、映画としての弱い部分、強引な部分、雑な部分がはっきりとわかってしまった。この映画の一番の問題点は、主人公の「すず」が「目立たなくて魅力のない子」には見えなかった点だった。十分に可愛い子に見えるキャラクターデザインだし、負の要素として設定されているはずの「そばかす」でさえも魅力的なものに見えてしまった。
そして、クラスで一番の人気者の女の子「ルカちゃん」が「魅力的な女の子」に見えなかった点も大きな問題点だった。いや、そもそも、どんな顔立ちをしているのかまったく頭に入って来なかった。彼女の顔が明確に認識できていなければ、おもわず「ルカちゃん」の顔をアバターに設定してしまった仮想世界上の「すず(ベル)」が、あこがれの人間を具現化した、とは捉えることができない。二人の差が明確にわからなければ、「こんな普通の女の子がベルだったの?」の驚きにも共感できはしなかった。
他にもご都合主義的で強引な部分も多々あって、そんな雑な部分を許せない人は大勢いるのだろうなあ、とはおもう。それは細田守の他の映画にも共通するところだった。
とは云っても、自分としては、その細田守のハッタリで強引に押し通す部分は、映画としてリズムが生まれれば許せるのかなあ、とはおもっている。だから今回も細田守に惑わされて面白く映画を観ることができた。それが仮想世界の映画ばかりなのが残念なところなんだけど。
→細田守→(声)中村佳穂→スタジオ地図/2021→MOVIXさいたま→★★★★